そのお値段は……
宮殿での舞踏会。
そこにはヴィクターがエスコートしてくれることになっていた。
この日の私のドレスは、アイリス色を軸に、濃淡グラデーションの五色のチュールが、スカート部分に重ねられている。色の濃淡で奥行きができ、立体的にふわっとスカート部分が、広がっているように見えた。さらに目を引くのは、ウエストと裾にあしらわれたカットワークレース。オーナメント柄が見事に表現され、素晴らしい手仕事に感動させられる。
身頃には、大小さまざまなビジューが飾られていた。シャンデリアの光を受け、ビジューがキラキラと煌めいている。これはまさにレフ版効果! まるで顔の辺りを、輝かせてくれるように感じた。
このドレスは王都へ来てすぐにオーダーメイドしたもの。男爵領に私の持ち物なんてないに等しかったので、すべて王都へついてから調達していた。
ドレスを着た後、身に着けたネックレス、イヤリングは、兄からの贈り物。私が大切にしていた、あのペンダントに使われていた、ヴィオレータというウィンザーフィールド帝国ならではの宝石だ。その宝石がふんだんに使われたネックレスとイヤリングは実に美しいし、その値段は……想像すると、身につけるのが怖くなりそうなので、値段を聞くのは止めた。
ちなみに髪はアップにして、ドレスと同じアイリス色の髪飾りでまとめている。
この世界に転生し、令嬢らしき完璧なイブニングドレス姿にこの日、初めてなることができた。
準備が整った私の部屋に、ヴィクターがエスコートのために、やってきてくれた。現在、国賓としてこの国に滞在する兄と私は、宮殿の客間を使わせてもらっていたのだ。
「皇女様、こんばんは。舞踏会へ……まい……り……ま……しょう」
侍女が扉を開け、室内に入って来たヴィクターの碧い瞳が、とろけそうな甘さで輝く。
な、なんて、心をとかすような表情を……!
まさに相好を崩し、全身で喜びのオーラをふりまくヴィクターに、腰が抜けそうになっている。
「皇女様、そのドレス、とてもお似合いです。わたしの想像をはるかに凌駕する美しさ。完璧です。ずっと、夢見ていたのですよ。皇女様が、ご自身にぴったりの素敵なイブニングドレスを着て、微笑む姿を!」
とにかく身一つで王都へやってきて、ドレスはサイズがあいそうなものを提供してもらい、着ている状態だった。どうしても体のどこかがもたついたり、デザインや色が自分に合わないものだったりで、いまいちドレス姿はきまっていなかったと思う。よってヴィクターが今のように言うのは当然だった。
「ただ、わたしはどんなドレスであろうと、皇女様を愛していますので、構いませんでしたけどね。それでもそのドレスは、皇女様の魅力をさらに引き立てますので、とても素晴らしいと思います」
……!
い、今、ストレートに「愛しています」って言ったわよね? 言ったよね? 言っていたよね!?
ゲーム画面では聞き慣れて、見慣れている甘い言葉でも、リアルで言われると、その破壊力たるや半端ないわ。もしヴィクターが本気で動いたら、ヒロインは完落ちしていたわよ、きっと。
そうか。
ヒロインに全力投球できなかったヴィクターは、きっと不完全燃焼なのだわ。無駄に有り余る情熱が今、私へ向かっているのね……。
全身が熱い。
深呼吸をして、クールダウンしないと!























































