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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国

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エピローグ

 将軍主催の宴。


 それは本来、古式ゆかしい礼法に従い、厳粛な雰囲気の中で行われるものである。前世と同じ幕府が存在していたら、間違いなく、そういうものであっただろう。


 だがこの世界で東の国を治めるのは、緒方信政――将軍オガタ。

 まさにIfの織田信長みたいなオガタは、世界に目を向け、行動力もある。そして圧倒的なカリスマ性を持つ存在だった。


「今宵の宴は実に楽しかった。それもこれもセルジュ王太子殿、アマレット殿のおかげだ。よくぞ東の国に来てくれた! お二人とルミナリア王国との未来を思うと、気持ちが実に高揚する!」


 大喜びの将軍オガタはこんな提案をする。


「ここから馬で西に二週間ほど行くと、古都がある。そこには鮎川という古都のど真ん中を流れる川があってな。度々洪水を起こしたが、治水工事が進み、堤防や河原が設けられた。するとその河原で人形芝居が行われるようになり、歌舞伎の興行が始まり……。そうなると茶屋が並び始めた。そして今ぐらいの季節になると、川に床机を並べ、畳を敷き、川魚料理と旨い酒を出し始める。……どうだ、行ってみたくはないか、セルジュ王太子殿、アマレット殿?」


 それはまさに前世にも存在した川床文化! 納涼床とも言われ、鱧料理や鮎料理に舌鼓を打ちながら、涼しい景色を愛でる。


(興味はあるけれど、前世では体験したことがない。行ってみたい! でも将軍オガタはきっと、古都にはセルジュの魔術で行ってみたいと思っているのだわ。いきなりルミナリア王国へ行く前に、セルジュの力を体験したいのよね)


 その意図を含めた提案だと思うと、通訳しながらセルジュへ伝えると……。


「川の上にわざわざ食事をする場所を作るなんて! 東の国の人は独特の感性をお持ちですね。そしてアマレットはその川床文化にとても興味があるのでは?」


 セルジュは私の表情の変化を見逃さない。私の「行ってみたい!」はわかりやすく顔に出て、セルジュはそれに気づいていた。


「オガタ将軍に魔術を体験してもらういい機会でもあります。何より、わたしはアマレットの笑顔を見たい。行きましょうと返事をしていいですよ、アマレット」


 これにはもう、自然と頬が緩む。


(セルジュは本当に優しい!)


 彼に抱きつきたい衝動を抑え、その言葉を将軍オガタに伝えると……。


「まさに明後日より、古都では祭が始まる。川床に座り、神輿や山車を眺めることができるぞ!」


 将軍オガタは料理と祭の両方を楽しめる実に素敵なプランを提案してくれる。そして私たちはお忍び姿の将軍オガタと共に、セルジュの魔術で古都へ向かい、川床料理と祭を存分に楽しんだ。さらに別の日には、黎明大神宮という神社に案内され、そこでは広大な広さの神社を見学し、黒うどんや参拝餅などを味わうことに。どちらもセルジュの魔術により、日帰りで行くことが出来たので実現した観光だった。


(前世でどれだけテクノロジーが発展したとしても、この移動&観光は難しいと思うわ!)


 そんなこんなで東の国の滞在は、前半は留学や清酒造りの件で緊張したが、後半は観光を存分に満喫できた。


「そろそろ帰国して、今回の成果を父上に報告しないとですね。留学や酒蔵で修行する人を調整する必要もあります。名残り惜しいですが、アマレット、大丈夫ですか?」

「はい! 東の国、まだまだ見所はあると思います。でもまた来ることができますよね?」

「いつでも来ることができますよ。もう二度目なんです。三度目、四度目……もう二十度目だわ!にすぐなりますよ」


 セルジュは冗談めかしてそう言うが、彼の魔術があれば、東の国は遥か極東の島国ではなく、身近な友好国。いざとなればすぐに行き来ができる。


 それを踏まえ、将軍オガタに帰国を伝えると――。


「そうか。帰国するのか……。残念であるが、セルジュ王太子殿の魔法はよく理解した。引き戸を開けたらそこに別世界が広がっている。そんな感じでいつでも二人とはお会いできるとわかった。寂しくも感じるが、必ずまた会える。我もルミナリア王国へ参るからな!」


 こうして将軍オガタとは再会の約束をして、伝令を使った定期的な連絡のやりとりも決まった。


(セルジュではなくても、魔族なら、船旅より早く、東の国に行ける。文や書簡のやりとりも問題ないわ!)


 それは将軍オガタも理解し、ヒラタや顔見知りとなった小姓と共に、笑顔で見送ってくれた。


「またお会いしましょうぞ、セルジュ王太子殿、アマレット殿!」

「はい! また会いましょう!」


 固い握手をして、将軍オガタと別れ、東の国を出発する。


 行きと同じで一旦船出して、大陸の最も東寄りの港を目指し、そこからセルジュの魔術で一気にルミナリア王国へ帰国することになった。


 おみくじでは『しばし時を静かに待て』だった。でも焦らず、流れに身を任せたら、将軍オガタにもいい感じで留学の件を話せた。さらに清酒造りの件も光明を見出すことができたのだ。


 セルジュとのことも、そう。心だけではなく、身も結ばれたいと願った。でも何か行動を起こすことなく、自然体でいたら、願う方向で彼が動いてくれた。


 ……まさかの飲み過ぎて寝落ちをしてしまったけれど、セルジュはバカンスシーズンで特別な時間を過ごそうと提案してくれたのだ!


(どこに行こうかしら? 前世のハワイみたいな南の島は存在している? あ、砂漠もいいわよね。大自然系もいいけれど、遺跡を見に行くのも……迷うわ!)


 もうこの先のことを考えると、笑顔しか浮かばない!


(凶を引いたら悪いことが起きると思ってしまったけど、そんなことはなかったのね……!)


「アマレットお嬢様、イソベ焼きの用意ができましたよ!」


 スティの声に、甲板でエリーと共に海を眺めていた私は船内に戻ることになる。


(ついにいただけるわ、磯辺焼きのお餅!)


 何気にずっと食べたかった食べ物の一つ。今回、網焼きと七輪も竹炭も手に入れたから、船上で焼くことができたのだ!


「アマレット、船長との打ち合わせは終わりました。船に問題なく、航海は順調です。そして何やら美味しい昼ご飯が待っていそうですね」

「そうなのよ、セルジュ! シンプルだけど、とっても美味しいの。ずっと食べたかったものよ」

「そうなのですね。アマレットがそう言うなら、間違いない。では船内へ戻りましょう」


 魔族には見えない、大天使みたいなセルジュが私の手をとり、エスコートして歩き出す。


 転生し、乙女ゲームの悪役令嬢で、一度はとんでもなくドアマット状態になり、魔族への生贄となりましたが……。


 今は優しい魔族の皆さまと共に、とっても幸せな日々を送っています!


お読みいただき、ありがとうございます~!

昨日は公開し忘れてしまい申し訳ないです。

ごめんなさい!

東の国、まだ書きたいことがあるので書き上げたら公開します!

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