361回目 邪魔なら排除するよ、当然でしょ
強制的にでも不平不満を削っていく。
そうする事で大きな救いをもたらしていく。
真っ当に生きてる者達に。
そういった者達こそが被害者である。
不平不満を口にする連中からの。
そういう者はいらない騒動を引き起こす。
それらを排除する事で、無駄な騒乱を消し去っていく。
自発的な行動を求めての行動が、そんな所に結びついていった。
ある程度それも期待し、予定はしていたが。
これはトモルにとっても予想外な部分ではあった。
「ここまで影響が出るとは……」
実行してから数ヶ月。
その結果は如実にあらわれていた。
目立つところでは、治安。
無駄な喧嘩や諍いがなくなった。
これにより良い意味で世間は静かになった。
また、場を引っかき回す者がいなくなったので、話し合いも建設的になっていった。
少なくとも反対のための反対などは消えた。
自分の利益だけを考えた提案も消えた。
全員が納得するような案もそうそう無いのだが。
しかし、出来ないことは諦めて妥協する事も出来るようになった。
それは決して最善の結果ではないだろう。
だが、事を停滞させるよりは良い。
少なくとも前に進んでいける。
また、そういう状態が自発的な人間を増やしてもいた。
提案しても無駄な否定や罵詈雑言、ヤジが飛ばない。
それだけでも活発な話し合いが生まれる余地になる。
ダメでもともと、とりあえず提案はするだけしてみよう。
そんな空気が生まれるようになった。
それが意見の活性化を促していた。
そもそも提案というのは、だいたいが無駄なものだったりする。
そんなものでも、無駄に否定せず、罵倒せずに言えるというのが良い環境を生み出す。
何を言っても文句を言われない、ケチをつけられないとなれば、安心して口を開く者も出てくる。
それが自発性を促す事につながっていった。
自分の意思を口にする。
何らかの手段で表現する。
それが世の中を活発化させていった。
そうなるまでに時間はかかったが。
それでもわずか数ヶ月である。
数ヶ月で成果が見え始めてきた。
モンスター領域を開拓したトモルの領地で。
そして、トモル側の勢力地のほとんどで。
文句を言う奴を排除していったら、各所で成果が出てきた。
ここでトモルは、自分の考えが多少間違っていた事を感じた。
自発性がないのではない。
自発性を妨げる奴がいたのだ。
元々、それなりに意見や考えをもってる者はいた。
それを妨げる者がいたから出てこなかった。
排除すれば問題はなくなる。
それでも、やはりなかなか言い出せない者もいる。
こればかりはどうしようもない。
そういった者達がなんとか出来る場所や状態を作っていくしかない。
だが、今まではそれ以前の問題があったのだ。
邪魔をする者がいた。
それを消す。
ただそれだけで良かったのだ。
それだけで世の中はかなり変わる。
良い方向に。
その事に気づけた。
これは非常に大きな収穫だった。
とどのつまり、害悪になる輩がいた。
それらの特徴をまとめるならば次のようになるだろう。
騒乱を求める連中。
それが当たり前だと思ってる輩。
こういった者がいたから、言いたいことも言えないでいる者がいた。
言っても邪魔をされてしまう事が多々あった。
やるべきこと、やったほうが良いこと。
それらを実施するのに無駄な手間がかかっていた。
それを無くした事で、余計な手間や無駄が減った。
そういう輩が本当に邪魔でしかなかったのだ。
「ダメだな、これは」
もとより、そういった者達が世の中を悪くしてるとは思っていたが。
実際に結果が出て、その成果の大きさを見ると唖然とする。
想定や予想を上回る結果が出てきたのだから。
町に出てもそれが分かる。
全体的に表情が良くなっている。
雰囲気が変わった。
「もっと早くやっておきゃ良かったな」
これまで何度も思ってきた事である。
古くはタケジの一家を潰した事から。
その他、様々な出来事において、大なり小なりこんな事を思ってきた。
結果がどうなるか分からないから慎重にやっていた事もあったが。
しかし、予想される結果が良い方向に動くものについては、常にこういう感想を抱いてしまう。
もっと早くやっていれば。
もっと早く良い結果が得られたのだ。
それをためらっていたのが悔やまれる。
「しくじった」
絶大な能力をもっていても、なかなか上手くいかないものである。
ただ、これで踏ん切りがついた事もある。
一つは教会の完全排除。
もう一つは、領内における施策について。
「やるか」
晴れ晴れとした表情でトモルは決断をした。




