368回目 善行は善人に、悪人は悪業を
幼少の頃、つれていかれた上位の貴族の家。
そこでの理不尽な仕打ち。
上位の貴族の子が不当な事を言ってきた。
それを叩きのめして撃退したのをおぼえている。
学校に入れば入ったで、不毛な仕打ちが待っていた。
上級生による下級生虐待。
学校ぐるみで行われている暗黙の行事。
これを潰した。
なおかつ、女子に強要されていた売春。
これも見つけて潰した。
首謀者の女子生徒も卒業式に潰した。
卒業して帰郷したら、今度は領主としての問題がふりかかってきた。
貴族と教会の不当な圧力。
これらも邪魔だから排除していった。
そうした邪魔を全て取り除いていきたかった。
子供達がこれから生きる世界から。
そういったものは邪魔でしかない。
少なくとも、トモルにとっては。
他の多くの者達にとっても、不要なものでしかない。
「やるか」
今更である。
やる事は既に決めているのだから。
その決意を更に積み重ねていく。
(ガキが普通に生きていけるようにしておかないと)
それは、我が子に好き勝手させるというわけではない。
出来ない事もあるだろう。
挑戦して失敗する事もあるだろう。
上手くいかず、挫折することもあるだろう。
それは仕方が無い。
だが、本人の努力や才能、時の運。
そうした事以外の問題。
横やりや邪魔という他者という障害。
そういったものは取り除かねばならない。
やってる事が悪事であるならともかく。
何かを為そうとしてる事を掣肘されるいわれはない。
だからトモルは邪魔になる全てを潰していく。
悪事を用いて。
悪事は悪事でのみ潰える。
マイナスにマイナスを掛け合わせて、プラスにするように。
悪事に善行で対応したら、悪事が更に増大する。
マイナスにプラスを掛け合わせてしまうように。
だからこそ、トモルは悪事に悪事をぶつけていく。
何の躊躇いもない。
同情の余地など無い。
悪事を働く理由など、悪意しかないのだから。
そんな悪事と、その発生源になる悪意。
それを持ってる人間を許すわけにはいかない。
放置しておけば、それだけ世の中に害悪を垂れ流す。
生かしておく理由などこれっぽっちもなかった。
「頑張るか」
生まれてきたガキの為に。
確かに子供がかわいいとは思えない。
それは正直なところだ。
だが、それでも思う。
(こいつらが大きくなる頃には)
少しでもまともな世の中にしておかねば。
この子らが、少しはまともに生きていけるようにしなければと。
「さて……」
その為に今できること。
それを考えていく。
何度も繰り返し考えてきた事を。
問題はないはずだ。
今のところ、全て上手くいっている。
だが、それでもだ。
まだ改善出来るのではないか。
そう思って今までを見返す。
過去を変える事は出来ないが、過去のしくじりを補う事は出来る。
その為に、抜けてる部分を見つけていく。
何より、上手くいってる部分を補強していく。
よりよい状態を今後も続けていくために。
どれだけ失敗を潰しても、上手くいってる部分がなければどうにもならない。
上手くいってる部分があるから、成功を成り立たせる事が出来る。
失敗を消しても、残るのはプラスマイナスがゼロの状態でしかないのだから。
それを探していく。
今できること。
今やるべき事。
今、手を引くべき事。
それがなんであるのかを見つけるために。




