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吾亦紅

「吾亦紅殿な、結構いい家の娘なんだぜ」

 先ほど見たもののことを圭樹に聞いたところそう返された。

「それで上級妃に進める気満々で後宮入りしたら、なんと下級妃の吾亦紅、まあ腐るよな」

「それじゃ、芍薬殿は」

「知らん」

 そう言い切られて真影は目を見開く。

「仮にも上級妃だろ、なんで知らないんだ」

「それが皆目、どこから連れてこられたかもわからない、気が付いたら後宮で王の寵愛を受けていたんだ」

 やれやれと肩をすくめる。

「おそらく芍薬殿の本当の素性を知っているのは王と数人の側近ぐらいだろう」

「ほかの妃は?」

「よそにやられたのも含めて、下級貴族の娘ばかりだな、むしろ元妃っていう箔がつけられて幸運かもしれない」

 確かに元の家の娘という立場よりはいい条件が付きそうだ。

「なんにせよ、これから大変だな」

「何他人事みたいなことを言ってるんだ? あの芍薬殿主催のお茶会俺たちも裏方で働くことになってるぞ」

 金武がいきなりそう言ってきた。

「何するんだよ一体」

「いつも通りだ、俺たちのいつもやってる仕事、清書だよ」

 漢途がそう言って肩をすくめる。

「要するに学者を集めてのお茶会で、卓一つに書記が付くんだよ、その書記がまとめたものを俺たちが清書するってこと」

「お茶会だろう」

「お茶会だろうと、学者の話し合いだからどこでどんな有益な話が出てくるかわからない、それで書記がついて話を記録することになったんだと」

「なんか面倒くさそうだな」

「くさそうじゃなくて面倒くさいんだよ」

 漢途がいやそうに眉をしかめる。

「十日後に使節が来る、そうしたら戦場だぞ」

 金武の言葉に全員が頷いた。


 使節を招いての歓迎会など見習いの出る幕ではない。そのため暇になるかと思いきやできそうな仕事は全部回されてきた。

 それにすべての官吏がそれに参加するわけでもないので、見張り役もきっちりといる。

「あ、真影君、君は字がきれいだからこれの清書も頼むって」

 いつか洗濯場にいた李柴源だ。

「知り合い?」

「洗濯場で一緒になった人だよ、いつまでもこのまま四人でいるわけにもいかないんだし、そろそろそういう社交のできそうな場所に行ったらどうなんだ?」

 真影のそろそろ選択しろという遠回しな要求を三人は聞かなかったことにする。

 真影はため息をついた。根競べだな。

 そろそろ異臭が漂い始めているのだ。

 柴源が書類を置くと、真影は新しい髪を取り出した。

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