大人
店に着いて、レオさんと別れたあと。ユージーンは夕飯を食べていくとのことだったので、ライリーを帰らせる。ユージーンも何かを取りに行ったので、イスラに水汲みを頼むと家の中には私ひとりになった。
いつもよりも量が多いからと、早めに夕飯の準備に取り掛かる。トマト鍋にすれば、使ってしまいたい食材がほとんど入れられるだろうか。キャベツやジャガイモ、タマネギと豚肉。まあ全部トマトに合うだろう。
調味料も出して具材を切ったころ、イスラが戻ってきた。
「お水汲んできたわ。あら、今日はお鍋? いいわね」
「ユージーンも食べますからね、多めに作っておきます。……ところでイスラ、チーズとか食べたくないですか?」
「あら、それじゃあお酒も開けちゃいましょう? 嫌なことは明日に持ち込まないように!」
二人で顔を見合わせて、ふふふと笑いあう。きっとユージーンも、取りに行ったのは十中八九お酒だろう。今日はヤケ酒だ。
「悪い、待たせちまった。ワイン持ってきたぞ」
裏口からユージーンが入ってきて、数本の瓶を掲げてにやりと笑った。イスラが食卓の準備を始める。鍋も完成したことだし、早く食事にしてしまおう。
*
乾杯、と飲み始めてから少し。三人ともお酒が回って、良い感じに盛り上がってきた。ユージーンは楽しそうにどんどんと杯を空にするし、イスラは穏やかにハイペースで飲んでいる。
「エレノアぁ、お前もう杯が空だな? 俺が注いでやるよ、グラス出せ」
「あ、ありがとうございます。イスラもどうぞ」
「あら、いいの? ふふ、ありがとう。このワインとってもおいしいわ、どこで買ったのかしら?」
その問いにユージーンは「東区のマルシェ」と答えた。以前にレーズンを買いに行ったところだ。酒瓶の数が多いと思ったら、そういうことだったのか。押し売りされたのか自分から数を買ったのかは、分からないけど。
どんどんと飲み進める中、ユージーンが口を開いた。
「エレノア、やっぱお前すげえよ。俺一人だったら、絶対あの時に依頼断ってる」
「いえ、まあ、お仕事ですし。あなたたちをバカにされたまま帰るのも嫌でしたから、特別なことは何もしてませんよ」
自己評価が低い! と怒られてしまったが、ユージーン、さてはけっこう酔ってるな。イスラもイスラでにこにこと笑うばかりだし、ちょっとめんどくさい。
「エレノアちゃん、どうしてエレノアちゃんはいつまでも敬語なのかしら? わたし、ちょっと寂しいわぁ」
「あ、それについてはもうほんとに気にしないでもらえると助かります。ただの癖ですから」
その後もユージーンから褒められ、イスラから質問されの繰り返しだった。二人とも楽しく飲めたようだし、明日は気分を切り替えられるだろう。それはそれとして、もう私が酔ってない状態での三人飲みは遠慮したいが。




