314回目 借金問題の解決、主に貸し出す方の救済 2
更にトモルは、貸金業者を次々に保護していった。
返済されない貸し付け残高が増えてる者達を。
有力貴族ににらまれ、金をむしり取られてる者達。
それらをトモルは自領に招き入れていった。
「金を返さない奴らにせびられないようにするから」
その言葉にすがってやってくる者が実に多い。
それならばとさっさと店をたたんで出奔してくる者が列をなす。
「あと、貸し付けた証文は俺にくれ。
全額を一気に、とはいかないが少しずつでも返済するから」
こんな言葉も続く。
貸金業者が金を貸してる貴族から証文を奪ってきて。
「ただ、すぐには返せない。
それは分かってくれ」
そう言って頭を下げたトモルに、貸金業者は泣いて喜んだ。
なお、貴族が握ってる貸し付けの証文だが。
これについては有無を言わさず奪ってきた。
直接出向いて。
もちろん、非公式にである。
夜中のうちに、相手の寝室に飛び込んで。
それに文句を言う者もいた。
すかさずトモルは、パンチやキックで黙らせた。
また、
「借金の証文、全部寄越せ」
と言われれば特に文句を言う筋合いもない。
「代わりに俺が払う」
と言われれば万歳三唱をしようというものだ。
ただし、
「これ以上の借金が出来ると思うなよ。
俺の所に来てる商人からはな」
と釘をさされる。
そんな横暴な、と言いかけた貴族もいるが、すぐに黙る事になる。
トモルによる鉄拳教育によって。
「なにか問題でも?」
確認するトモルに、血みどろになった貴族が反発する事は出来なかった。
「安心しろ。
お前らが心配する必要なんてこれっぽっちもない」
どういう事なのか貴族は疑問を抱いた。
「今日、この瞬間にお前らは消えるんだから」
その意味を察する前に、トモルは動いた。
精神操作の魔術。
それにより貴族の考えや行動を制御していく。
それを貴族だけではなく関係する全ての者達に施していく。
親兄弟、配偶者、子女に至るまで。
「明日の朝までには、全員片付いてるから」
その言葉を最後に、トモルはその場を立ち去った。
それからしばらくして。
トモルの施した精神操作の魔術に従って貴族達は行動を始めた。
ある者は首をつり。
ある者は窓から身を投げ。
ある者は刃物で自分の急所を突き刺した。
こうして、無駄な借財を作り上げていった者達は潰えた。
翌朝、部屋にやってきた使用人がこれを発見する。
すぐに大騒ぎになったが、それはトモルが気にするところではない。
その領地は、王家の代官が派遣される事になる。
別の貴族が就任するまでの間は。
その貴族を選別するのに、すったもんだの騒動があるのだが。
それもまたトモルが気にする事ではない。
領主を無くした土地がどうなろうと、トモルの知った事ではなかった。
誰かが無難に治めるならそれで良い。
更に荒れ果てるならそれでも良い。
トモルが統治してる場所ではないのだ。
どうなろうと知った事ではなかった。
それで中央の貴族が暗闘を起こすならそれも良し。
それで勢力が削がれるならなお良し。
トモルが損をする事は無い。
それら全ては、くだらない事で無駄な負担を作った連中の責任である。
トモルに非は一切無い。
それよりも、金貸し達の保護が先だった。
彼らが二度と追い立てられないように。
不当な貴族が押しかけてこないように。
そうするのが最優先である。




