177回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 7
「でもま、それなりに動くようになってはきてるな」
「そうですか?」
同室の一人が疑問形で応じる。
「要求されてる段階にはまだ遠いような気がしますけど」
「前よりはマシだよ。
まだまだ頑張ってもらわないといけないにしてもな」
「まあ、それで良いなら構いませんけど」
「ああ、それでいい」
出来ればもっと早く成長してもらいたいとは思う。
だが、子供の能力からすれば現段階でも充分な成長ではある。
文句を言うわけにはいかなかった。
「タカフミはどう思う?」
何となくトモルはそう尋ねてみた。
「俺はこれでもまあ良いとは思ってるけど。
お前はどうなの?」
「どうと言われても」
同室の御子神タカフミは、どう答えて良いのか考えこんでいく。
「分からないとしか」
「そうか?」
「そうですよ。
トモルさんが言った事は分かってますけど」
「けど?」
「僕にはどのくらいやれてればいいとかは分からないから」
「そっか……」
それを聞いてトモルは、タカフミの言いたい事を理解する。
(やっぱり、まだ分かってない事が多いか)
タカフミの返事からはそれが窺えた。
トモルの出した指示や求める練度には足りてない。
それは分かっている。
だが、現段階ではどの程度出来ていれば良いのかなどは分かってない。
それに対しての自分の考えというのもまだ無い。
そこまで考える余裕もないし、土台となる知識もないからだろう。
今のところ、言われた事を素直に実行してるだけではある。
(それだけでも凄いけど)
まだ子供である。
トモルと同じ年齢だ。
だから無理はさせられないし、過大な要求も出来ない。
言われた事をちゃんと実行出来てるだけでも充分である。
タカフミが無能とかいう事は決してないのだ。
それどころか、トモルの要求する水準と現段階の状態をしっかりと把握してる。
それが出来るだけでも大したものだった。
まだ8歳なのにだ。
そんなタカフミに、更に多くを求めるのは無理というものだ。
(やっぱりレベルアップが大きいのかな)
タカフミはトモルが無理矢理ダンジョンに連れていった者の一人だ。
自分の周りにいる、もっとも早くからトモルに従ってる者の一人だったからだ。
能力や才能がどの程度かは分からないが、そういう姿勢をいち早く見せたのは好感が持てた。
たとえそれが強者に取り入ろうとするずるがしこさから来てるものであってもだ。
ならばその他大勢よりは優遇しようというのが人情である。
加えて、その後も誠意をもって接してくれるのであればなお良い。
幸いタカフミはそういう姿勢を見せてくれてる者である。
なので、無理矢理にでもダンジョンに連れていき、強引にモンスターと戦闘をさせもした。
その結果、レベルが二つほど上がり、現在レベル3。
学生の手下の中では今のところ上位のレベルである。
その分、能力も上がっていて、より深く考える事も出来るのだろう。
とはいえ、その差はトモルからすれば微々たるものではある。
(けど、他の人にとっては大きな差なんだろうけど)
一般人と自分との違いを感じる。
一般人にとっては、能力値が10点違うだけでも大きな差になる。
レベル3になってるタカフミは、おそらくそれだけの差を他の学生との間につけている。
だから割と色々考える事も出来るようになってるのだろう。
あとは知識などを増やせば思考の幅を増やす事が出来るはずである。
そう簡単にはいかないのが残念であるが。
(上手く他人の能力を上げることが出来ればいいんだけど)
強化魔術などによる一時的なものではない。
地力の部分を向上させるよりよい方法がないかと思ってしまう。
今のところ、そんなものは思いつきもしないし、そういった情報も無い。
地道にレベルを上げて、本人の勉強や練習をしてもらうしかない。
(やっぱり時間はかかるよな)
どうしようもない部分である。




