178回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 8
それでも、人材が周りに集まってきてるのはありがたいものである。
そんな者達のおかげで企みも少しずつであるが進める事が出来ている。
能力はトモルに比べれば確かに低い。
しかし、トモル一人ではまかなえない面を制圧する事が出来る。
数は力だという事を実感する。
質をどれだけ高めても決して届かない部分を補ってくれる。
統率や運営などの技術のおかげで知識としては分かっていた事である。
しかし、実際にやってみて確かめる事で実感として身に染みていくものがあった。
事の進行そのものはそれほど早く進むわけではない。
だが、多方面において様々な事態が同時進行していく。
トモル一人ではこうはいかない。
一人で何十カ所も巡るよりも手間がかからない。
一つ一つの事案の解決や解消には時間がかかるが、全てを同時にこなしていく事が出来る。
結果として、一人で全部をやるよりも早く解決していく。
トモルが動くのは、その中でもどうしても進展しない部分だけになる。
さすがに子供の手に余る事だってある。
そういった所はトモルが前に出て解決していくしかない。
しかし、そういう場面もそれほど多いわけではない。
たいていの事は組織として動く学生達で片付けられていく。
(楽だよなあ)
指示を出し、結果を待つ。
極論すれば、トモルのする事はこれだけだ。
やり方を教えたり、行き詰まった場合の対策を考えたりもするが、それは何かが起こった場合の対処だ。
常にそんな面倒があるというわけではない。
もちろん、何もやった事のない学生達が失敗もなく事を為せるわけもない。
最初は失敗だらけで、トモルが出なければならない事態も多かった。
しかし、それらも時間と共に減っていく。
最初は簡単な事も出来なかったが、二ヶ月三ヶ月と時間が経つごとに誰もが自分の仕事を理解してこなせるようになった。
おかげでトモルの仕事は本当に指示を出して結果を待つだけになっていく。
(とはいえ……)
だからと言って何もしないで良いほど楽なわけもない。
指示を出すという事は、何をさせるかを考えねばならない。
その為には、何を達成するのか、現状で何をしなくてはいけないのかを把握せねばならない。
目的までの道筋を見極め、現状を把握する能力が必要になる。
そして、的確な指示を出す事も。
これはこれで難しいものがある。
したい事がはっきりしていても、その為に必要な行動が分からないといけない。
やるべき事が分かっていても、状況が分かってなければ働きかける場所も分からない。
働きかけて自分達の求める動きをさせるにも、それを達成出来る能力がなくてはいけない。
必要な能力を持ってる者がいても、指示の出し方が下手だとやるべき事を伝える事も出来ない。
これらをこなして実行にうつっても、成功するかどうかは分からない。
それでも出て来る結果をもとに、次は何をするのかを考えていかねばならない。
様々な働きかけによって出てくる成功と失敗。
それらが生み出す状況の変化。
それを的確に把握して次の行動につなげていくのは頭を使う。
しかも同時進行であらゆる情報が入ってくる。
それらから進捗や状態の変化を見極めるのは難しい。
一つ一つは単純な事柄であっても、積み重なると複雑怪奇な情勢に変化する。
そこから有効な一手を打つのは難しいものがあった。




