第5章 15話
山本さんはロケットの方を見上げる。
一体何をするつもりなのかしら?
「いくぞ『火の精霊よ!!』」
あっ!
そういう事ね!!
「?どういう事?」
美喜子さんが聞いて来る。
「つまりですね。ロケットというのは燃料を噴射させて、その勢いで飛ばしているんです。ですから、その方向を決めるのはその下に付いている噴射口なのですが」
「うんうん」
「山本さんは、その噴射そのものをコントロールするつもりなんです。いくら噴射口が違う向きを向いたとしても噴射自体がずっと真下へと向いていたら」
「あっ、そうか。燃料が爆発するには火がいるもんね」
そういう事。
山本さんは、その火をコントロールするつもりなんだわ。
すると。
ロケットはいつまでも落下する事なく、ずっと上空を飛んでいる。
やがて、その姿は見えなくなってしまった。
「大丈夫ですか?」
「ああ。僕の能力はパワーは弱いけど、その代わり遠距離まで使えるからね。まだいける」
かなり慎重ですわね。
でも、その慎重さのおかげで助かっている部分があるのですが。
「?もう平気なのか?」
レンド様が聞く。
「うん。もう大丈夫だ。大気圏外へと飛ばされた。もう燃料も残ってない。あれは落下する事は無い」
本当に。
山本さんがいてくれて助かりましたわ。
「やった!なんだか分からないけど。ありがとう!!」
それにしても。
氷室という娘。
私達を殺すために、核ミサイルまで使うなんて。
「ねぇ。何かお礼がしたい。核から助けてくれるなんて思っていなかったし」
「そうだな。水晶のドクロがあるって言ってただろ?もし、それが本物ならそれを貰いたいんだが」
「?そんなんでいいの?」
「ああ」
山本さんは、欲とは縁が無いみたいね。
「ま、いつもの事よ」
次回更新は11月14日(月)予定です。