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園遊会

 美蘭は青ざめた鶏頭を女官達の手を借りて自室に連れて行った。

 完全に昏睡状態に陥っている鶏頭に対して女官長は医師の手配をするとだけ言って美蘭に園遊会に戻れと言った。

 もう美蘭にできることはない。

「しかし、仮にも妃の立場にあるものが、真昼間から飲酒など」

「自分で飲んだのではないと思うわ」

 美蘭は硬い声で言った。

 園遊会が始まってそう時間はたっていない、だとすれば大量に飲酒することは不可能だ。わずかな量でこうなったとすれば、自身で飲酒が体質に合わないということを知っていたはず、なら自分で飲むはずがない。

 だとすれば誰かが騙して飲ませた。

 さて、誰だ。

 美蘭は鶏頭にそういうことをしそうな顔を思い浮かべる。

 一番やりそうな睡蓮と百合は一緒に歌舞音曲にいそしんでいた。それにあの二人に進められて何か飲み食いするほど鶏頭が馬鹿だとも思い難い。

「それはさておきです、戻りなさい」

 女官長に言われて美蘭はその場を後にした。

 実際は戻りたくはない。だが戻るべきだろう。

 酒をどういう意図で鶏頭に盛ったのだろう。

 王の前で醜態をさらさせて寵愛を削り取ろうとしたのか、それともその体質を知った上で死ぬ可能性に賭けたのか。

 首を振る。きっちりと結い上げられた髪のせいで頭痛を起こしそうになる。

 最近は長い裾をさばくのも慣れたつもりでいたが、やはり足元が重い。

 

 戻ってみれば園遊会は何事もなかったように続いていた。

 椿が王の前で笛を吹いている。

 そのわきには薔薇が控えている。あの二人なら鶏頭に何か飲ませることはできるのではないだろうか。

 鶏頭の味方をしているような態度をとっている。それにもともとそのつもりで鶏頭に近づいたのかもしれない。

 いや考えすぎか。

 美蘭は大きく息を吐いた。

 菫を探す。菫なら見ていた可能性がある。

 しかし肝心な時に姿を見せない。

「さっきは何だったの?」

 玉蘭が美蘭に声をかけた。

 琵琶は手に持ったまま手持無沙汰な様子だ。

「さっき、鶏頭が体調を崩したのよ、なんだか悪いものを食べるか飲むかしたみたい、何を口に入れたか見ていた?」

「ずっと琵琶を弾いていたからな、こういう時は楽器を演奏していれば、状況はごまかされるんだ、楽器を下ろして舞えともいわれないから」

 なるほど、琵琶の腕前は舞の腕前をごまかすための方便かと納得する。

「しかし、そんな体調の悪くなりそうなもの出されているかな?」

 お茶と焼き菓子と砂糖菓子、どちらもそう簡単に悪くなるものではなく、それで食あたりは無理がある。

「ここってお酒は手に入るの?」

「夜、頼めばもらえるはずだけど、飲みたいのか?」

 美蘭は酒をたしなむ趣味はない。そんな金はなかったのと、接客業で酔っ払いの醜態を目の当たりにしたせいだ。

 それはともかく飲んだふりをして隠し持つことは不可能じゃないと判断する。

 王は漫然と座っているだけだ。

 ちょっとイラっとした。

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