四人での門出
「オレ、なんか緊張してきた……」
「緊張したってもう行くしかねえだろ、ほら背筋伸ばせ」
出発直前の朝、ライリーの背中をユージーンが叩いている。ガルニエからピルキントンまでは牛車で向かい、休憩も含めて四時間の道のりだ。イスラと戸締りや火元の確認をしていると、ハーヴェイさんが牛車の最終点検に来てくれた。何でも、ハーヴェイさんも牛車の作製チームに入ってくれていたらしい。
どこも問題なし、ということで、南区の外門に向かって移動を始める。東区では牛車の移動が難しいため、最初は少し大回りになってしまう。ライリーの緊張をほぐしながら歩いていると、前の方から女の子が「お姉さん!」と走って近寄ってきた。
「お姉さん、あたしのこと覚えてる? ジャガイモのガレット作ってもらったんだよ、あの時はありがとう! お姉さんたちが街の外に行くって聞いたから、お見送りに来たの!」
ソバにアレルギー反応が出たのを、イスラが治療した少女だ。イスラが中腰になって目線を合わせ、「ありがとう、行ってくるわね」と微笑んで話している。あの頃よりも晴れやかな顔で女の子と向き合えるようになったのは、イスラの成長の証だ。
道端に集まった野次馬の中から、「気をつけていって来いよー!」という男の子の声も聞こえる。ライリーの友達で、ユージーンになついている子だ。ライリーは彼に駆け寄って、少し会話をしてから戻ってくる。「帰ってきたら遊ぼうって誘われた」と、ライリーは嬉しそうだ。
先頭を歩いているユージーンを見る。私一人だった店にユージーンが来て、ライリーが来て、イスラが来て、あっという間にここまで来てしまった。一年足らずでこんなことができてしまったのか、と考えるといまいち実感がわかないけど、起きたことを思い起こしてみると濃い時間を過ごしたものだと思う。
イスラが隣に来て、こそこそと耳打ちをしてきた。
「ねぇエレノアちゃん、今朝のお見送りって、デュランド公がいらっしゃるのよね?」
「はい、そうですよ。それがどうかしましたか」
「……エズモンドさまは、いらっしゃらないのかしら。今回のことは、エズモンドさまの管轄でもあるのよね?」
たしかに、レオさんが来るという話は聞いていない。あの人のことだからうきうきで見に来るものと思ってたけど、何か仕事があるのかもしれない。と、思っていた矢先に、「あれぇ、遅かったね?」というレオさんの声がした。やっぱり来たんだ、とその姿を見ると、見送りにしてはいやに大荷物だった。
「おれも一緒に行くわ、駐屯地の兵士に用事があってさぁ。そんなわけでよろしくねぇ」
言葉が出てこない。先に言っておいてくださいよとユージーンが呆れているが、本当にその通りだと思う。
レオさんと話していると、デュランド公が兵を連れて現れた。
「出立の時だな。此度の成否で今後の如何にも影響があるだろう。そなたたちの活躍に期待している」
「えぇ、ご期待以上の活躍をお約束します」
ふ、とデュランド公が笑みを浮かべる。一礼して門の前まで行き、手を上げて見送りの人々と目を合わせる。
「それでは、行ってきます!」
出征のあいさつが、晴れたガルニエの空に響いた。




