敵。
「成程、貴方達の話は分かりました」
「おお!なら早速」
「帰りません、話は以上です、では」
「な、なにィ!!」
ちらりとフードの淵から顔を覗く
元父は庶民の私に断られた事で顔を真っ赤にする
貴族がそんなに顔に出しちゃダメだよ?
元母は当然私が喜んで家に戻ると思っていたのだろう
信じられないと言った様子で目を見開いていた。
なーんで家に戻るなんて思えるんだろうね
物心つく時からずっと気持ち悪いって言われて
家庭教師は3流、食事は最低限、執事も侍女も従者も屋敷の全員が主に習えでまともな対応をしない
真っ白な肌を見て「死体顔」
真っ赤な目を見て「血塗れ」
銀髪を見て「涸れた老婆」
唯一、おばあさまとおじいさまが可愛がってくれたけど
5歳の時に事故で亡くなってしまった。
屋敷に、貴族の家に戻る訳が無い
そんな心の内をこいつらは理解することも無く・・・
「な、何故だ!ルシエル、貴族に戻れるのだぞ!」
「そうよルシエルちゃん、お家に帰ってドレスを作りましょう? 遅れてしまったけどミルフィーちゃんと今年デビューしましょう?」
「帰りません、私の家は城ですから」
立ち上がり話はこれまでと部屋を出ようとするが
「待て!平民が貴族の言葉に逆らえるとでも思うのか!
貴族の家に引き取ってやると言っているのだ、いいから来い!」
「そ、そうよ!」
命令しているのだから従え、と宣う
・・・引き取る、引き取る、ねえ?
「ふう、貴方達は勘違いしています、私は確かに平民の身ではあります、平民が貴族の言葉に逆らう事は許されないでしょう」
「当然だ!」
我が意を得たり、とふんぞり返る元父母、だが・・・
「ですが、今私は王家付きの薬師見習い、ローブの紋章見えませんか?」
そこで彼等はハッとした様子で気付いた
私が今着ている薬師のローブ、深緑色で地味な意匠だけど
歴とした国に仕えている証の制服だ。
夏は涼しく、冬は暖かく、野暮ったいがフードを被れば全身を覆えるので私は気に入っている。
そのローブの心臓の位置には王家の紋章が
背中には国旗が銀糸で刺繍されていた。
王家に命を捧げ、国を背負う
誇りを持って職務に勤しむ誓いだ。
私がロウエル伯爵家の名を未だに持っていたら、家長たる彼に命令され従うしか道は無かっただろう。
でも私は平民、貴族の名が無い以上、私という存在は国の物となる
極端に言えば、王家付きの薬師見習いなので、私は国王陛下と王妃様の所有物。
と、いう解釈が出来なくもない・・・
結構無理矢理だけど、王妃様に呼ばれたあの日にお話をして了承は得ているから問題無い。
ええ、元実家の干渉は必ず来ると思っていましたからね?
恩賞ついでに言ってみたら
「分かりました、ルシエルが望まない養子や縁談の時は遠慮無く使うと良いでしょう。
なんなら信頼出来るお家を紹介しても良いわよ?」
と、王妃様直々の養子の準備さえ有ると言われた
丁重にお断りさせて頂きましたが・・・
つまり彼等が私を養子に、いやこの場合家に戻るから違うのか? まあ細かい事はいいや。
私を養子に迎えたいのならば、王妃様に許可を求めなければならないが
既に私は先回りして王妃様の協力を取り付けているので、許可は絶対に降りない。
そもそも王妃様も暇じゃ無い、近年大した功績を挙げてい訳でもない暗愚な伯爵家になど謁見も叶わないだろう。
どうせ喜んで戻るか権力を傘にどうとでも、なんて思っていたんでしょ?
そんな都合のいい事なんかあるか、ばーかばーか!




