330回目 藤園、内部抗争開始、その関係者の動き
「えらいこっちゃ」
トモルからよこされた情報。
それを見て辺境の王族は思わずそう漏らした。
「大変な事になってるな」
大変である。
何せ、空き地になった領地の管理を任されたのだから。
いずれ新たな領主がやってくるだろう。
政府がそれを決める。
だが、それまでは辺境王族がおさめる事になる。
というと正確さに欠ける。
正確に言うならば、領地の全ては王家のものである。
その一部を貴族が代わりにおさめてるだけだ。
なので、王家があずかるのではなく、一時的に王家に戻ってきたというのが正しい。
そんな土地をおさめるために、とりあえず代官を派遣する。
あくまで次の領主が来るまでのつなぎとして。
しかし、新たに赴任するものがいなければ、そのまま代官が統治する事になる。
事実上、王族領が増える事になる。
それが全国あちこちで発生していく。
藤園の内部抗争が始まったことで。
辺境王族の管理下でも。
トモルの近所にいる王族のところでも。
様々な問題をおこして貴族としての地位を失っていく者達。
それにより、空白地となったいくつかの土地。
辺境の王族もその管理をせねばならなくなる。
しかし、その為の人手が足りない。
「代官といってもなあ」
「適任者はそうそういるものではない」
王族親子はそういって嘆く。
どれほど小さくても、領地を切り盛りするのだ。
それが出来る人間などそうそういない。
やむなく、現地の庄屋や豪農などを代官に臨時で取り立てる事もある。
だが、それでは一時的な代行も難しい。
やはり、それなりの教育を受けた者が必要になっていく。
「どうにかならんものか……」
嘆きの声が途切れる事なく漏れていく。
そんな所にトモルが、声をかける。
「それなら、旧氏族を使えばいいじゃん」




