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後宮の茶会 2

ののしりあっているのは初老の域に入った二人だ。

 頭髪にもひげにも白いものが混じっている。

 芍薬の妃は手にした団扇を双方の間に挟んだ。

「今はくつろぐ時間ですのよ、いったい何をなさっているのかしら」

 にっこりと張り付いた笑みを浮かべている。

 しかしその笑みに騙されてはいけないことはこの場にいる誰もがわかっている。

 彼女の後ろには王がいる。

「それではわたくしにどうか説明なさってくださいませな、私のような愚かな女でもわかるように」

 女官に合図をし、新たなお茶を注がせる。

「私はその建築を専門としておりましてな」

「まあ、さようですの」

 ほのぼのとした笑顔で相槌を打つ。もう一人も同じだという。

「堤なのです、私の提唱した堤のほうがよりよく水をためると申しておるのですが、こ奴が認めないのです」

「あら、どうしてですの?」

「それはだ、私の見るところ彼の理論には致命的な欠陥がある。それを考えれば到底賛同などできない」

「そのような欠陥などない」

「いいや私がその欠陥を補う方式を考え出した。そちらの誤りを認めろ」

 双方引く気は一切ない。

 そして双方の形相からこのまま放置したらいつかどちらかが手を出しかねないと判断した。

「それはどのようなものですの」

 あくまで落ち着いて芍薬の妃は話を促す。

 それぞれが専門用語を駆使して口々に言う。

 彼らと近い専門を持つものはうなづいたり首を傾げたりしているが、まったく専門分野が違うものや、女官たちは何を言っているのかさっぱり理解できずぽかんとしている。

「あの、私のような愚かな女にも分かるようにと申し上げたはずですのよ」

 芍薬の妃は少し困ったように眉を顰める。

「しかしですな、これはそのようにしか説明が」

「それならば、よい方法がありますわ」

 芍薬の妃がにっこりと笑う。

「実際に作って試してくださいませ、そして、その堤にどれほどの水が耐えられるか試してみればいいのです。先に壊れたほうが間違っている。それならば誰にでもどちらが正しいかわかるはずですわ」

 言われて双方初めて気があったようだ。ぽかんとした顔で芍薬の妃の顔を見つめる。

「実際に作るとは、それは堤ですよ、どれほどの金がかかるかわかっておいでですか」

「それを壊す前提とは、さすが妃だ剛毅なものだ」

 あからさまな揶揄に芍薬の妃の笑顔は崩れない。

「あら、実際に堤を作れとは申しておりませんわ、あなた方が理想とする堤の形をした模型を作ればよろしいのよ、むろん材料は完全に同じで、この卓に乗るほどのものを作ればいい。それを壊すには、桶数杯の水でいい。結局は形の問題ですもの、これで決着がつくのではなくて」

「模型を作って王の前で試せとおっしゃるのですか」

 学者たちが息をのむ。

「面白い」

 最初に怒鳴った学者がそう言った。

「必ずや私は王の前でその正しさを証明して見せる」

「ちょっと待て」

「自信がないのか、それならば勝負するまでもなく私の勝ちだ」

 そうまで言われて、相手も引き下がるわけにはいかず。

「その勝負受けた」

 どよめきが走った。

「ではそのお話は後日になりますわね、どうぞこのお菓子美味しいのですよ」

 女官に持ってこさせたお菓子をそれぞれに差し出す。

 なんだか、仲裁をしたのか、新たな火種を作ったのかわからないままことは終息した。


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