13:実に悩ましい問題
初めて飲んだビール、将軍オガタは「ほう! 確かにほろ苦い!」と目を丸くする。ヒラタは「これぞ人生の酸いも甘いも知る大人のお酒ですな」と気に入った様子で、お代わりもビール! 将軍オガタはビールを三杯飲むと、葡萄酒へシフトする。その間に到着したカプレーゼも綺麗に平らげた。
「はい、お待ちどう! 当店名物、揚げ立てのモッツァレラチーズのフリット! これはこのトマトソースで食べるのが王道。そしてこのバジルの葉を一枚のせ、トマトソースをつければ……揚げたカプレーゼが楽しめる。シンプルに岩塩をパラパラでパクリもいけるぞ。あとは女性に人気なのは蜂蜜! チーズに蜂蜜が合うのか!? これ合うんだな。さあ、全部試してみるといい!」
ご機嫌な店主に聞いた説明は身振り手振りで伝えると、将軍オガタは「揚げカプレーゼ……」と呟き、バジルをとり、トマトソースに手を伸ばす。トシとリキは蜂蜜を、ヒラタは渋く岩塩、私やグラマラス美女三姉妹はトマトソースでいただくことにした。
「「上様、美味でございます」」
トシとリキが声を揃え、「異国の食べ物は美味しい!」と瞳を輝かせる。一方の将軍オガタは二人の小姓に「それはよかった」と頷いてみせ、自身は……。
「揚げたモッツァレラチーズは絶品じゃ!」と膝を打つ。
さらにそこへモッツァレラチーズの王道な楽しみ方、マルゲリータピザが登場。
「これは……薄焼きのパンにカプレーゼをのせてさらに焼いた……のであるか?」
「まさにその通りです。トマトソースを生地に塗り、モッツァレラチーズをのせて焼いた後、バジルをのせました。食べる際に、こちらのオリーブオイルをたらしても、風味が増し増す!」
「オリーブオイル! これは実に美味である。我は東の国の味噌汁に、これを一滴垂らして食している。これを入れると味噌汁の風味が際立ち、こくもでるのだ」
さりげない将軍オガタの言葉にビックリ! だって前世の記憶で確か味噌汁にオリーブオイルを入れるのは健康にいいと言っていたはずなのだ。
(確か味噌汁に含まれる脂溶性ビタミンの吸収をオリーブオイルが助ける。さらにオリーブオイル自身、抗酸化作用もあると言われていたと思う)
将軍オガタはオリーブオイルの効能なんて知らないはずなのに。自身の本能で「これでいい!」と感じ、日々の食事に取り入れたのだろう。
(さすがだわ、将軍オガタ!)
私が感動している間に将軍オガタたち東の国の人々は、マルゲリータのピザを口に運び……。
「上様、これは……!」
ヒラタが感動で声を震わせている。
「これは……何という旨さ! トマトの酸味とモッツァレラチーズのまろやかさ、バジルのアクセントが、ふりかけたオリーブオイルで見事にまとめられている気がする。しかもパンのカリッと焦げた部分も実にいい!」
将軍オガタは完璧にこのマルゲリータの美味しさを口にしてくれる。まさにその通りで、最後にふりかけたオリーブオイルがいい仕事をしてくれていると思うのだ!
(そこにちゃんと気づける将軍オガタはすごいと思うわ!)
私は我がことのように誇らしくなり、小姓のトシとリキも……。
「「上様の言う通りです! こんな食べ物初めてで、感動です!」」
二人が声を揃えたところで、メディが真剣な表情で口を開く。
「皆様。この後、でございますが、マルゲリータのピザをおかわりすることも可能です。ですが、こちらのお店でも居酒屋ではありますが、デザートのメニューも充実しています。ダークチェリーのタルト、レモンのソルベ、季節のフルーツのズッコット、たっぷりクリームのマリトッツォなども……いただけるそうです!」
私はほぼ同時通訳でメディの言葉を訳し、将軍オガタを見る。
「ほう……それは実に難題だ。このマルゲリータのピザは絶品であり、おかわり必死に思えてしまう。だがそうすればデザートは入らぬ!」
将軍オガタがまるで軍議をしているような真剣な表情をするので、私の背筋は伸びる。
「ピザなのか、デザートなのか。実に悩ましい問題、であるな」
「上様」
「なんだ、ヒラタ」
「この場は様々な味を知ることが肝要に思えます。ピザの味が美味しいことはわかりました。ダークチェリーのタルト、レモンのソルベ、季節のフルーツのズッコット、たっぷりクリームのマリトッツォなどは未知の味でございます。いずれかを食し、味を知ることが重要では?」
ヒラタの指摘に将軍オガタは「確かに! ピザばかり食っていたでは、東の国に残る家臣たちも『そうですか……』と物足りないだろう。よし。この後はデザートをいただこうぞ!」と決断する。
その後、デザートは全種類がテーブルに並び、皆で少しずつをシェアすることになった。
「……満腹になったぞ、アマレット殿」
「よかったです! 午後はお店を見て回りますか? 東の国いる家臣や奥方へのお土産を見てはいかがでしょうか」
「良き提案である。そうしようか」
こうしてお店を出た時のこと。
見たことのある人物が、ガラの悪そうな男たちと一緒にいる。
銀髪の短髪に白金色の瞳。鼻の辺りのそばかすはチャームポイント。まだ幼さが残り、少年にも見えるのは――リオニール公爵に買収されている農夫の一人アントンだった。
















