園遊会
かわるがわる美女たちが王の前に現れ、曲を奏でたり舞を舞ったり歌ったりと己の芸を披露していた。
それを王は漫然と見ているだけだ。
むしろ背後の男たちのほうが熱心に見ている。
男たちはいずれ妃達を下げ渡す相手として王が考えている連中だ。
どれをいただこうか鵜の目鷹の目で女達を観察している。
「しかし、さっきの女の子、結構よくないか?」
不意に聞こえてきた言葉に王は振り返ってその発言者を見る。
「さっき体調を崩した誰かを介抱してた女の子、いざという時に心映えというものが出るなあ」
「そんな子いたか?」
「白地に青い小花が一面に描かれた着物を着ていた子だよ、容姿に関しては全員それなり以上だし、それなら心遣いのいい子がいいな」
実際集められた女は、全員十人中八人は好みはあれど美人と認める女達ばかりだった。
「青い花」
王は呟いた。
勿忘草が青い小さな花だということはわかっていた。それに遠目でそれらしいのを見たかもしれない。
「あの子だ」
ひときわ小さく、それゆえ悪目立ちする少女がいた。
勿忘草の妃は玉蘭の妃と何事か話し込んでいるらしい。
こちらを見ようともしない。
王に無関心な一派として勿忘草とその友人達がいることはわかっていたがこうまで見事に無視されるとちょっとイラついてくる。
「でもな、ちょっと細すぎないか、やっぱり女は柔らかい肉だろう」
背後で男たちが少々下ネタな話を進め始めるのにも少しイラっとする。
「陛下」
声をかけてきたのは菫だ。菫が何か背後の男達もわかっているので存在ごと黙殺する。
濃い紫草の衣装に身を包んだ菫は酒を満たした瓶を両手に捧げ持ち、微笑んで見せた。
「先程、鶏頭殿が倒れられました」
王にだけ聞こえるように酌をしながら菫は囁く。
「勿忘草殿は何か盛られたのではないかと」
先ほど背後の男が見た光景はそのことかと王も納得する。
「鶏頭の命に別状はないのか?」
「今のところは、ですがしばらく寝付くことになりそうです」
菫は淡々と答えた。
鶏頭が何らかの危害を加えられるのは既に決定事項のようなものだ、運が悪かったがあきらめてほしいと思っている。
「勿忘草以外に、最後に鶏頭に近づいたものは?」
「これから女官たちに聞き取り調査する予定です」
「そうか」
それであっさり興味を失ったらしい王は玉蘭と話し込む勿忘草の様子を見ていた。
菫は瓶を置くと、背後の様子をうかがう。
男達は周囲の女達をじっとりと眺めている。
「陛下、他に呼びたい方はいらっしゃいませんか」
王のそばに侍って酌をする菫は何人かの女達に殺気を含んだ視線を送られている。そろそろ居心地が悪くなってきたのだ。
「そうだな、桂花を呼べ」
その中で一番目立たない名前を呼ぶことにした。勿忘草は今は呼びたくなかった。




