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唐揚げ事件

12月に入り、ペイちゃんが満11ヶ月と数日を迎えた頃のことでした。

ペイちゃんは相変わらず食べる事に執念を燃やしていました。その日、私の旦那も歩さんの旦那さんもたまたま仕事で夜間にいなかったため、一緒に晩御飯を食べようという話が出ました。


私もおかずを2品ほど作り、歩さんの家に子供たちと向かいました。

その頃、歩さんはみんなで囲む夕飯が楽しみで気合を入れて唐揚げを揚げたりしていました。


しかし、絶対にいるはずの歩さんがピンポーン!ピンポーン!と鳴らしても出てこないのです。そして、甲高いペイちゃんの泣き声が響いているのです。どうしたのだろう?と車に戻り、歩さんの家の鍵のスペアキーを持ってきて家の鍵を開けました。


家に入ると、唖然としました。

ペイちゃんはベビーゲート越しの台所側に入れられ、大泣きをしていて、歩さんはため息をついて何かを懸命に拾っていたのです。


「あ、mckeeごめん。ちょっと大変で。」

と力なく言っていました。

その日はもうお風呂も終え、コンタクトも外していた状態で眼鏡も車にあったため、近づいてよくよく目を凝らすと、部屋中に唐揚げが散乱していたのです。


「えっ!?どうしたの?!」

とさすがに驚いて聞くと、

「ペイがひっくり返したの!!!もぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

とものすごい怒りに満ちた感じでした。

ペイちゃんをよく見ると、おでこなどが赤くなり、叩かれたのだろう、と予測できました。

私は黙って子供たちにも唐揚げを拾うように言いました。


打ち付けられたのだろう、という感じで壁やテレビの至るところに油の型が残っていて、床には無残にも衣が剥がれたり、剥がれかけたりした唐揚げが散乱していました。


子供たちはかわるがわる、触る度に

「あっつ!!あつい!!!」

というほど揚げたての唐揚げばかりでした。


あまりにも怒りに満ちている歩さんをみて、

「そのまま皿に戻して。食べれるから!!」

と言いました。子供たちも拾いながらつまみ食いをし、

「ゴミついてるのはとればいいもんねー。」

と言っていました。それを聞いて、少し怒りが冷めてきたのか、歩さんが

「ごめんね。約束の時間だったから、ペイをお食事椅子にガチガチにロックして、テーブルに唐揚げをのせて、皿を取りにいったの。そしたら、椅子から無理矢理ぬけて皿の端を掴んでてさ。怒ったのよ。したら、皿ごとペイ落下。で、この始末。」


ん??ちょっと情景が浮かばなかったので、詳しく位置関係などをもう一度説明してもらうと、テーブルがある地点をaとすると、食器棚はc地点。間にb地点のペイちゃんのいたお食事椅子。


aからcに行くのに、多くみて約2メートル。その間にペイちゃんのb地点。私は歩さんに


「え!?どう考えたって届かないじゃん!!」

と言いました。


「でしょ!?しかもこのお食事椅子だよ!?」

と歩さんは言いました。


このお食事椅子というのは、通常のロックからは抜け出してしまうペイちゃん特製のロックだったのです。それは、通常のロックに加えて、どうしても動かしたくない時に作動させるもので、筋トレや柔軟体操などに使うようなゴムバンドを結構しっかり巻くのです。


私は絶句でした。テーブルの上にご飯を運んでくるタイミングで何度も何度も皿をひっくり返され、歩さんが怒り状態になるのを少しでも改善してあげたい一心で、そのゴムバンドシステムを開発したのは私だったのです。

「えっ!?嘘でしょ!?このゴムバンド抜けたってこと?!」

歩さんは無言でうん!と深く頷きました。


そして、

「正確には半分だけ抜けたわけ。半身だけ抜けて、めいいっぱい伸びに伸びて、皿の端をつかんだのよ。その時に私が気づいて、こら!!ペイ!!って大声あげたの。そしたら、ペイが何が何でもって感じで皿を一気に持ち上げようとしたの。しかも指三本で!そしたら、この有様よ!皿を持ち上げた瞬間にペイはバランス崩して椅子と一緒に転んで、一瞬泣いたかと思ったら、周りにある唐揚げみて、一気に食べ出して、もう腹が立って腹が立って!!!!」


もうぺいちゃんの食べたい欲求に関心するばかりでした。

ちょっと試しにサイズは違えど、ペイちゃんの2個学年の上の私の子供を座らせ、抜けたら大好物をあげる。と言いました。


結果、必死に抜け出しました。

しかし、結構な時間を費やしたのです。


もう一度歩さんに確認しました。

「ねぇ、本当に食器棚にいっただけなんだよね?」

歩さんは、

「そうだよ!目を離せないのはわかってるから、急いで皿とって振り返ったらそれだったんだよ!!」

と、まだ少し怒りが収まらない様子でした。

しかし、もう一つ気になることがありました。指三本で…。

「あのさ、唐揚げは500gではないよね?結構な量だよね?」

歩さんは

「そうだよ!!!!本当に!!!1キロ揚げたの!!しかも皿はこれ!!」

と持っていた皿を私に渡してきたのです。

その皿は中々重量感のある皿で、ペイちゃんの顔のサイズなんか軽く超えているものでした。これに1キロの唐揚げを三本指で!?本当に驚きました。


しかし、驚いてばかりではなく、これから先はロックは通用しないと心得て、行動しなければならないよね、とどんな対策がいいかを話し合いながらご飯を食べたのです。



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