人間はひとりぼっちだ
【スーリヤの庵】
テーブルを囲む太陽の夫婦に、月の使徒、そして大賢者
セレン:「強すぎる太陽がいけないなんて」
スーリヤ:「あんたに私たちの前の時代は『大いなる竜』が司っていたことは教えたね。
竜は小山ほども大きさがあった。それだけ大きいと使うエネルギーもたくさん必要になる。
私たちが空気を必要とするように、竜もたくさんの空気を必要とした。今よりも比べものにならないくらい濃厚な空気がね」
セレン:「では、今の時代とは空気が違うと?」
スーリヤ:「濃すぎる空気は、竜以外には毒だったのさ。彼ら以外の生き物がいない世界がバランスを取り戻すために竜を滅ぼすのには、そんなに時間はかからなかったってこと」
ファロス:「ヒューマ1人のために世界を危険にさらすことはできないんだセレン」
セレン:「なぜ、彼は、ヒューマはそんなに辛い目に遭うのです」
フレア:「辛いのはヒューマだけじゃないのよ。セレン、あなただって辛い思いをしてきたはずよ」
セレン:「私?私がですか?」
ファロス:「サーラ1人だけが大地の声を聞くことができる。
ジェスしか風と会話ができない。
ベルタは海でひとりぼっちだ。
ミランしか火を自由に扱えないとはなんと不便なんだろう。
君も一緒だ。君しか月の真の姿を見ることができない」
スーリヤ:「これが、あんた達人間が持っている罪なんだろうね。世界の声が聞こえない。知らない間に人は世界を壊してしまい、世界の声は人には届かない。どっちにとっても不幸なことだよ」
【最果ての村 広場】
向かい合っているヒューマと太陽の司祭
ヒューマ:「オレは、オレはどうなってもいい。でもサーラやジェス、ベルタ、ミラン、それにセレンも巻き込みたくない。この世界も。オレはどうすればいいんですか?」
太陽の司祭:「その方法はここにはない。最果ての村にある」
ヒューマ:「最果ての村って、ここの事じゃないですか?」
太陽の司祭:「ここではない。ここは夕陽の民が暮らす最果ての村だ。その方法があるのは、朝陽の民が暮らす最果ての村、お前の母の生まれた地だ」
【スーリヤの庵】
テーブルを囲む太陽の夫婦、月の使徒、そして大賢者
スーリヤ:「どれ、じゃあ行こうかね」
腰を上げるスーリヤ
ファロス:「後はお願いします大賢者」
慇懃な礼をするファロスとフレア
スーリヤ:「あんたたちは行かないのかい?」
ファロス:「顔を合わせない方が・・・」
フレア:「私たちも、ヒューマも決心が鈍くなるでしょう。ヒューマにはかわいそうだけど」
セレン:「なりません!」
スーリヤ:「・・・」
ファロス:「セレン?」
セレン:「ファロスさん、フレアさん。私はあなたをヒューマの元に連れて行きます」
フレア:「え?」
ファロス:「それは気持ちだけありがたくもらっておくよ」
セレン:「なりません」
両手でテーブルを叩くセレン
フレア:「セレン?」
セレン:「私は、妹の、ルナの病を治すために奔走しすぎて死に目にあうことができなかったのです。
ルナは自分の病が治らないことを知っていました。
しかし私は治療法を求めて奔走することで、現実から目を背けていたのです。
ルナは寂しかったに違いありません。ですが、私は死に行くルナのことを直視できなかった」
セレンの頬を静かに涙が滑る
セレン:「お見苦しい姿を・・・。今回のことで誰も死ぬことにはなりません。しかし永の別れになるのであれば、正しく別れるのが良いと思うのです。別れの時にしか言えない言葉もあります」
ファロス:「しかし」
スーリヤ:「私も、セレンの言うとおりだと思うけどね」
フレア:「母さん」
スーリヤ:「まあいい。面倒だから無理矢理でも連れて行くよ」
パチンと指を鳴らすスーリヤ
2頭のクマが現れて、ファロスとフレアを担ぎ上げた
【ゆりかごの森 上空】
舞い上がるペガサス
【最果ての村 夕焼け】
崖の上に立つヒューマ
赤々と空を焦がし地平線に沈んでいく太陽
◆回想シーン
幼いヒューマと父ファロス
沈む夕陽を見ている太陽の親子
じっと手を見るヒューマ
太陽の司祭(声)「人はより欲しがるものだ。人の性よ。悲しい性よ」
ヒューマ:「俺たち人は、この世界にとって必要なのか・・・?」
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