第6章 11話
映像とまったく同じ光景。
私の氷が地面へと刺さっている。
そして、あの二人は起きあがる事すら出来ない。
やはり運命には誰も逆らえないのか。
あとは地面が血で染まれば完成。
これだけの氷に貫かれてるんだ。
氷の下はさぞかし惨い姿になっているだろう。
残念だが、これもまた運命だったか。
ん?
あれ?
私は疑問を感じた。
そう。
まったく血が流れて来ないからだ。
おかしい。
刺さってから、時間が経過している。
いくらなんでも、血が流れて来てもおかしくないほどに。
それなのに。
まだ血は出て来ない。
どういう事だ?
「くっ」
何!?
佐藤という娘が起きあがって来る。
どうやらローパーの力を吸い取る効力が切れそうになってるらしい。
変だ。
私の映像では、二人はまだ倒れたままだ。
なのに、もう起きあがっている?
変だ。
なのに、血はまだ流れて来ない。
映像と違う!?
そんな馬鹿な!
これまで、一度たりとも映像と違う光景は見た事無い。
だから。
私は死を回避する事を諦めたんだ。
なのに。
今、初めて未知なる現象が起きている。
私の見る死は、将来約束された運命という鎖に縛られた死のはずだ。
私があれだけ苦労して、必死に努力しても無駄な事が。
今、初めてその運命が変わってるのだ。
「健一ぃー!!死んじゃったの?」
佐藤が叫ぶ。
だが、その返事は無い。
死んでいるはずだ。
そうだ。
あの娘はまた再び倒れるんだ。
今、力を振り絞って立ち上がってはいるが。
すぐに力尽きて倒れるはずだ。
それから、血が流れる。
そうに決まっている。
「『火の精霊よ・・・』」
なっ!?
火柱が起きた。
そして。
氷が溶け、そこには。
あの男が立っていた。
しかも。
無傷で。
「美喜子。そう簡単に死ぬ訳無いだろ?」
馬鹿な!?
なんで生きている!?
映像と違う未来。
それが今、初めて起こった。