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怪奇解決株式会社  作者: カエル
二章
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20/82

三本

 宿に警察が到着したのは、それからしばらくしてのことだった。

 警察の話では、被害者は今朝、森で死んでいるの発見された。警察の聞き込みの結果、被害者がこの宿にいたという目撃情報が上がった。さらに女将が僕と被害者が部屋で何か話していたのを見たと電話で警察に話していたため、僕の元にやってきたのだという。

 警察官は手帳を広げ、威圧的に質問してきた。

 

「被害者と貴方との関係は?」

「化け猫退治を依頼されていました」

 しまった。知っている人間が死んだと聞かされて動揺し、つい正直に答えてしまった。警察官が疑わしい目で僕を見る。

 仕方がないので、会社の名刺を見せた。警察官は名刺を見ると、途端に険しい顔になった。そしてパトカーに戻り、無線でどこかに連絡をする。

 数分後、警察は僕に丁寧に名刺を返す。顔は笑っていたが、なんだか「面倒臭いことになった」という感じに引きつっていた。

 それからなぜか、警察の態度は急に軟化した。

「午前三時頃、どこで何をしていましたか?」

 言葉使いもどこか柔らかい。いったい、うちの会社は警察とどんな関係なのだろう?

 僕は被害者と別れた後、ずっと宿にいたことを説明し、宿の女将もそれを証明してくれた。それを聞いた警察は「分かりました」と言うと、帰ろうとした。慌てて引き止め、事件について詳しく聞いた。

 警察は笑顔で事件について説明すると、あっさり帰って行った。


 被害者の三橋さんが遺体で発見された森は、滅多に人が入らないそうだ。だが、珍しい野鳥がいるという噂を聞きつけた村の外の人間が、朝早くから野鳥を探しに森に入り、遺体を発見したのだという。


 三橋さんの死因は出血多量によるショック死。背中には三本の大きな傷があり、これが致命傷となった。


 知っている人間が殺されるのは、これで二度目だ。

 僕は部屋にあった机を蹴とばした。もし、もっと注意を促していれば、もし、三橋さんを家まで送っていたら、結果は違っていたかもしれない。

 何もできない自分に腹が立つ。


『それで、お前はどうしたい?』

「このまま、調査を続行したいです」

 三橋さんが亡くなったことと、野上さんが行方不明になってしまったことは、ちゃんと社長に報告する必要がある。そして、これからのこともちゃんと話す必要がある。

『依頼者は死んでしまったんだろ?では、これ以上の調査は無意味だ』

「それでも、やりたいんです」

 たとえ依頼者がもういないとしても、せめてこの事件を解決して、安心して眠らせてやりたい。

 社長はしばらく黙っていたが、決定的なことを口にした。


『もし、事件が解決したとする。で、その成功報酬は誰が払うんだ?私は一円にもならん仕事をさせるつもりはない』

「それは……」

 依頼者がいなくては報酬を払う人間がいない。強欲なこの人が、死者に対する情などで動くことはないと思っていた。どうするかは、もう考えてある。

「僕が払います」

『お前が?』

 社長の声は鋭い。

「はい、今回の入るはずだった収入分を僕の給料から引いてください」

 社長は鼻で笑う。

『今回の報酬はお前が二十年働いて、やっと釣り合うぐらいの金額だぞ』

「では、二十年分減額で構いません」

『二十年もお前がうちの会社にいる保証はない』

 もっともだ。怪我、もしくは死んでしまい働けなくなる可能性は十分にある。

「でしたら、何か別の物で支払います」

『他の物ね……』

 電話の向こう側で社長がニヤリと嫌な笑みをした気配がした。


『では担保として、仕事が終わったら、お前の内臓を一部貰う。安心しろ。無くなっても死なないように綺麗に取ってやるし、払い終えたらちゃんと返してやる』


 嫌な汗が首筋に流れた。

『それでいいな?』

「……はい、構いません!」

 此処で引いてはダメだ。あくまで強気で行く。

『分かった。では、好きにしろ』

「はい」

 相手に見えるわけではないが、僕は深く頷いた。

『それと野上のことだが、いずれ帰ってくる。気にするな』

 そう言い残すと電話はガチャリと切れた。


 部屋の戸を開けると野上さんがいた。

「野上さん!」

 また驚いてしまったが、ほっとした。本気で心配してたのだ。

「いったい、今までどこにいたんですか?」

 彼女の両肩を掴み、問いただす。

「は……な……し」

 「離して」と言ったのだろうか?はっとなり、彼女の両肩から手を離す。

「すみません」

 反射的に謝ってしまう。しかし、彼女はまだ言葉を続けた。

「て……た」

 どうやら僕の勘違いだったらしい。彼女は「離して」と言ったのではなく、「話してた」と言っていたのだ。

「話してた?誰とですか?」

 聞いてみたが、野上さんは首を少し曲げただけで、動かなくなってしまった。意味が通じていないのだろうか?

 僕は、少し考える。そして、あることに思い至った。


「野上さん、何と(、、)話してたんですか?」


 野上さんは曲げていた首を元の位置に戻し、答えた。

「ね……こ」

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