373回目 戦争計画は産業育成から
悩み迷いながらも全ては進んでいく。
まずは土台となる工場。
これを作っていく。
そこで必要な機械を造り、作業効率を上げる。
作業効率を上げて、大量生産を可能にしていく。
そうして作られた機器が、更に生産能力を増大させていく。
また、既に出来上がった火縄銃を大量生産していく。
出来れば高性能なライフルが欲しいが、まだその段階ではない。
それよりも、ある程度数を揃える事が出来る火縄銃で当面はしのぐ。
銃というものに慣れさせるためにも。
また、出来上がった機関車を走らせる為に、鉄道も作っていく。
まずは資源地帯と工場を結ぶ所から。
そして、あちこちの町を結ぶものを。
さすがに人目があるので国内までは通せないが。
モンスター領域内にあるトモル領の主な所を結んでいく。
作業自体はさほど進まない。
まだ人力が主な労働力なので、これは仕方が無い。
だが、徐々に工作機械が導入されていく事で、作業期間は短縮されていった。
道具や機械は大事だ。
それがあるだけで、一人あたりの作業力が大幅に上がる。
今までは職人に頼らねばならなかったものを、素人でも出来るようにする。
もちろん、熟練労働者や職人は必要だ。
しかし、それに頼らなくてもある程度のものが作れるようになる。
そんな機械の導入でトモル領の発展は加速していった。
そんな機械の研究開発を進める研究所も、連日忙しく動いている。
研究資料のほとんどはトモルがもたらしてくれているのだが。
その解明もやらねばならない。
また、説明が足りない部分もある。
その補強もしていかねばならない。
加えて、基礎理論から何が出来るのか、応用部分も考えていく。
当然ながら、全ての土台になる基礎理論の修得と研究も。
その為、研究所につとめる者達はとてつもなく忙しい。
研究員も数が少ないのもあって、彼らの頭も加熱しすぎになっていく。
だが、そのおかげで知識や技術のレベルは大幅に向上していく。
レベルアップとは別に、日々の研鑽でも知識や技術のレベルは上がる。
それが彼らを支える原動力の一つにもなっていた。
「やれば更に上を目指せる」
研究員の間には、そんな言葉が飛び交っていた。
そして。
そんな研究所に向けて、トモルも様々な理論をもたらしていく。
とにかく思いつく様々な事を伝えていく。
必要な物を作るために、設計図を引くこともある。
というかトモルしか書けない。
基本的な考えはトモルしか持ってないのだ。
他の者に任せるわけにはいかない。
その設計図を形にさせる。
その為の研究所であり工場である。
作って育ててる産業である。
言い方を変えれば、設計図に集中する為に様々なものを作った。
派生的に、あるいは自発的に新しい発見が出てくる事も期待してるが。
しかし、現時点ではトモルが一生懸命もがくしかない。
まだ、この世界には十分な科学者や技術者がいない。
それらが揃えば、自発的に動き出していくかもしれない。
しかし、それまではトモルが引っ張り上げるしかない。
効率良くそうしていく為には、トモル自身を最先端に置くしかない。
他の様々な雑務にとらわれるわけにはいかない。
そちらに時間を費やしたら、その分だけ発展が滞る。
それは避けねばならなかった。
そのおかげで、様々な設計図を作る事が出来た。
それらが実際に形になるのはまだまだ先である。
しかし、事前に用意しておく事で、時が来れば形にする事が出来る。
その結果は随所に出てくる。
本来なら試行錯誤を繰り返す部分。
それがそっくり消えて、結果がだけが出てくる。
それがもたらす成果は大きい。
研究開発は失敗の積み重ねだ。
その中から成功を見つけていく事だ。
その失敗がない。
その分だけ、費やす資材を節約出来る。
時間だって当然短縮される。
おかげでわずかな期間で様々なものが飛び出してくる。




