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キレた女が怖いのは世界の常識

 斥候を皆殺しにしてから20分ほど経って、洞窟から二人の男が顔をだした。

 中々戻らない斥候の様子を見に来たのだろう。


「おい、一体なにをしているんだ?」

「襲撃があったんじゃないのか? 全く戦闘音がしないから見に来た……なんだこれは!?」


 様子を見に来た男二人の目に飛び込んだのは、血まみれになって絶命した斥候達と死体をまさぐる女一人。

 

「あ、ども」

「テメェ、一体何者だ!?」

「冒険者ッス。はじめまして、さようなら」


 トップスピードで駆け、腰のダガーを抜き放ち男の首に刺し、もう一人の首に突きたてる。


「が…」

「…へ?」

「死にたくなければ言うとおりにしましょうか」

「………はい」


 ☆   ☆   ☆


 男に剣を突き立て、洞窟内を案内させる。

 歩いて15分、洞窟内開けた場所に着いたところで男が立ち止った。


「おい、一体どうした?」

 男の向こうから声が聞こえたので、男を蹴り倒す。

 ふむ、数は大体15人程度か……。取りあえず挨拶しとこうかな。

 急に仲間が倒れたかと思えば背後から女が出て来たのもだから驚いたようだ。ざわざわしてる。


「どうも、皆さん初めまして~」

「て、てめぇなにもんだ!?どっから出てきた!」

 

 動揺する山賊たちの一人が指をさして喚く。

 

「冒険者です。ここのボスはどなたですか?」


 問いに対し、洞窟の中央で椅子に座っているおっさんが立ち上がった。


「俺がここのボスだ。お嬢ちゃん、何の用だ」


 以外にも冷静な態度をとるおっさん。成程、確かにボスっぽい雰囲気してるなぁ。


「つい先ほどお仲間に襲われましてね。その際この場所と誘拐について聞いたので、返り討ちついでに救出に参りました。黙って武器を置いて投降するならよし。抵抗してもかまいませんがお奨めはしかねますね」

「ほお、そりゃ勇敢なこったな。だが多勢に無勢すぎねぇか?この人数を一人で相手しようってのかい?」


 不敵な笑みを浮かべるボスに、こちらも笑みで返す。


「ええまあそうなりますね。それで、どうなさいます?抵抗してもかまいませんけど、何人か死ぬ事になると思いますが?」

「ふ……お前ら、やっちまえ! ただし、殺すなよ」

「うおおおおおっ!!」

「やっちまえ!!」


 はい、答え出ました。皆様命を捨てて抵抗されるんですね。分かりました。分かり切っている結果でした。


「皆様の考えはよく分かりました。では、行動に移らせてもらいます」


とは言ったものの特に何もしない。だって既に勝負はついているから。

 山賊達も突っ込んでくるものの、三歩動いてピタリと止まっている。


「何で、動けねぇっ……!?」

「それはですね。私の魔法であなた方の影を縛っているからです」


 闇魔法『影縛り(シャドウ・バインド)』

 私の魔力で生成した闇の短剣を対象の影に突き刺し、地面と影を縫い縛る魔法である。

 よく見れば、彼らの影にダガーの様なものが刺さっている。

 動けない彼らの手足を洞窟内にあったロープで縛り、一列に並べる。


「さてと、では皆さんにお聞きしますけど……これまでの行いを懺悔し、罪を償うと誓いますか?」

「なにわけわかんねぇ事言ってやがんだ! 放しやが」


スコォンッ


 音が鳴った。

 山賊Aの顎を、小気味のいい音が鳴る威力で殴る。

 殴られた山賊Aは、ぐるりと白目をむいて地に伏した。脳震盪を起こしたのだ。

 山賊Aが脳震盪で倒れ、まるで患者を呼ぶ看護婦の様な気軽さで「はいじゃあ次の人ー」と山賊Bへと移動する。


「さて、次の貴方はどうですか?」

「……分かったぜ。悔い改めるからこの縄を解いてくれ」

「分かっていただけて何よりです」


 ニコリと微笑み、ダガーで縄を斬る。


「へっバカが! 誰が懺悔なんざ「ですよね」」


 ズドンッ


 鈍い音と共に、山賊Bは蹲りゲロッた。きったねぇ。

 反省したと見せかけて逆に女を拘束する。山賊Bの目論みは強烈な蹴りで失敗に終わる。

 しかし、山賊達の考えは一致していた。攻撃されるなら、それをかわして反撃すればいいのだ。相手はたかが女一人。

 だが、そんな甘い考えはすぐに改めることとなる。


「さて…と、お頭さん。よくよく考えれば、貴方が降伏してくれれば万事解決なんですよね。てことで降伏してくれません?」

「はっ…一発ヤらせてくれんなら降伏してもいいかもなぁ。人質救う為なら安いもんだろう冒険者。なぁお前ら?」

 

 その挑発的なセリフにピシリと固まった。他の山賊達は下卑た笑い声を上げ、「そうだ!」「ヤらせてくれんなら降伏でも懺悔でもしてやんぜ!」と騒ぎだす。

 だが、男たちは気付かない。自分たちのその挑発と嘲笑が、怒りと言う名の導火線に着火してしまった事を。

 男たちは知らない。全世界で最も恐ろしいのは、ブチ切れた女であることを。


 ドゴォン!!


 大きな音が鳴った。先の二人とは比べ物にもならない程に大きな音だ。それと同時に山賊達の背後から風が吹く。

 笑っていた山賊達は「え?」と固まりながら機械の様に後ろを振り向き、その笑みを驚愕に変える。

 挑発した山賊頭は、顔面を血まみれにしながら白目を剥いて気絶していた。

 無表情のまま無言でツカツカと壁へ行き、白目を剥く山賊頭の胸ぐらをつかみ上げた。


「今なんて言った? ん? なんて言ったって聞いてんのよ。黙ってないで答えろや」


 白目をむいて気絶する山賊頭をぐいぐいと揺さぶりながら張り付けたような笑顔で問う。

 当然山賊頭から答えが返ってくるはずがない。


「降伏するから一発ヤらせろ? あはははっそっかそっか。あははははははっ!はははははははっ!」


 ドゴンッ


 鈍い音を立てて、山賊頭の顔面に拳を打ち込む。山賊頭が更にめり込み鮮血が飛び散る。

 

 ドゴンッドゴンッドゴンッ


「お、おい…やめろよ」


ドゴンッドゴンッ


「や、やめろって言ってん「あぁ?」ひいっ!」


 鳴り響く鈍音。そのたびにめり込んでいく山賊頭の身体。仲間達は茫然とその光景を眺めるしかなかった。

 10回に及ぶ暴行に、壁が音を立てて崩れる。立ち込める土煙から、ものすごい勢いで飛び出す人影。山賊頭だった。

 地面をワンバウンドし、再び空中に投げだされる。土煙から飛び出て投げ出された山賊頭に一閃。

 山賊頭の上半身と下半身が離れ、血飛沫が舞う。


「……複数人の尋問に、一番効果的な方法って何かわかる?」


 抜いた刀を納めると、振り返ることなく山賊たちに問いかける。

 しかし、今だ茫然としている山賊達は答えない。


「それは……痛みと恐怖だよ。この尋問において重要なのは、アンタらに恐怖を刻み込む事。アンタらが私を舐めてんのはよぉく知ってるよ。そうだよ、私は極力殺しはしない。救いようのないゴミだったり快楽殺人者だとしてもね。罵声浴びせられても耐えるよ、改心してくれるんなら。けどさぁ……限度ってもんがあると思わない? ピュアホワイトな18歳に向かって一発ヤらせろとか言われたらもぉね、殺したくもなるよ。全員突き出すつもりだったけどもぉいいや。死人の一人や二人出ても。で、その上で聞くけど…まだ一発したい人いる?」


 


 残りの山賊達に問いかける。

 聞くまでもなく答えはNOだ。ヘタなことをすれば命はない。あんな死に方をするくらいなら牢屋にぶち込まれた方がマシだ。

 後は問いかけにYESと答えれば、誰一人死なずに済むのだ


「だよね。誰でも命は惜しいよね。じゃ、再開しようか」


 結局。その後反抗するものは現れなかった。まあ当然か、反抗したら死ぬしな。

 その中から適当な奴を選んで牢屋まで案内させた。牢屋は逃亡された時の為か少々複雑だった。


「ここが牢屋だ」


「はいごくろうさま。『影縛り(シャドウ・バインド)』。ちょっとの間そこで待ってな」

「あ、ああ。けど、牢屋の鍵が…」

「いらないよ、ブッ壊すから。『爆発エクスプロージョン』」


 威力を抑えた『爆発』で鍵穴をブッ壊して扉を開ける。 

 少々薄暗いので、『光珠』で辺りを照らす。

 囚われていたのは五名。身体を震わせながら脅えた眼でこちらを見る女性達。とりあえず安心させようと「大丈夫ですよ」と言いかけて、思わず目を見開いた。

 五人のうち一人だけ、他の四人とは違っていたからだ。所々黒髪が混じっているが美幼女と言っても過言ではないであろう整った顔立ち、そして長い耳を持つ、俗に言うエルフという種の少女がいるのだ。


「怖がらなくても大丈夫ですよ。私は貴方達を助けに来た冒険者です。あんなカス共に攫われて怖かったでしょう。私が来たからにはもう安心ですよ」


 慰めの言葉に人間の女性達は歓喜の涙を流し抱き合い、美幼女エルフは抱きついてきてわんわん泣いた。

 私は美幼女エルフの頭を撫でながら表情筋が別の意味で緩むのを必死に抑えながら心で呟いた。


 ああ、夢にまで見たエルフ…しかも幼女。異世界最っ高。

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