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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第9章

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333回目 王様を倒す覇王という馬鹿げた妄想

「上出来、上出来」

 辺境王族が勢力を拡大していく。

 トモルにとって理想的な形だ。

「頑張ってもらわないと」



 トモルには王族を排除する意思はない。

 自分が王になるという考えがない。

 そんな馬鹿馬鹿しいことする気にもなれない。

 本気でそう考えている。



 上に立つ、というのは結構しんどいものがある。

 得られる利益は大きいのかもしれないが。

 しかし、王族を見ているととてもそうは思えない。

 実権は貴族に握られている。

 そして、辺境王族のようにトモルのような有力者に左右されている。

 それを見ていると、これはこれで苦労が多そうだと感じてしまう。



 第一、王様王族を倒して実権を握るのも手間だ。

 そうなると、相応の力をそなえてなくてはならない。

 全国を統一して維持するような。

 そんな事に労力をつぎ込むのが面倒だった。



 そんな事するくらいなら、今いる王様王族を使ったほうがいい。

 実権はないとはいえ、体制は出来上がっている。

 それを利用した方がよっぽど楽に統治が出来る。



 今現在、四苦八苦してるからよく分かる。

 拡大する勢力を維持する為に、必要な人材を集める。

 人材を作る為に教育する。

 人材を運用する為に、制度を作っていく。

 上に立つとなると、こういった事をしていかねばならない。



 一代きりで終わるなら、こんな事考えなくていいだろう。

 体制も何も作る必要は無く、ただ国内全土を蹂躙する。

 それで事足りる。

 だが、自分の子孫の繁栄も考えるとそうはいかない。



 上に立ってその立場を維持する。

 これを続けていくためには、その為の状態を作らねばならない。

 それを用意するためにどれだけの労力を注ぎ込まねばならないのか。

 ちょっと考えるだけでも、その面倒さにうんざりする。



 日本の記憶でも似たような事がある。

 例えば、織田信長、徳川家康。

 織田信長と徳川家康は、小さいとはいえ大名に生まれた。

 既に体制があるし、譜代の臣下がいる。

 そこから始める事が出来た。



 豊臣秀吉は下っ端から始まったとは聞く。

 しかし、自分で勢力を作っていったわけではない。

 織田家の中で成り上がっていった。

 既にある組織がなければ、関白にまでなれたかどうか。



 いずれも基盤となる組織や体制があった。

 その中で出世していった。

 本当に裸一貫から始まったわけではない。



 独立開業して身一つからはじめて一代で成り上がる。

 それはかくも難しい。

 いくらトモルでも、それが出来るとは思えなかった。

 なにせ、辺境の男爵の生まれだ。

 統治機構と言えるほどたいそうなものはない。

 譜代の家臣なんてものもない。



 だから、支配地域が増えた今、四苦八苦している。

 特に管理職が不足している。

 それらには、自分で仕事をするのとは別の能力が必要になる。

 人を使う能力が。

 それをもってる者は少ない。



 王族はそういったものを既に持っている。

 それは権威という目に見えないものであったり。

 法律制度もそうだが、不文律の慣習やしきたりなどもある。

 また、代々の臣下という、裏切る事の(それ程)ない存在も。

 こういったものを備えているのが王族だ。

 それに代わるようなものを用意するのは、トモルの能力をもってしても難しい。



 その実例の一つが旧氏族だ。

 王族を支える臣下の血筋。

 それが今も王族の周囲にいる。

 股肱の臣というのだろうか。

 そういった者達をトモルは持ち合わせていない。



 こうした事を考えると、王様王族を排除するのが馬鹿らしくなる。

 実権は握るにしても、既にあるものをそのまま使っていた方がマシに思える。

 トモルの求めているのは、平穏な暮らしだ。

 それが得られるなら、別に頂点に立ってる必要は無い。

 子々孫々途絶えることなく繁栄していけるならそれでいい。



 その為に、邪魔になる藤園を排除しようとしてるだけだ。

 藤園は権勢を保つ為に、他の氏族などを排除している。

 また、不当な圧力をかけてくる。

 自分の勢力以外が力を持つのを妨げるためにだ。

 献金の強請もその一つだ。

 贅沢をするためというのもあるが、第一の目的は相手の力をそぎ落とす為。



 そういった事をしてくる奴らだから排除する。

 今はトモルが絶大な力を有してるから対抗出来る。

 しかし、トモルが死んだらどうなるのか?

 その後の揺り戻しが怖い。



 だから、揺り戻しが起こらないようにする。

 藤園を消滅させる事で。



 その目的達成の為に、わざわざ王様になる必要は無い。

 藤園排除後の統治体制をすみやかに確立する為に。

 むしろ、王様王族を立てて、早急に事態をおさめねばならない。

 政治の中心にいた連中を根こそぎ排除するのだ。

 どうしたって混乱は起こる。

 それを収拾するには、既にある体制が必要だ。



 改善はするにしても、既にあるものを利用する利点はここにある。

 一から構築する必要がないから、そのまま使える。

 問題点は解決するしかないが。

 その問題点も、何もない所から作り上げる労力に比べればマシであろう。



 旧氏族を復権させてるのもこのためだ。

 何の素養もない連中と違い、少しは何かをもってる。

 たとえ使用人のような立場になっても、代々受け継がれた教えなどがある。

 それだけでも十分だ。

 統治の心得などを少しでも知ってるならば。



(何が悲しくて王様にならなくてはならんのだ?)

 トモルにはそれが全く分からなかった。

 後先考えずに上に立ちたい、そう思ってるならともかく。

 だが、それは単なる支配欲でしかないだろう。

 自分の事だけしか考えていない。



 自分が上に立てればそれでいい。

 国がどれほど混乱しようが知った事ではない。

 子々孫々が政治の中心でどれほど苦労しようと構わない。

 そもそも、こういった事に目を向けないから目指すのだろう。

 王座王位というものを。



 覇道というのはそれでも魅力的なのかもしれない。

 だが、まともに統一・統治・統合を考えるなら、何も考えないではいられない。



 それならば、今存在している王様王族を使った方がいい。

 時折鬱陶しいが、自分が王様になるよりはマシだ。

 王様になるための努力などをしないで済む。



 トモルはそんな体制の中でのんびりと過ごせればそれでいい。

 かわいい女房達と、その間に生まれてくる子供達と一緒に。

 それが出来るなら、別に政治の中心にいなくても構わなかった。

 むしろ、政治や仕事に追い回されたくはなかった。



(そんな事より……)

 グータラと寝転がりながら生活していきたかった。



 幸いな事に、トモルの願いは叶いつつある。

 王族は旧氏族を使って各地に代官を送り込んでいる。

 そうして統治体制を作り上げている。

 人手が足りないので、落ちぶれている旧氏族も呼び集めている程だ。



 おかげでトモルが統治に乗り出す必要がない。

 面倒は辺境王族が全部引き受けてくれている。

(ありがたや……)

 おかげでトモルは、自分の領地運営に全力を傾ける事が出来る。

 もし自分で音頭を取っていたら、こうはいかない。

(これからも頑張ってもらおう)

 不敬極まりない考えだが、トモルは王族の更なる健闘を願った。

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