痛覚
嘔吐下痢から解放されたのは予想よりもずっと早く、我が家でもペイちゃんも三日後には通常通りとなっていました。
歩さんも自信満々だけあって、その時はなぜかあの菌だらけの環境にいたにもかかわらず、かかることはありませんでした。
お互いに労をねぎらうように、歩さんの家でお昼ご飯を食べることとなりました。
その時、歩さんの定番のチャーハンを作っていたのですが、チャーハンと聞いてから私は自分のその時にマイブームとなっていた激辛のトムヤムクンのインスタントラーメンを持っていくことにしたのです。
そのインスタントラーメンは、それなりに辛いのが得意な歩さんにも食べさせてあげたくて持って行ったのですが、そういった香辛料の強いものは苦手だというので、渋々台所を借りて一人分だけを作り、食べることにしたのです。
子供達は先にチャーハンを食べていました。歩さんはペイちゃんにスプーンを使って食べさせていました。
そして、私がラーメンを食べ出すと、急にペイちゃんが無理矢理ロックからぬけ出ようとしたのです。もちろん、歩さんはダメだよ!と言い、静止しようとしていましたが、本当に力技で無理矢理抜けようと暴れたのです。
歩さんの制止を振りほどこうと暴れた結果、お食事椅子の付属のテーブルの高さ約40センチから頭から落下したのです。
「あ!!!!」
と全員がペイちゃんに注目していました。間違いなく痛すぎる!と思った瞬間にペイちゃんは泣くこともなく、そのままテーブルに手をかけ立ち上がり、ものすごい速度で私に向かって歩き出しました。
みんなが動揺している中、次にペイちゃんは急ぎすぎたのもあって、テーブルの角に足の小指を強打し、思いっきり転倒したのです。
あまりの一瞬の出来事にその場にいた全員が驚きました。しかし、ペイちゃんはすぐさま立ち上がり、私の元へ来てラーメンを手づかみしようとしたのです。
「ダメだよ!」
とラーメンに手が届かないように頭よりずっと上に持ち上げました。
そこで歩さんが
「ペイ!今の絶対痛いでしょ!?足を見せてごらん!!」
と嫌がるペイちゃんを捕まえて足を確認しました。
すると、真っ赤になり、気持ち腫れてるのでは?というほどだったのです。
もちろん、最初に強打したであろう頭の頭頂部も髪をかき分けてみると赤いのです。
絶対に痛い、子供達でさえも理解していました。子供達は
「ペイちゃん、泣かないなんてえらいね!強いね!」
と言いました。
しかし、捕まえられたことが気に入らないのか、ものすごく暴れて泣き叫びました。歩さんがふと離すとペイちゃんはまたもや一目散に私のところへ来ました。
痛くないの!?と本気で私も心配しました。しかし、お目当てはあくまでも私のラーメンだったのです。




