Chapter1-1 俺だけバイオ?
俺だけバイオ ~剣と魔法の異世界で、俺だけサバイバルホラー~
作者:阿波根サキ
――さっきまで、授業中だった。
次の瞬間、黒瀬玲央は見知らぬ白い空間に立っていた。
前も、後ろも、右も左も白一色。壁も天井も出口もない。
足元には硬い感触がある。だが、床と呼べる境界線すら見えなかった。
どこまで続いているのか。それすら分からない。
「なに、ここ……」
「おい、どうなってんだよ!」
「先生は!?」
「スマホ繋がらない!」
玲央は周囲を見回した。
見覚えのある顔ばかりだった。同じクラスの生徒たちだ。だが、教師はいない。
ほんの少し前まで、玲央は六時限目の授業を受けていたはずだった。教師が黒板に数式を書き、窓の外から運動部の掛け声が聞こえていた。頬杖をついて、退屈な授業を眺めていた。
そこまでは覚えている。
だが、その次がない。
瞬きをした。それだけで、世界が変わっていた。
時間が抜け落ちている。
その事実に気づいた瞬間、玲央の背中を冷たいものが走った。
「夢……じゃないよな?」
「誰か説明してよ!」
泣き出しそうな女子がいる。恐怖を紛らわせるように、白い空間を歩き回る男子もいた。だが、どれだけ進んでも景色は変わらない。
「……戻れない?」
誰かが呟いた。逃げ道がない。
玲央は騒ぎに加わらず、自分の身体を確認した。
制服。怪我はない。
ポケットにはスマートフォン。画面はつき、時刻も表示されている。だが、画面上部の電波表示は圏外を示していた。
画面に表示された時刻だけが、ここが現実の続きであることを無機質に示している。
玲央は顔を上げた。
教師はいない。いるのは生徒だけ。それも、自分のクラスの人間しかいないようだった。
――他のクラスはどうなっている?
別のクラスには、玲央にも親友と呼べる男が一人いる。あいつは無事だろうか。
そう考えたときだった。
『――確認完了』
声が響いた。
「……っ!」
誰かが息を呑む。
男とも女ともつかない声だった。大きくはないのに、耳元で囁かれたように鮮明だ。
白い空間そのものが声を発している。そんな錯覚さえ覚える。
「誰だ!?」
一人の男子が叫ぶ。返事はない。
『対象の転送準備を開始する』
「転送?」
「何言ってんだ?」
ざわめきが広がる。誰かが後ずさり、誰かが隣の生徒の腕を掴んだ。
声は反応を無視して続けた。
『お前たち子供を、これより異界へ送る』
一瞬、誰も言葉の意味を理解できなかった。
異界。現実ではない場所。帰還できる保証もない場所。
その意味が届いた瞬間、張り詰めていた空気が弾けた。
「はあ!?」
「異界って何!?」
「ふざけんなよ!」
「家に帰して!」
怒鳴り声、悲鳴、泣き声が重なる。誰かが声の主を探すように周囲を見回した。だが、どこにも姿はない。
『各個体には、最も相性の良いゲームを基準とした能力を付与した』
玲央の眉が動いた。
ゲーム?
この状況には、あまりにも場違いな言葉だった。
『生存せよ』
たった一言。説明も、励ましもない。
生き残れ。
つまり、死ぬ可能性がある。玲央は無意識に拳を握った。
『まもなく転移を開始する。それまでに自身のステータスを確認せよ』
「ちょ、待てよ!」
誰かが叫んだ直後、玲央の目の前で光が集まった。
白い空間の中で、そこだけが異様に濃く輝く。反射的に半歩下がる。
宙に、半透明の板が浮かんでいた。
表面には文字が並び、淡い光が規則正しく明滅している。
「うわっ!」
「俺の前にも出た!」
「ステータスって……これか?」
次々と同じ板が現れる。
恐る恐る触れる者。何度も手を突き抜けさせる者。画面に食い入るように見つめる者。
そして――。
「おい! 俺、《剣士》だって!」
「レベルもある! スキルも……剣術って書いてある!」
「私、《魔法使い》!」
「え!? 魔法使えるの!?」
「待って、俺《聖騎士》なんだけど!」
恐怖に押し潰されかけていた空気が、別の熱に塗り替えられていく。
「ジョブチェンジってあるぞ!」
「マジ!?」
「レベル上げたら上級職になれるっぽい!」
「やっば!」
ゲームに詳しくない者も、周囲から説明を受けるうちに表情を明るくしていった。
異世界。レベル。魔法。スキル。
つい数分前まで空想だった言葉が、現実になっている。それは恐怖を忘れるには十分すぎるほど魅力的だった。
「やったー! 異世界転移だ!」
とうとう、そんな声まで上がった。
玲央は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。
順応が早い。いや、違う。順応したのではなく、そう思い込もうとしているだけだ。誰も異界がどんな場所なのか知らない。何が待っているのかも、帰れるのかも。
それでも、与えられた力にすがっている。
「みんな、ちょっといいか!」
よく通る声が響いた。ざわめきが収まっていく。
声を上げた男子へ、自然と視線が集まった。
天城翔馬。
生徒会長だ。整った顔立ちに、すらりとした長身。成績は常に上位で、運動もできる。教師からの信頼も厚く、生徒からの人気も高い。
そんな翔馬の前にも、ステータスが浮かんでいた。
「天城、何だった?」
誰かが尋ねる。翔馬は少し困ったように笑った。
「俺は――《勇者》らしい」
「勇者!?」
「うわ、すげえ!」
「光魔法まであるじゃん!」
「成長補正って何これ!」
「さすが生徒会長!」
一斉に人が集まる。
剣術、光属性魔法、身体能力補正。さらにレベルアップ時の成長補正。誰が見ても当たりだと分かる能力だった。
翔馬は浮かれる生徒たちを前に、両手を軽く上げた。
「とにかく、一度落ち着こう」
その一言で、騒ぎが少し収まる。
「俺たちがどこへ飛ばされるのかは分からない。でも、力を与えられたのは確かだ」
翔馬は一人一人へ目を向けるように話した。
「向こうに着いたら、まず全員で合流しよう。それから能力を確認して、できることを分担する。勝手に一人で動かないほうがいい」
「うん」
「そうだな」
「天城がいるなら何とかなりそうじゃね?」
張り詰めていた空気が緩んでいく。
玲央はそれを黙って見ていた。こういうとき、人をまとめられるのは翔馬の長所だ。少なくとも、今の発言に間違ったことはない。
玲央も自分の前に浮かぶ画面へ視線を戻した。指先で触れる。表示が切り替わった。
「…………」
玲央は黙った。もう一度見る。やはり変わらない。
他の生徒たちが見ているものとは、明らかに雰囲気が違った。
華やかな紋章も、職業欄もない。黒を基調とした無機質な画面。そこに表示されていたタイトルは――。
《BIO CRISIS》
玲央は目を細めた。
見間違えるはずがない。シリーズ全作を何度プレイしたか分からない。特に第四作は、敵の配置からアイテムの位置まで頭に入っているほどやり込んだ。
視線を下へ動かす。
装備欄。
《ハンドガン》
《ナイフ》
「……は?」
それだけだった。
職業、なし。魔法、なし。ジョブチェンジ、なし。スキルらしいスキルも見当たらない。
ハンドガンの横には、ご丁寧に残弾数まで表示されている。
周囲からは楽しそうな声が聞こえてくる。
「俺、次のレベルで新しい魔法覚える!」
「こっち上位職あるぞ!」
玲央は自分の画面と、周囲の表示を交互に見た。そして、ぽつりと呟いた。
「……俺だけバイオなのか?」
「え?」
しまった、と思ったときには遅かった。近くにいた男子が玲央の画面を覗き込んでいた。
「黒瀬、バイオなの?」
その一言に、周囲が反応する。
「バイオって、あのゾンビの?」
「見せて見せて!」
「うわ、マジだ」
「ハンドガンとナイフだけ?」
「魔法ないじゃん」
「っていうか、弾数書いてあるぞ」
誰かが吹き出した。
「弾なくなったら終わりじゃん」
「俺らレベル上がるのに、黒瀬って普通の人間のまま?」
「それハズレじゃね?」
小さな笑いが起こる。玲央は何も答えなかった。
彼らの言っていることは、あながち間違いでもない。RPGの主人公なら、レベルを上げれば人間離れした強さになっていく。魔法を覚え、強力な装備を手に入れ、やがて魔王とだって戦える。
対してバイオクライシスの主人公は、基本的には人間だ。
銃弾は撃てば減る。傷つけば死ぬ。
画面に表示された情報だけで比べれば、圧倒的に不利だった。
「黒瀬」
人垣の向こうから声がした。生徒たちが道を空ける。
翔馬だった。
「ちょっと見てもいいか?」
「好きにしろ」
翔馬は玲央の横へ立ち、ステータスを確認した。ハンドガン。ナイフ。残弾数。その視線が、ゆっくりと画面をなぞる。
ほんの一瞬だけ。本当に一瞬だけだった。
翔馬の口元が緩んだように、玲央には見えた。だが、次に顔を上げたときには、いつもの生徒会長の表情に戻っている。
「みんな、聞いてくれ」
翔馬は玲央ではなく、クラス全員へ向き直った。視線が集まる。
「黒瀬の能力は、どうやら俺たちとはかなり違うみたいだ。魔法もないし、武器は銃とナイフだけ。それに――弾薬にも限りがある」
わざわざ全部言う必要があるのか。玲央はそう思ったが、口には出さなかった。
翔馬は力強く、しかし慈愛に満ちた表情でクラスメイトたちを見渡した。
「黒瀬は俺たちと違って、限りなく生身に近い。だから、向こうに着いたら絶対に俺たち全員で彼を守り抜こう。いいね?」
「ああ!」
「もちろん!」
「同じクラスだもんな!」
すぐに賛同の声が上がる。
翔馬の発言だけを聞けば、何もおかしくない。圧倒的な光属性のリーダーシップであり、能力に恵まれなかったクラスメイトを気遣う立派な生徒会長だ。
だが。
玲央は翔馬の目を見た。昔から、翔馬は玲央に対してだけ微妙に態度が違った。表面上は普通に接してくる。だが、テストの順位でも体育の記録でも、玲央が翔馬を上回ったときだけ笑顔がわずかに硬くなる。玲央は気づいていた。
そして今。
翔馬は《勇者》。自分は、ハンドガンとナイフだけ。
なるほど。玲央は小さく息を吐いた。
「……ご親切にどうも」
翔馬が微笑む。
「同じクラスだろ?」
「そうだったな」
玲央も薄く笑った。それ以上は何も言わなかった。
『転移準備完了』
突然、あの声が戻ってきた。
空気が再び張り詰める。今度は、誰もすぐには声を上げなかった。白い空間に変化はない。それなのに、足元から冷気が這い上がってくる。
「もう!?」
「待って!」
「どこに飛ばされるの!?」
質問への答えはない。声の主は、最初から彼らの意思など確認していなかった。
『転移を開始する』
白い空間の床が輝き始めた。
光は足元に広がるのではなく、何かを探すように生徒たちの影へ絡みついていく。靴底が床から離れた。
「みんな!」
翔馬が叫んだ。
「向こうに着いたら必ず合流するぞ! 勝手に動くな!」
その声も、すでに遠ざかり始めていた。
生徒たちの足元から白い光が身体を呑み込んでいく。隣にいたはずの人影が、輪郭から崩れていく。手を伸ばしても届かない。声を上げても、誰の耳にも届いていないようだった。
玲央は自分の身体を包んでいく光を見下ろした。
冷たい。
光なのに、触れた場所から体温が奪われていく。
視界が白く染まる。浮遊感。胃が持ち上がるような不快な感覚。音が遠ざかる。
最後に見えたのは、白い空間の中で薄く笑う翔馬の顔だった。
その表情が、光の向こうで歪んだように見えた。
そして――。
世界が消えた。
◇ ◇ ◇
眩しい。
そう思ったのは一瞬だけだった。
次に気づいたとき、玲央は森の中に立っていた。
目の前にあったのは、森の深い緑だった。
見上げるほど巨大な木々が、どこまでも連なっている。
幾重にも重なった枝葉が空を覆い、昼間だというのに森の奥は薄暗い。
湿った土の匂い。
風に揺れる葉の音。
どこからか聞こえる、知らない鳥の鳴き声。
「……森?」
玲央は周囲を見渡した。
何かがおかしい。
木々の幹は見慣れたものより異様に太く、根元には青みがかった苔が広がっている。
頭上には、見たこともない紫色の実がいくつもぶら下がっていた。
さらにその奥。
木々の隙間を、淡い光がふわりと横切った。
玲央は反射的に目を細めた。
光は虫のように飛んでいたが、羽音は聞こえない。
昼間の森にしては、あまりにもはっきりと輝いている。
やがて光は玲央の目の前でぴたりと止まり、しばらく宙に留まった。
次の瞬間、何かに引かれるように森の奥へ滑っていき、木々の向こうへ消えた。
「…………」
振り返っても、左右を見ても――木、木、木。
道らしい道も、人の気配もない。
そして何より。
玲央の知っている森とは、どこかが決定的に違っていた。
ぽたり。
玲央の肩を濡らした。その音が、やけに大きく響いた。
どこかで鳥に似た生き物が鳴いた。聞いたことのない声だった。返事をするように、遠くで別の鳴き声が上がる。
むせ返るような生命の匂い。肌にへばりつく湿気。森全体が、玲央の知らない呼吸をしている。
ここが異常な場所だと脳が理解した瞬間、玲央は反射的に身構えた。
「……マジか」
玲央は周囲を見回した。誰もいない。翔馬も、クラスメイトも。全員で合流するどころか、人の声一つ聞こえなかった。
代わりに、どこかで枝が折れた。
ぱきり、と乾いた音が森の奥へ消えていく。
玲央はそちらへ顔を向けた。何も見えない。それでも、何かがいる気配だけが残った。
「バラバラかよ」
玲央は舌打ちしかけて、やめた。声を出すのも危険かもしれない。
ここがどこなのか、何がいるのかも分からない。分かっているのは、自分が一人で、周囲には身を隠す場所が多すぎるということだけだった。
まず状況確認。自分の身体に怪我はない。制服もそのまま。
そして腰に、先ほどまでなかった重みがある。
「……ん?」
右手を下ろすと、指先が硬いグリップに触れた。
視線を落とす。
右腰には黒いホルスター。
そこには、一丁のハンドガンが収まっていた。
「……銃?」
さらに左腰には、黒い鞘に収められた一本のナイフ。
「…………」
右に銃。
左にナイフ。
まるで――ゲーム開始直後の初期装備だった。
ハンドガンを抜く。
玩具ではない。手に伝わる重量。金属の冷たさ。
マガジンを抜き、弾が装填されていることを確認して戻す。さらにスライドをわずかに引き、薬室に真鍮色の弾丸が送り込まれているか確かめる。
チャキリ、という硬い金属音が、静かな森に不自然なほど響いた。
玲央はすぐに動きを止めた。
音が大きすぎる。森の中では、たった一度の操作音さえ自分の位置を知らせる合図になりかねない。
身体が手順を覚えていた。射撃そのものは初めてではない。それでも、ゲーム画面の向こう側にあったものを現実に手にしている感覚は奇妙だった。
本当に――バイオクライシスだ。
そのときだった。
ガサッ。
玲央は音の方に銃口を向ける。
右前方、十メートルほど先の茂み。風ではない。揺れたのは、そこだけだった。
玲央は銃口を維持したまま、呼吸を浅くし、耳を澄ます。
何かがいる。
葉の裏で、湿ったものが擦れる音。枝を押し分ける、ゆっくりとした動き。
ガサ……。
もう一度。
今度は、さっきより近い。
玲央の指が銃把を強く握った。
逃げるべきか。撃つべきか。
判断するには、相手の姿が見えない。見えないまま近づいてくるものほど厄介だった。
枝の隙間から、何かが見える。
緑色。
最初は葉だと思った。
違う。
指だった。
節くれだった細い指が枝を掴む。爪の間には黒い泥が詰まっている。
茂みが左右に開いた。
現れたものを見て、玲央は目を細めた。
子供ほどの背丈。緑色の皮膚。尖った耳。潰れた鼻の下から、黄ばんだ歯が覗いている。
腰には汚れた布を巻き、右手には赤茶色に錆びた短剣。刃先から、黒い液体が一滴、地面へ落ちた。
ゴブリン。
その単語以外、玲央には思いつかなかった。
「ギィ……」
ゴブリンが玲央を見た。濁った目が、ゆっくりと玲央の全身をなぞる。
玲央もゴブリンを見返す。
ゲームなら珍しくもない。雑魚敵だ。序盤で倒されるために出てくるような怪物。
だが、画面越しとはまるで違った。
胸が上下している。喉の奥で湿った呼吸音が鳴る。涎が糸を引く。濁った瞳が、はっきりと玲央を捉えていた。
その視線には、獲物を見つけた獣のような知性があった。
――襲ってくる。そう感じた瞬間、ゴブリンの口元が歪んだ。
「ギャアッ!」
突然、ゴブリンが地面を蹴った。
速い。
落ち葉を跳ね飛ばし、錆びた刃を振り上げ、一直線に迫ってくる。
玲央はハンドガンを握り直した。
照準がゴブリンの胸を捉える。
指を引けばいい。それだけだ。
射撃なら知っている。ゲームなら、何千、何万という敵を撃ってきた。
だが――。
玲央の人差し指が、ほんの一瞬だけ止まった。
紙の的じゃない。画面の中でもない。
今から撃つのは、生き物だ。
こちらを殺そうと走ってくる、生きた存在。
ゴブリンとの距離が縮まる。
八メートル。
六メートル。
極度の恐怖で、体感時間が引き延ばされていく。錆びた短剣が、木漏れ日の中で鈍く光るのがコマ送りのように見えた。
足が竦み、喉が張りつく。目の前の怪物がゲームの敵ではなく、自分を殺しにくる現実の生物なのだと、身体が理解してしまった。
撃て。
そう思っているのに、指が動かない。
五メートル。
四メートル。
次の一歩で、あの刃が自分の肉を裂く。
死にたくない。
その強烈な感情の奥で、一人の男の姿が浮かんだ。
感染者だらけの街を歩き、化け物を前にしても銃を構え続けた男。
レオ・クロフォード。
自分が何度も操作した、《バイオクライシス》の主人公。
――あいつなら、迷わない。
玲央は震えそうになる指に力を込めた。
なら、なればいい。
今まで画面の向こうで見てきた男に。
どんな化け物を前にしても怯まず、銃を構え、生き残る男に。
黒瀬玲央は――レオ・クロフォードになる。
今、この瞬間から。
――俺は、レオだ。
恐怖が消えたわけではない。足の震えも、喉の渇きも残っている。
それでもレオは息を吸った。肺に冷たい空気を送り込む。
照準を上げる。
ゴブリンの胸ではない。
頭部。
そこへ銃口を向ける。
迷っている暇はない。
銃口がぴたりと止まる。
その目からは、迷いが消えていた。
「……ついてないぜ」
カクヨムでも掲載してます。よろしくお願いします。




