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境界の双子〜二つの雷鳴が響くとき〜  作者: ユーディ
第四章 空っ風の異邦人と、黄昏のコンクリート
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第四章11『魔導と電動の槌音、迷い込んだ『神の眼』』

祭りの大熱狂から一夜明けた、新しい異世界の朝。

大気中に満ちる清浄なマナの空気と、どこまでも青く高い空の下、『暁の自由都市』の中央広場には、昨晩の宴の残骸が散乱していた。

1. 二日酔いの極道と、魔導科学建築の朝


「……う、ううぅ……頭が割れそうだ……」

「アニキ……俺、もう一滴も飲めねぇッス……。異世界の酒、度数がバグってますよ……」


広場のあちこちで、柄シャツを着たヤクザの組員たちが、地面に転がって盛大に二日酔いの呻き声を上げている。

昨晩、夜国の強い蒸留酒と現代の缶ビールをチャンポンで飲み明かした彼らの胃袋は、完全な限界を迎えていた。


「情けねぇぞ、お前ら! 昼国の騎士さんたちは、もうピンピンして朝練やってるじゃねぇか!」

若頭の龍崎が、パンチパーマの舎弟を足で軽く小突きながら一喝する。龍崎自身も少し顔色が悪いが、極道としての意地で平然を装っていた。


「ガハハハ! 龍崎殿、我々光の騎士は、自己の魔力で血中のアルコールを微細に分解・浄化する術を心得ております故! しかし、昨晩の『カラオケ』という現代の儀式、実に見事な腹式呼吸でしたぞ!」

ジャージ姿のゴランが、丸太を肩に担ぎながら快活に笑う。


「……お前ら、元気なのはいいが、とっとと手を動かせ。シオンの姉ちゃんが起きてくる前に、この街の新しい居住区の土台を組むんだよ」

龍崎の隣で、黒いパーカーのフードを被ったハクが、欠伸を噛み殺しながら指示を飛ばす。


彼らは今、異世界と現実世界が強引に混ざり合って崩壊した『暁の自由都市』の区画を整理し、本格的な「新しい街(国)」をゼロから建築しようとしていた。


「ハクの兄貴の言う通りだ! 野郎ども、ダンプからMドンで調達してきた『電動工具』と『発電機』を下ろせ!!」

龍崎の号令で、二日酔いの組員たちがフラフラと立ち上がり、ダンプカーの荷台からチェーンソーや電動丸ノコ、そして小型のガソリン発電機を運び出してくる。


「……しかし、龍崎殿。その『発電機』という鉄の箱、動かすための燃料ガソリンとやらが尽きれば、ただの鉄くずになってしまうと聞きましたが」

作業着姿のジーグ将軍が、腕を組んで尋ねる。


「ああ。俺たちも転移に巻き込まれるとは思ってなかったからな。燃料の備蓄は数日分しかねぇ。これが尽きたら、電動工具は使えなくなるぜ」

龍崎が頭を掻く。


そこへ。

「その問題なら、僕の力で解決できますよ」


純白のシャツに身を包み、スッキリとした笑顔を浮かべた聖騎士カイルが、リオナと共に歩み寄ってきた。

カイルは、龍崎の組員が持っていた電動丸ノコの電源プラグ(コンセント)を手に取ると、自身の『生身の右腕』に、かつての半霊体だった頃の名残である白銀の魔力を静かに集中させた。


「……東京の地下サーバーで、電子の海にダイブした時の感覚です。僕の白銀の魔力を、純粋な『電力(電気信号)』に変換して、この工具の回路に直接流し込みます」


カイルが、プラグの先端を右手で包み込む。

バチッ……! ウィィィィィィィィンッ!!!!


「うおおぉぉっ!? 発電機に繋いでねぇのに、丸ノコの刃が全開で回り始めたぞ!!」

ヤクザの組員たちが驚愕して目をひん剥く。


「すごいわ、カイル! 魔法で現代の機械を動かしてる!」

リオナが、パチパチと手を叩いて喜ぶ。

「ええ。これなら、ガソリンがなくても、僕や結界班の魔力がある限り、現代の便利な工具を無限に使用できます」

カイルが、少し誇らしげに微笑む。


「……マジかよ。魔法と科学のハイブリッド建築じゃねぇか。こりゃあ、とんでもねぇスピードで街が組み上がるぜ!!」

龍崎が歓喜の声を上げる。


カイルの魔力変換(コンセント代わり)を動力源として、ヤクザたちの操る電動工具が唸りを上げ、昼国の騎士たちの圧倒的な筋力で重い建材が運ばれていく。

さらに、ルミスの結界魔術がセメントの代わりに建材同士を強固に接着し、ゼッカ率いる泥ネズミたちが正確な測量と間取りを引いていく。


ファンタジーの魔力と、現代日本の工具・技術。

相反するはずの二つのルールが、シオンの創り出したこの独立した新世界において、見事に噛み合い、爆発的なシナジーを生み出していたのだ。


2. コンテナの奥のイレギュラー、銀髪の迷い子


街の建設が急ピッチで進む中。

広場の端に停められていた、巨大な『業務用コンテナ(Mドンの倉庫から巻き込まれたもの)』の内部で、物資の棚卸しをしていた夜国の毒娘ニムが、突如として短い悲鳴を上げた。


「きゃっ!?」


「どうした、ニム! 毒虫でも出たか!」

近くで木材を運んでいたカエレンが、短剣を抜いてコンテナの中に飛び込む。


「ち、違うの、カエレン! コンテナの奥の、段ボールの山の裏側に……!」

ニムが、震える指でコンテナの最奥を指差す。


カエレンが警戒しながら段ボールをどかすと、そこには、大量のカップ麺やトイレットペーパーの山に埋もれるようにして、『一人の人間』が丸まって倒れていた。


「……なんだこりゃ。ガキ、か?」


カエレンが、短剣を下ろして覗き込む。

そこに倒れていたのは、十歳前後と思われる、小柄な少女だった。

着ているのは、Mドンの値札がついたままの、ダボダボの黒いオーバーサイズのパーカー。

色素の薄い透き通るような銀色の髪が、コンテナの薄暗い床に散らばっている。

そして何より異様なのは、パーカーの袖から覗く彼女の白い肌に、まるで『バーコード』か『電子基板の回路』のような、細かな黒い幾何学模様がビッシリと刻み込まれていたことだ。


「……おい、生きてるのか? 息をしてるようには見えねぇぞ」

カエレンが、少女の肩を揺さぶろうと手を伸ばした、その時。


カッ……。


少女の瞼が、ゆっくりと開かれた。

現れたのは、感情を一切感じさせない、ガラス玉のような無機質な『緑色の瞳』。

しかも、その瞳孔の奥には、デジタルのリング状のノイズがチカチカと明滅していたのだ。


『……Errorエラー。主電源の接続喪失リンク・ロストを確認。

……現在地の座標データ、取得不能。

……ローカル環境、未登録領域アンノウン。……ここは、どこですか』


少女の小さな唇から紡がれたのは、流暢な日本語でありながらも、追跡者たちと同じような『機械的なシステム音声』の響きを持つ言葉だった。


「ひぃっ!? こいつ、人間じゃねぇ!! あの仮面のバケモノ(追跡者)と同じ、システムの手先だ!!」

カエレンが、反射的に短剣を構え、ニムを背後へ庇う。


「……騒々しいわね。何事よ」


そこへ、騒ぎを聞きつけたシオンとハクが、コンテナの入り口に姿を現した。


シオンは、レザージャケットのままコンテナの中へ足を踏み入れ、倒れている銀髪の少女を見下ろした。


「……シオン。こいつ、魔力の気配が全くねぇ。だが、ただの人間でもない。……危険だぜ」

ハクが、シオンの前に立ち塞がり、首筋の呪いの刺青を僅かに発光させて威嚇する。


少女は、ゆっくりと身を起こし、ダボダボのパーカーの袖を引きずりながら、無機質な緑色の瞳でハクを見上げた。


『……生体スキャン。対象・エラーコード「ハク」。

……過去のデータと照合。危険度スレットレベル、評価不能。……私は、あなたに危害を加えるための「実行コマンド」を所持していません』


少女の言葉に、ハクが眉をひそめる。

「実行コマンドだぁ? てめぇ、やっぱりあの追跡者どもの仲間か!」


「……待ちなさい、ハク」

シオンが、ハクの肩を叩いて制止し、少女の目の前でゆっくりとしゃがみ込んだ。


シオンの紫の瞳が、少女のバーコードのような肌の模様と、緑色の瞳の奥のデジタルリングを真っ直ぐに見据える。


「……あなた、名前は?」

シオンが、静かに、しかし威厳を持って尋ねる。


少女は、小首を傾げ、瞬きを一つした。


『……個体名ネームは、設定されていません。

私は、全宇宙の理を統括するシステム中枢――【管理者アドミニストレーター】から切り離された、ただの「観測用サブ・ルーチン」です』


少女の口から出た『管理者アドミニストレーター』という言葉。

その瞬間、シオンの脳裏に、前世の記憶の最深部に刻まれた、圧倒的で絶対的な『神のシステム』の巨大なシルエットがフラッシュバックした。


「……管理者の、サブ・ルーチン。つまり、あなたも神の一部ってことね」

シオンの目が、険しく細められる。


『……一部、ではありません。昨日、貴方(特異点アルファ)が放った「次元神断」により、現実のネットワークからこの領域が強制的に切り離された際。

私のデータは、本拠地メインサーバーに帰還する処理が間に合わず、周囲にあったMドンの倉庫の質量データと混ざり合い、この物理的な肉体アバターを形成したまま、この世界に取り残されてしまいました』


少女は、自分の小さな両手を見つめた。

『……現在、管理者メインサーバーとの通信アンビリカルケーブルは完全に切断されています。私は、帰る場所を失った、ただの「迷子」です』


感情のない声。

しかし、その言葉の内容は、神のシステムの一部が、シオンの魔法の巻き添えを食って、一人ぼっちで異世界に漂着してしまったという、あまりにも惨めで孤独な事実を告げていた。


3. 与えられた温もりと、名付けの儀式


「……冗談じゃねぇ。神様の欠片が迷子になっただぁ? んなもん、ここで俺が噛み砕いて消去デリートしてやれば済む話だ!!」

ハクが、殺気を放って一歩前に出る。

追跡者に自我を書き換えられそうになったハクにとって、システムに関わる存在は全てが憎悪の対象だった。


「……やめなさい、ハク。武器を収めて」

シオンが、鋭く、しかし静かな声でハクを制止した。


「なんでだよ、シオン! こいつは敵の本体メインサーバーの端末だぞ! いつまた俺たちをシステムで攻撃してくるか分からねぇ!」


「この子には、私たちを攻撃する力なんてないわ。……見てごらんなさい。魔力がないだけじゃない、この子、震えてるわ」


シオンの言葉に、ハクやカエレンがハッとして少女を見る。


確かに、オーバーサイズのパーカーに包まれた少女の細い肩は、コンテナの冷たい床の上で、小刻みに、カタカタと震えていたのだ。

システムの一部でありながら、物理的な肉体アバターを得てしまったことで、彼女は初めて「寒さ」という生物的な苦痛を感じていた。


シオンは、自分の着ていた黒のレザージャケットを脱ぎ、それを少女の肩に優しく羽織らせた。


『……? 対象からの熱伝導を確認。……これは、何ですか』

少女が、不思議そうにレザージャケットの温もりを見つめる。


「服よ。……それにしても、随分と軽い体ね。データが寄り集まっただけのアバターだからかしら」

シオンは、少女の冷たい手を取り、そっと立ち上がらせた。


「シオン様……本気ですか? その子を、生かしておくおつもりで?」

カエレンが信じられないというように尋ねる。


シオンは、振り返り、フッと柔らかく笑った。

「私は、私たちの世界を脅かすシステム(神)は絶対に許さない。……でも、親元からはぐれて、一人ぼっちで寒さに震えているただの迷子を斬り捨てるほど、落ちぶれた女王様じゃないわ」


かつて、夜国の修羅として、親を殺し、血に塗れていたシオン。

「不要なものは斬る」という冷酷な死神だった彼女が、今は、敵の欠片にすら温かい毛布をかける『王』としての慈愛と器の大きさを見せていた。

ハクは、そんなシオンの背中を見て、小さく舌打ちをしながらも、拳をスッと下ろした。

(……チッ。本当に、てめぇには敵わねぇよ)


「……ニム。昨日の宴の残りのスープ、まだ温かいのある?」

シオンがニムに尋ねる。

「は、はい! お肉と野菜がたっぷりのスープが、お鍋に少し残ってます!」

「持っていらっしゃい。この子に食べさせるわ」


数分後。

コンテナの外、日当たりの良い木箱の上に座らされた少女は、ニムが持ってきた温かいスープの入った木の器を、両手で大事そうに抱え込んでいた。


『……未知の有機物。摂取の必要性を確認できません』

少女が、スープを見つめて首を傾げる。


「いいから、飲んでみなさい。……肉体を持った以上、エネルギー(カロリー)を入れないと、エラーを起こして倒れるわよ」

シオンが、隣に座って促す。


少女は、恐る恐る、器に口をつけ、スープを一口すすった。


その瞬間。

少女の無機質な緑色の瞳が、パチクリと大きく見開かれた。

瞳孔の奥で回っていたデジタルリングが、激しく明滅し、一瞬だけ止まる。


『……!! 味覚センサー、異常数値を検知。……塩分、脂質、アミノ酸の複合データが、脳内処理領域を……圧倒しています。……これは……』


「……『美味しい』って言うのよ」

シオンが、頬杖をつきながら優しく教える。


『……オイシイ。……温かい』

少女は、初めて経験する「味覚」と「温もり」という強烈な生体情報に処理が追いつかず、ただ黙々と、器のスープを最後の一滴まで飲み干した。


「……ふふっ。よく食べるじゃない」

シオンが、レザージャケットに包まれた少女の銀髪を、優しく撫でる。


『……特異点アルファ(シオン)。なぜ、貴方は私に「オイシイ」を与えるのですか? 私は、貴方たちを排除しようとしたシステムの一部です。……論理的な理由が、見つかりません』

少女が、空になった器を抱えたまま、シオンを真っ直ぐに見つめる。


「理由なんてないわ。私がそうしたかったから、そうしただけよ。……強いて言うなら、私は『あんたたちシステム』が嫌いなの。全てを理屈で割り切って、運命を決めつけるそのやり方がね。……だから、一番理屈に合わないことをして、あんたを困らせてやったのよ」


シオンの悪戯っぽい笑顔に、少女はしばらく沈黙し……やがて、小さく、本当に小さくだが、口角を微かに上げた。


『……理解しました。貴方は、とても矛盾に満ちた、非論理的なバグです。……だからこそ、美しい』


少女の言葉に、シオンは少し驚いたように目を見開いた。


「……名前がないなら、私がつけてあげるわ」

シオンは、空を見上げた。

「『アノン』。……システムという名前の匿名アノニマスから抜け出して、たった一人の『あなた』として、ここで生きなさい」


『……アノン。……私の、個体名。登録、完了しました』

アノンと名付けられた少女は、シオンのレザージャケットの袖を、小さな手でギュッと握りしめた。


4. 予言の瞳、第十章へ続く深淵の扉


アノンを新しい家族(?)として迎え入れたその日の午後。


街の建設作業が一段落し、ジーグやカイル、龍崎たちがシオンのテントに集まってきた。

アノンは、シオンの隣で、ニムからもらった棒付きキャンディを無表情で舐めている。


「……シオン様。その少女が、我々を襲った追跡者のシステムの欠片だというのは、本当ですか」

ジーグ将軍が、険しい顔でアノンを見下ろす。

「ええ。でも、今は通信が切断されて、ただの迷子よ。私たちの脅威にはならないわ」

シオンが庇うようにアノンの肩を抱く。


カイルは、アノンの緑色の瞳をじっと見つめ、静かに尋ねた。

「アノン、と言いましたね。……君は、あの『追跡者』たちを統括している、メインサーバーの『管理者アドミニストレーター』の正体を知っているのですか?」


カイルの問いに、テント内の空気が一瞬で張り詰めた。

彼らがこの新世界を創り出し、現実世界から切り離されたとはいえ、いつか必ず、根本的な元凶であるシステムの中枢と決着をつけなければならない日が来る。彼らはそれを本能で理解していた。


アノンは、キャンディを口から離し、無機質な声で答えた。


『……はい。私は、管理者の観測端末でしたから。……しかし、管理者アドミニストレーターの正体は、貴方たちが想像するような「冷酷な人工知能」や「無機質なプログラム」ではありません』


「……どういうことだ?」

ハクが眉をひそめる。


アノンの緑色の瞳が、シオンと、その隣にいるリオナの顔を交互に見つめた。


『……管理者アドミニストレーターは。

……シオン。リオナ。貴女たちの「前世の魂」と、全く同じ魂の波長シグネチャーを持った、ただの【悲しい人間】です』


「なっ……!?」

シオンとリオナが、同時に息を呑んで立ち上がった。


「私たちと、同じ魂の波長……!? それって、まさか……!」

シオンの脳裏に、前世の記憶が激しくフラッシュバックする。

かつて、大魔導士として神のシステムに反逆した時。あの時、彼らと一緒に研究室にいた、もう一人の……。


『……管理者は、貴女たちを憎んでいません。むしろ、貴女たちを愛しているからこそ、システムという名の「完璧な檻」に閉じ込め、二度と傷つかないように管理しようとしているのです。

……管理者は、宇宙の果ての深淵で、ずっと泣いています』


アノンの告げた、衝撃の真実。

神のシステム、その中枢にいるのは、冷酷な機械などではなく、彼女たちの前世に深く関わる「愛と悲しみ」に囚われた人間だったのだ。


「……愛しているから、檻に閉じ込める。……ふざけた理屈ね」

シオンが、ギリッと唇を噛み締める。


『……いつか、管理者は必ず、この切り離された空間(新世界)の座標を特定し、「殲滅艦隊イレース・フリート」を送り込んでくるでしょう。

その時が、貴女たちと管理者の、本当の決着の時です。……私は、観測者として、貴女たちの選択を見届けます』


アノンは、それだけを言い残し、再びキャンディを口に含んで黙り込んだ。


テントの中に、重く、しかし熱い沈黙が降りた。


敵の正体。

そして、いずれ必ず訪れるであろう、神のシステムの中枢(第十章)との最終決戦。


「……シオン。どうする気だ」

ハクが、シオンの背中を見つめて尋ねる。


シオンは、深く息を吸い込み、そして、これ以上ないほど不敵な笑みを浮かべて振り返った。


「決まってるでしょ。……神様が泣いてるっていうなら、私たちがそのメインサーバー(現実世界)のド真ん中まで殴り込みに行って、そのふざけた檻をぶっ壊して、無理やり泣き止ませてやるのよ」


シオンの言葉に、リオナも力強く頷く。

「うんっ! 前世の私たちの心残りなら、今の私たちが絶対に解決しなきゃ!」


「……その時が来るまでに、俺たちはこの国を、誰にも壊されない最強の要塞に育て上げるしかねぇな。……龍崎! お前らのダンプと工具で、城壁の拡張工事だ! 泥ネズミたちも全員叩き起こせ!」

ハクが、気合を入れて拳を打ち鳴らす。


「ガハハハ! 任せとけ兄貴! 俺たち極道の土木作業のスピード、見せつけてやるぜ!」

龍崎が笑い声を上げる。


ジーグも、カイルも、それぞれが決意の表情で頷き合った。

新しい世界での平和な日常。

しかし、彼らの目はすでに、遥か先の未来――次元の壁を越えた現実世界での、システム中枢(管理者)への究極の反逆劇へと向けられていた。


迷い込んだ神の眼『アノン』という新たな家族を迎え。

暁の星徒たちは、魔導と科学が入り交じるこの混沌とした新世界で、いつか来る決戦の日に向けた、力強く、そして笑い声の絶えない「日常の戦い」を始めていくのである。

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