393回目 宣戦布告
「……事ここに至り、王族の一員として看過できない。
よって、世をただすために、奸賊を討つ」
そう締めくくられた声明を、辺境王族が発した。
事前に用意された布告である。
これが文章となって様々な所に届けられる。
周辺の王族に。
当然、王都にも。
受け取った者達の反応は二つ。
事前に申し出を受けていた者達は、ようやくかと。
何の話も聞いてなかった者達は仰天する。
事前に話を受けていた者達は、それに呼応していく。
もとよりトモルや辺境王族による調略はされている。
この瞬間に旗印をトモル・辺境王族のものにかえていった。
そうでない者達は、事の次第を問いただすために使者を送る。
冗談では済まない内容だ。
その真偽を確認せねばならない。
発してるのは、末席であっても王族なのだから。
情勢が更に大きく変わる。
国内で藤園同士が争ってる最中だ。
国内は騒乱の中にあるといって良い。
その騒乱に輪をかけて面倒が生まれた。
この状況に対応するために、様々な思惑が動いていく。
辺境王族を諫めようとするもの。
これを自分達の勢力に取り込もうとするもの。
様子を見てから行動しようとするもの。
いずれにせよ、新たな動きに相応の動きを示していく。
そういった動きを無視して、辺境王族の勢力は動き出していく。
まずは辺境王族の本来の担当地域。
ここをまとめあげようとする。
一応、王族は与えられた地域の統治を専らとする。
実際には貴族が統治しているが。
名目上は、王族から信託されているという形をとっている。
その名目を本来の姿に戻そうとしていた。
辺境王族は担当地域の統合を宣言。
この領内における不穏分子の排除を始めた。
対象は、当然のことながら、藤園に連なる者達。
内乱を起こしてる当事者達を放置する事は出来ないと宣った。
話し合いの場はもたなかった。
そんな事で解決はしない。
もとより、排除以外の選択肢はない。
対象となる者達は全て拘束もされず切り捨てられていった。
この動きは当然ながら周辺や中央に届く。
それを知った者達は唖然呆然とし、怒り、あるいはうなだれた。
やってる事を知って、話し合いは不可能と理解した。
そのつもりがないと。
それに王家は落胆した。
しかし、これを好機ととらえるものもいる。
藤園家である。
「このような暴虐、王家に連なる方といえども放置できません」
そう進言する藤園の当主。
その言葉を現国王も、王都に居を構える王族も退ける事は出来なかった。
確かにやってる事が強引すぎる。
話し合いすらしないとあれば、さすがに容赦はできない。
「やむをえんか」
現国王はそう言って嘆息する。
そうした態度が既に間違っている。
専横を極め、王族のありかたすらゆがめているのは藤園である。
話し合いも何も、自分の恣に全てを動かしている。
そんな連中とどうして話し合いが出来るのか?
言い分を受け入れる事もなく。
ただ自分の要求を押しつける。
それが藤園の言う話し合いの実態だ。
そんな連中との交渉など出来るわけがない。
そうした連中を排除していったとして、それが問題というのもおかしなものだ。
強引に物事を進めてるのは藤園である。
それに同じように対応して何が問題なのか?
そこが分からないというのが大問題である。
かくて国内の戦乱に、方向性をもった動きが出てきた。
辺境王族を討伐するというものと。
そもそもの原因となってる藤園の殲滅というものが。
その二つが動き出し、ぶつかりあおうとしている。




