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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第10章

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385回目 存在しない自浄作用などに期待しない

「なるほど」

 帰ってきた辺境王族から話を聞いて。

 息子はそう頷いた。

「相変わらず手厳しい」

「まったくだ」

 少しばかり辟易として、辺境王族は頷いた。



「とはいえ、言い分も分かります」

「うむ、その通り」

 再び辺境王族は頷く。

「確かに閨閥繋がりでだけ事が動く。

 これはこれで問題だ」



 人と人の繋がりが必要なのは分かる。

 その為に、何かしらのきっかけが必要なのも。

 その為の婚姻であるのは確かなのだが。

 今や閨閥に関わらねば何も動かない。



 何か決めるにも、役職を通じて話を通すのではない。

 閨閥の繋がりで事を進める。



 また、本来の職務を逸脱する事も当たり前となっている。

 功績は閨閥にいる者で分け合い。

 失態の責任は閨閥以外の者に負わせる。

 そんな事が常態化していた。



「親戚関係だけを優遇する。

 この状態はさすがに異様ですからな」

「まったくだ。

 それが是正されるなら、まあ騒動は仕方ない」

 辺境王族もそこは承諾している。



「だから話をされたのでしょう?」

 意地悪く息子は追及する。

 その問いかけに父である辺境王族は、

「まあな」

と意地悪く応じる。



「まあ、あの男もそこは承知であろうが」

 言えば確実に動く。

 そうと分かっているから、閨閥連中からの申し出を伝えた。

 その結果が血まみれの粛清であると知りつつも。

「こうでもしなければ、状態は変わらん」

 今度は憮然としながらそう続けた。



 一度出来上がった制度は変わらない。

 慣例や慣習などもだ。

 弊害が明らかであっても、なかなか更新できない。

 改善にも多大な努力と労力が必要だからだ。



 弊害だらけでも利益を得ている者もいる。

 そういった者達からすれば、むしろ弊害と言われる部分は利益である。

 問題となってる部分が、利益を生み出してるのだから。

 他の多くを踏みにじって。



 なにより、変えるのが面倒くさい。

 良くも悪くも、一度出来上がったものを変えるのは手間がかかる。

 それが改善につながるとしても。

 長い目で見れば、それが利益になるとしても。

 なかなか変えようとはしないものだ。



 長期的な利益は確かに大きい。

 負担になってる部分が消えて、その分が利益に回るのだから。

 一時の出費を惜しむのも馬鹿らしいだろう。

 しかし、一時の出費が莫大となれば、それもためらおうというもの。



 そういった心理もあって、体制や慣例慣習は変わるものではない。

 だからといって、継続する理由もないのだから。



 本来あるべき姿。

 滞りなく、円滑に事をなす。

 その為に作り上げていったのが制度であり体制である。

 慣習や慣例である。

 それが一部の者達の利益の為の手段になっている。

 そんなもの是正するしかない。



 目的は、円滑に事をなす、事を進めること。

 その手段が、制度・体制・慣例・慣習である。

 最優先するべきは目的だ。

 それに従って手段をととのえねばならない。

 だが、いつの間にかこれが逆転している。

 手段である制度存続のために、目的である円滑な運営が蔑ろにされている。



「いつまでもそんな事を続けるわけにもいかん」

 それが分かってるから、辺境王族も決心したのだ。

「正直、閨閥が鬱陶しい」

「まことに」

 息子も頷く。



 その為にも強硬手段が必要だった。

 内部からの変革など、決して成就しない。

 利権に絡んでる者達が邪魔をするからだ。

 であるならば、大きな力で一掃するしかない。

 それこそ、該当する者達の虐殺をもってしてでも。



 この世に自浄能力など存在しない。

 人は反省しない。

 組織は自ら内部改善が出来ない。

 外から攻撃を受けて、破壊されて初めて形を変える事が出来る。



 一部に例外はいる。

 本当に自ら己を改善出来る者もいる。

 しかし、例外は例外だ。

 基準や標準になりはしない。

 そんな一部の例外を持ち出して、外からの圧力を阻む事は出来ない。

 そんな事を認めたら、いつまでも悪弊が残る。



 困ったことに、悪弊ほど残りやすい。

 変えてはいけない部分は平気で破壊するくせに。



 その実例が、王族の男子継承破壊である。

 王族を王族たらしめてる核心部分。

 それを破壊してしまった。

 貴族の利権のために。



 本来、貴族は王族を支えるために存在する。

 王族のための手段と言ってもよいだろう。

 それが、あろうことか貴族の、藤園の欲望と野心の為に破壊された。



 そして、そこに自浄作用などありはしない。

 むしろ、悪弊を更に強化する方向に動く。



「我らの内部も、ここで一気に改善するしかない」

「まことに」

 辺境王族と息子は意見を一致させる。

「考えてみると、良い機会なのだろうな。

 問題を排除するための」



 血なまぐさくなる。

 しかし、ためらってられない。

 放置すれば、より一層凶悪な腐臭を放つ。

 既に相当鼻につく。

 もう放置するわけにはいかない。



「それを、我が手で出来ないのが残念だ」

「今少し、我らに力があれば」

 そこが無念である。

 他者を頼らず、自力でやりたい。

 しかし、辺境王族にそこまでの力は無い。

 トモルによって、体制は強化されているが。

 それでも、はびこってる連中を消し去るには足りない。



「ふがいない事よ」

「やむなき……と思うしかないでしょうが」

 端くれといえども王族として残念でならなかった。

「ここは、あの者を信じて任せるしかないでしょうな」

 息子の言葉に辺境王族はため息を漏らして応えた。

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