400回目 県を終えて州へ
県内制圧は呆気ないほど簡単に終わった。
現地への移動から戦闘まで。
その全てが一日で終わったのだ。
ありえないほどの早さである。
それを可能とした自動車の機動力。
敵制圧における銃と爆薬の威力。
この両者がもたらす効果は絶大だった。
その報告を受けたタカヤス殿下とその臣下は度肝を抜かれた。
事前にトモルから様々な説明を受けはした。
しかし、実際に結果となって出てくるまでは半信半疑だった。
だが、出てきた結果を無視するわけにはいかない。
「凄まじいな」
席で報告を受けたタカヤス殿下はそう言うしかなかった。
「いや、これほどとは……」
いまだ信じられぬ様子だ。
それも仕方が無い。
彼のもつ常識から大きくかけ離れてるのだから。
「だが、実際に成功してる。
認めるしかない」
信じがたくても、事実は事実。
それを否定するほどタカヤス殿下は愚かではなかった。
「引き続き、指揮を頼む」
この結果をもたらしたトモルに、今後を託していく。
「引き続き、鋭意努力します」
タカヤスの声にトモルはそう応える。
その言葉に嘘偽りはない。
今後も敵攻略を進めていくつもりだ。
その為にも、県内を確実に制圧していく。
敵の残滓は一切残さない。
イツキヤマ当主の下に全てをおく。
旧氏族を空いた地の領主に送り込んでいく。
それら、政治部分はタカヤス殿下を中心に行なっていく。
今後は彼らが統治するのだから、これくらいは自力でやってもらわねばならない。
幸い、それだけの能力を彼らは備えている。
伊達に王族ではない。
政治の面をそちらに任せる。
さすがにそこまでトモルが手をだす余裕はない。
ただ、戦争に集中していく。
勝利に向かって。
その為に、軍勢を引き揚げていく。
トモルの配下の者達だけを。
同行した他の者達は、地域制圧のために残していく。
敵を殲滅したとはいえ、不穏な輩が残ってるかもしれない。
その為に、占領部隊をおかねばならない。
そうして引き揚げたトモルの軍勢に、あらたな指示を与えていく。
次の目標に向けて。
「州を攻略する」
州とは、県を複数統括する上位機構である。
それを制圧する事で、完全に後顧の憂いを断つ。
これくらいが制圧できなければ、国を相手に戦う事など出来ない。
「全部隊をもって、州都を攻略する」
指示を出し、部隊を動かしていく。
部隊も粛々と動いていく。
それは事前に決められていた行動だ。
作戦として既に決定されている。
何せ、トモル達は少数。
数の上では負けている。
だからこそ、迅速な行動で先手をとり続けねばならない。
また、敵の中枢を叩かねばならない。
州全体が動き出す前に、その中心を叩き潰さねばならない。
でないと、統率された敵を相手にする事になる。
質においていくら勝ってるとはいえ、そうなったら手こずる。
トモルの軍勢が展開出来る範囲は限られる。
トモルの軍勢は、全部で1万ほど。
これはこれでかなりのものだが。
州が動かせる兵力は2万にのぼる。
それが一つの意思の下で動いたら厄介だ。
だからこそ、まずは中心を一気に叩く。
その上で、残りを潰していく。




