364回目 住みやすい場所を作るのにためらう事など何一つありはしない
こういったトモルの施策は、大きな変化をもたらしてはいった。
しかし、今まであったものを否定するというのとは違う。
あるべき本来の姿に戻った。
もしくは、今まであったものに新しいものを加えた。
基本的にトモルがしてるのはそんな事である。
様々な害をもたらすもの。
それを排除していった。
そうする事で、人間本来の持ってるものを取り戻す。
その手段として、徹底的な排除はしたが。
それで今まであった何かが変わったというわけではない。
問題をこそぎ落として、あるべき姿を取り戻したと言う方が正解だ。
人が人として平穏に生きて行ける所に戻ったのだから。
また、新たな何かを加えていくことで、否応なく変わっていく。
対抗勢力といおうか。
新しい選択肢と言ってもいい。
それを用意しておく事で、自然と状況が流動的になるようにした。
宗教への対策がこれになる。
神社という新しいものを出すことで、教会を排除する。
神社があるから、教会がなくなっても行くところがある。
それが状況を変えるきっかけになっていく。
よりよいものがあるなら、そちらを手に取りたくもなる。
そういう者ばかりではないが、流れる者も出てくる。
それにより、まずは相手を削っていく。
独占状態が一番の問題とも言える。
新規参入がないなら、既にある者だけが幅をきかす事になる。
それが良いものなら問題は無いのだが。
なかなかそうはいかない。
だから、可能な限り新規参入が出来るようにしておく。
それだけを保っていれば、ギリギリのところで最悪の事態を回避する可能性が出てくる。
ただし、悪意や悪事の新規参入。
これだけは徹底的に排除せねばならない。
ここが難しい。
ただ、強いて言うならば、次のようになるだろう。
生活を損うもの、それが悪である。
生活とは、単に生きるだけではない。
生きるだけなら、虫の息でも、奴隷のような状態でも生きてる事になる。
そこに『活』がなければ意味が無い。
活動や活躍。
そこまで大げさなものでなくても、のびのびと活動が出来る状態。
それを含めて生きてると言える。
だからこそ、生活という言葉に意味がある。
これはこれで誤解が生まれるだろうが。
トモルはこれを基準においていた。
人々がまともに生活出来るような。
そんな状態を基本としていく。
それらが不当な侵害を受けないようにするには、こうしていくしかない。
この生活という部分を中心にして物事を考えていく。
そこから派生する様々な事を大事にしていく。
守っていく。
保っていく。
それを侵害するものなど、トモルにとって邪魔でしかない。
平穏な生活を乱す災いである。
率先して排除していかねばならない。
情けや容赦などするつもりはない。
それらは真っ当に生きてる者にかければ良い。
悪党に向けるものではないのだから。
「さー、今日もお仕事お仕事」
元気に問題を処分していく。
摘発や取り締まりなどという生ぬるいものではない。
魔術器具の嘘発見器により、たいていの嘘は露見する。
その為、言い逃れは出来ない。
加えてトモル自身も乗り出している。
悪党指定された者達に、生き残る道などどこにもなかった。




