326回目 求める強さの水準 2
レベル40。
歴史に名を残すような英雄達の水準である。
それくらいの強さは身につけておきたかった。
出来るならば、それ以上になっておきたかった。
実際にどれだけ強ければいいのか。
ここの見極めが難しい。
単に敵を倒すだけなら、今のままで十分だ。
だが、国一つを相手とすると話が変わってくる。
国内にいる敵対勢力。
それらを倒していくとなると、どれだけ力があっても足りない。
敵が全部目の前にいるならいいのだが。
残念ながらそうではない。
国内のあらゆる所にいる。
それらを巡って倒すとなると、相当な労力が必要になる。
その労力を出すためにも、能力が必要になる。
国中を駆け巡って、敵対勢力をあぶり出して殲滅するだけの。
となると、どうしたって英雄と同等の水準は欲しくなる。
実際にはそれだけでは足りない。
あくまで英雄と同等というだけだ。
それは確かに強力ではあるが、国を覆すほどではない。
英雄の強さとは、結局は一つの戦場での強さだ。
国の命運を背負う事はあっても、国一つを覆すほどではない。
それでも、目安にはなる。
国の行く末を担うほどの存在。
それだけの強さがあれば、軍勢の一つくらいはどうとでもなるだろう。
そうなれば、戦場で負けることはない。
もっとも、トモルの能力値は、すでにそういった英雄すら凌駕してるのだが。
それだけの力があっても、まだ不安が残る。
敵がそれだけ巨大だからだ。
(一カ所に集まってればなあ)
そうすれば、一網打尽に出来る。
悩む事もなく、その場にいる全員を倒せばいい。
それで解決だ。
だが、敵は国内に散らばっている。
それだけの範囲にいるというのが問題だった。
どれほどトモルが強くても、それは一カ所での事でしかない。
国全体を覆うほどの力は無い。
(もう少しチートな力があればなあ)
今のままでも十分にチートであるが。
それでも、もっと力が欲しいと思うところだ。
贅沢な話ではあるが。
(まあ、間引きもしなくちゃならんし。
レベルはどんどんあげていこう)
そう思ってモンスターを蹂躙していく。
しばらくモンスターによる被害を考えなくても良いように。
もちろん、自分のレベルだけを上げてるわけではない。
手下をつれてのレベル上げもしていく。
トモルの強さも大事だが、味方の強さも必要になる。
出来るだけ多くの者に、それなりのレベルになってもらいたかった。
「目標、レベル40!」
そんな無茶を標語にして手下をかりたてる。
たまったもんじゃないのは手下達だった。
「勘弁してくだせえ……」
「死ぬ、死んじまう」
「どうか、お情けを」
そんな声があがってくる。
だが、トモルは容赦なく手下のレベル上げを強行していく。
さすがに死ぬような無茶はしないが。
モンスターの巣をはしごしていくくらいはやる。
付き合うほうの苦労は言語では表現しきれない。
だが、そのかいあって、手下も相当なレベルになっていく。
特に、これはと見込んだ者達は。
優先的にレベル上げをさせられていく、その分苦労が一番大きい者達。
彼らのレベルは、とっくに20を超え、30に届くほどだった。
既に国の中でも有数の実力者である。
そんなものを数十人ほど揃えていた。
連れ回すトモルもそれなりに大変だった。
それについていった者達の努力は、更にそれを超える。
よくぞ逃げ出さなかったものだ。
しかし、ついていく者達も分かっている。
無理や無茶と思える荒行。
これをこなせば更なる高みに至れると。
そうなって何がどうなるのかは分からない。
だが、能力が上がることは決して悪い事ではない。
優れていれば、ものの見方や考え方も変わる。
出来ない事が出来るようになれば、選択肢も増える。
その段階に至るには、多少の無理や無茶もせねばならない。
幸い、それが出来る環境にいる。
トモルという存在がそれを可能としている。
ならば、挑むだけの価値はある。
トモルに引っ張り回されてる者達もそう考えている。
他の誰の為でもない、自分自身のためなのだと。
それが彼らを支えていた。
その結果が、レベル30超えである。
その段階に到達出来ただけでも、彼らには意味があった。
英雄とまではいかなくても、国内有数の能力を得ているのだ。
それだけの人間が揃ってるというのが強みである。
そこまでいかなくても、レベル10超えの者はごろごろと転がっている。
それらがトモルの配下として存在しているのが大きな強みだ。
だが、こうした人材を増やす事も難しくなっている。
レベル上げそのものはやっていけるのだ。
だが、そもそもの人数が少ない。
現状の人口でまかなえる兵力や戦力は上限がきている。
これ以上増やすには、更なる人口増加が必要だ。
だが、人が簡単に増えるわけもない。
余所から流入してくる人間を加えていってもだ。
そうした人間がトモルや柊領の為に働いてくれるかどうかも分からない。
このあたり、忠誠心の問題にもなる。
何より、人口増加を狙うなら、やはり結婚して子供を産んでもらうしかない。
だが、こんなの強要できるわけもない。
今、トモルが切り開き、魔術の力をもちいて整備した土地を提供している。
そこに入植した者達が次々に結婚してるのは確かだ。
そういった者達が次世代の人間を次々に誕生させてはいる。
人口は確かに増大してきている。
しかし、そうして生まれた者達が戦力になるのに十数年はかかる。
確実に人は増えていくだろうが、かなり長期的に見ていかねばならない。
(どうしていこうかな)
悩みどころである。
もっと違った考え方、やり方を考えねばならないだろう。
モンスターの巣を破壊しまくりながら。
安全に入植できる土地を大きく確保して。
ついでに地下資源なども探知魔術で発見しつつ。
これからの事を考えていく。
それは、家に帰ってから本格化していく。
待望の事態が発生していた事によって。
いまさらだが
メッセージまで送ってもらってありがたい
あと、誤字脱字報告、本当に助かってる




