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そんじょそこらにいない普通の人  作者: 城日ひろし
第1章

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19/71

1-13 粗忽者の調査Ⅰ

田中調査事務所は、田中清二(たなかせいじ)が所長を務める、個人経営の小さな事務所。

迷子のペット探しから企業の裏取りまで──

調査と名がつけば何でも受けるその姿勢から、業界内では『調査の何でも屋』と呼ばれている。


所長の清二は読み込んでいた、依頼書から顔をあげる。


「裕志、いつまでここで働くつもりだ」

「そうっすね、何も考えてないです。ここ居心地がいいんで」

「お前、兄貴に似て優秀だったじゃないか、一体何があって……」

「いろいろあって……まあ、詳しくは聞かないでください。俺も、うまく説明できないんで」


「……そうか」


しばしの沈黙の後、清二は表情をあらためて、再び口を開いた。


「裕志、藤嶺学園(とうれいがくえん)に行ってSについて調べて来い」


調査内容は学園内に入り、Sについて調査すること—―ただそれだけ。

紙の端は、ホチキス留めされ、依頼書とゴシップ誌が一束にされている。


「Sって……何です? 人ですか? 事件ですか?」

「知らん。変な動きがないか見てこい。何かあったら全部報告しろ」


清二は口頭で一言、指示するだけだった。

裕志は首をかしげながら、バッグを肩にかける。


「わかりました。じゃ、行ってきます」

「おう! 気をつけろよ」


裕志が事務所を出ていく。

清二はその背中を見送りながら、つぶやく。


「まあ、今回も“何もありませんでした”って落ちなんだろうがな」


清二はそう言って椅子にもたれた。


「調査期間は三日間、できる範囲で調査をするしかないよな」


誰も本気にしない話を、誰かが本気で気にしている。

噂話の裏取り。

そんな依頼を、清二は過去いくつか経験してきた。

「調査の何でも屋」の面目躍如だった。


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