第6章 10話
私、氷室百合恵は死を見る者。
それはいつから見えていたものなのか。
確か初めて見えたのは私が5歳ぐらいの時だった。
その時はなんの意味も無く、ただ近所に住む人が車に轢かれて動けなくなってしまう。
そんな感じで両親に言った気がする。
両親も突然の娘の言葉に唖然としながらも、子供の言う事として軽く受け流していた。
実際にその状況が起こるまでは。
二度目もそれから半年も経たないうちにまた近所に住む人が火で真っ赤っかになって、残された人が黒くなってしまうと言った。
それもまた、すぐに同じ事が起きた。
さすがに二度続けてこういう事が起こると、両親もただ事では無いと気づく。
うちの子供は死を予言すると。
そう思い始めていた。
だからこそ、三度目の時は両親もその相手に忠告をした。
だが、それも無駄に終わった。
やはり、忠告相手も突然そんな事を言われても本気にしないからだ。
さすがにそれが10回を越える頃には、逆に両親に言われた。
そんなのが見えても、今後は話しちゃ駄目よと。
幼い私は何故駄目なのか、あまり理解していなかったが。
とにかく両親の言う事だから、言う事を聞いておこうと思った。
だが。
人の死はそれからも、ずっと見続けるようになった。
小学生になり、ある程度は人の死というのが理解するようになった頃。
私は一人、それを回避する方法をずっと考えていた。
始めのうちは、その当人に注意を促した。
しかし、両親がそうだったように。
私の言葉を本気にしないで、結果的に見た状況のまま死んでいた。
いくら言っても信じないのなら。
それなら、私が行動をして止めるまで。
そう思い、幾度となく妨害を試みた。
だが。
その全てが、無駄な努力だと知った。
いくらどんなに頑張ったって。
いくら一生懸命になったとしても。
世の中には変えられない事がある。
それを、わずか9歳の時点で知ってしまった。
それからは、人の死をあっさり受け入れた。
いくら努力したって死んでしまうんだ。
それならば、何もしない方がいい。
頑張ってもそれが報われないのならば。
頑張らない方がいい。
何十回と挑戦して駄目なんだ。
これからまた何回挑戦しようと、結果は決まっている。
私が見えた状況のまま。
私は実際にその状況を見る事になる。
ただそれだけの事。
私が暗殺者になったのだって、別に人殺しをしたくてなった訳じゃない。
逆だ。
私が死を招き入れている。
見た相手の映像が死んでいるのなら。
そいつは絶対にその映像のように死んでいる。
だから、人からは殺し屋なんて言われるようになった。
それだけの事。
ディルスに協力しているのも。
別に私はディルスを信用しているからでは無い。
ただあいつの研究は最終的に、人類を使った実験がしたいだけだ。
そして。
あいつの側にいると、何故か死が見える回数が減った。
ただ、それだけだ。
もういい加減、死を見るのも疲れて来た。
だから、あいつの側にいるだけ。
だけど、久しぶりに見てしまった。
人の死を。
ならば。
せめてそれに向き合おう。
はたして、その相手は私の期待に応えてくれるのか?
この私の苦悩を断ち切ってくれるのか?
同じ。
不思議な力を持つ者が。




