176回目 出来上がった流れがより大きな状態を作り出していく 6
「今日も特には何も」
「そっか」
放課後のいつものやりとり。
もう珍しくもなくなったトモルへの報告が終わる。
昼休みなどの定時報告でもそうだったが、今日も特に何も変わらない日々であったようだった。
「それじゃ、あとは夜に」
「はい」
「分かった」
そう言って報告に来ていた者達も帰っていく。
授業が終われば課外活動に出向く者もいる。
いわゆる部活にサークル活動など。
本格的に何かに打ち込んでるところから、たしなみや娯楽程度に何かをしてる者達の集まりがこの学校にはある。
それも学友作りの、将来の人脈作りの一環という側面もあるので、これらに参加してる者はそれなりにいる。
学校が終わってからも生徒の活動は終わらない。
そこに出向くまでの短い時間が夕方の報告時間だった。
このような調子でトモルは定時の報告をさせている。
朝、学校に出向く前に寄宿舎で。
女子からは学校に登校してから教室で。
そして昼の休憩で午前中の事を聞く。
更に放課後になった瞬間の夕方。
最後に、課外活動などが終わって生徒が寄宿舎に戻ってきてから。
この四回の定時報告をトモルは義務にしていた。
特に何も無くても、この時間に報告は絶対にさせている。
そうする事で、全員に滲透させていった。
自分達が何に所属しているのかを。
何かがあった場合の報告が欲しいというのも確かにある。
だが、それよりも習慣としてこういった作業をさせる事の方が重要だった。
やらねばならない事があれば、嫌でもそれを意識する。
何気ない事であっても、続ければ何かしらの影響は出てくる。
定時報告は、全員が一つの集団に所属してる事を意識させる為のものだった。
なので、何も起こってなくても必ずさせていた。
報告のついでに指示も伝えていく。
特別手間のかかるような事はさせてはいないが、何かしらやっておくように命令を出す。
それは寄宿舎の掃除であったり、草むしりであったり。
運動や勉強である事もある。
それらに特別な意味があるわけではない。
ただ、指示する事を通して、される事を通して指揮系統をはっきりさせておくのが狙いだった。
常日頃の習慣が大事である。
いきなりやれと言われても動ける人間はいない。
才能に恵まれてる者は違うかもしれないが、大半の凡人には不可能だ。
だからこそ、毎日の作業を通じて全員に馴染ませていくしかない。
それが何かあった場合に役立つ事になる。
レベルアップだけでは培えない集団としての機能を、こうして学校の中で育てていった。




