お坊ちゃん
仕事が終わってすぐに食事の支度というのがちょっときついので、食費の削減を求めてみた。
実際料理人を雇うことを考えればそれでも割安なのだ。
休日は部署ごとに違うので、料理担当も日によって休む。
真影としては休みの日には下ごしらえでもしてもらえればありがたいと思うが、そこまで求めるのも無理だと思われた。
料理当番で一番料理の技術があるのが真影なので、真影が中心となってこれからの計画などを立てることになる。
汁物とご飯、炒め物一品の食事がしばらく続いていた。
「蒸し物もなあ、あの米粉買ったのはいいけど使いにくいんだよなあ」
成形が小麦粉と違って難しいためなんとなく使いにくくて敬遠してしまう。しかしせめてもの贅沢と燻製肉を使った炒め物を出してみる。
副菜の和え物を作っている深々の様子がおかしい。
「どうかした?」
大鍋をあおりながら訊く真影にちょっと引いた顔をされる。
多人数分を作るため鍋は結構でかい。そして真影は同僚たちの中で一番小さい。それが軽々と鍋を振っている光景は少しだけ異様だった。
「なんか疲れているのかも」
それはそうだろう。掃除班は交代制だが、調理班は全員参加でやっている。
そして、米を炊くために竈の前でうずくまっている金武とその横でお手伝いをしている藩冠黎を見て少しため息をつく。
掃除班から手伝い当番に来てもらったのだが、本気でいないほうがましだった。
包丁の持ち方から教えなければならなかった。
そのうえどうして自分がこんなことをしなければならないのかと不満たらたら、もともと使用人のいるような家の人間なら今の状況が不本意なのはわかるが、それはみんな同じなのだが、彼は特にそういうことをグダグダいうのだ。
漢途から聞いた話なのだが、雑用全般となると庁舎を訪れる民間人の話を聞く仕事もあるのだが、最初から何か言おうとするのを無視するのだとか、来たばかりで説明できるようなこともないはずだが、それでも最低限の受け答えはするべきだろう。
たぶん貴族の家の生まれだと思うが、今は下っ端の官吏に過ぎないのだ。
冠黎の様子をおずおずと見ている三人を見て、たぶん同じ学問所出身なんだろうとあたりをつける。
貴族出身と民間出身はひどく差別していたところだと聞いたから。
聞いた話だと、以前は貴族出身と民間出身はあてがわれる部署も待遇も以前は違っていたらしい。
現王となった後で、下っ端は分け隔てなく下っ端仕事をするようになったのだとか。
最初から暮らしが底辺だった真影のような立場はともかく、坊ちゃん育ちの他の面々には辛いことになるようだ。
「そろそろ炊けるな」
漢途が竈から一落とす。蒸らしに入るらしい。
米は炊いても余らないから、コメが余ったときに作るちょっとした軽食が作れない。
炊いた米を乾かしてから揚げるのだが、これは小腹がすいた時に良いのだ。
集団生活も不自由なもんだなと思いながら、冠黎に人数分の皿を用意するように言う。
ものすごい目で睨まれたがそれくらいでひるむような性格はしていない。
いかにもいやそうに皿を持ってくる。
働かざるもの食うべからずと言ってやりたい。
真影は自分の目が座っているのを自覚した。




