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海賊のひまつぶし  作者: 櫂矢 真衣
海の悪魔と盗まれた真珠
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第24話 おばあちゃんの昔話②

 アワアワしている大男と、ニコニコしているおばあさんの周りに、街の者たちが集まって来た。暇を持て余しているところで人が集まっているのを見つけ、何事だろうとやって来たらしい。

 ジョナサンとデビーは船の上から、クラフトとエルモはおばあさんのすぐ横で話を聞いている。

「なかなかアグレッシブなばあさんだな」

「人は見かけによらないわね」

 ジョナサンとデビーが呟くと、おばあさんは困ったように笑う。

「イヤだわ。若い頃の話です」

 大男はぽかんと口を開けておばあさんをまじまじと見ている。

「えぇー……。初耳なんだけど。おばあちゃん、銃とか使えたんだ」

「あら? 言ってなかったかしら? これでも若い頃は〈骸骨楽団の女主人(デス・コンダクター)〉の異名で通ったアウトローだったんですよ」

「初耳なんだけど!?」

「あなたのおばさんは〈素早い怪物(クリーチャー)〉って呼ばれてましたね。ふふ、懐かしい」

「それも初耳!」

「あらあら、言ってなかったみたいねえ。ごめんね、隠してたわけじゃないんです。話す機会がなくって。まあ、昔の話ですよ。その名を覚えている人だって、もうあんまりいないでしょうし」

 驚きを隠せず、大男と一緒にアワアワしているクラフトが言った。

「申し訳ない。見た目で判断して、差し出がましいことをしてしまいました。もしかして、護衛など必要なかったでしょうか」

「いやいや。あなたの目は確かですよ。昔はどうあれ、今はただの無力な老人です。あなたの申し出は、とても嬉しい。こちらこそごめんなさいね。私のわがままに付き合ってもらってしまって」

 一人、驚きよりも好奇心が勝っているエルモが、目を輝かせながら言った。

「ねえおばあさん。続きはどうなるの? その神様の話、私とっても気になる! 海から神様が流れてくるなんて、変わった教えですね!」

「そうね、お迎えが来る前に全部話してしまわないと。ええと、どこまで話したんだったかしら?」

「おばあさんたちが泥棒を捕まえたところまで聞きました!」

「ああ、そうでしたそうでした」

 ジョナサンは空を見上げた。上空で、ちぎれ雲が流されていくのが見える。

 今日はやけに風が強い。アンの船は、デビーの見立てよりも到着が遅れるかもしれない。




「その泥棒は、頭に銃口を当てられると、観念して抵抗をやめました」

「怖かっただろうなあ」

「私だって怖かったんですから、おあいこです。でもね、その泥棒、「御神体を返すことはできない」って言うんです」

「ええ? なんでさ。捕まって反省して、盗んだものを返して終わりなんじゃないの?」

「それで済んだら良かったんですけどね。向こうには向こうの事情がありまして」

「事情?」

「その泥棒、一人きりのコソ泥じゃなくて、少し離れたところにあった宗教国家の兵隊だったんです。その宗教では海にまつわる不思議なものを集めているそうでね、この御神体泥棒もその一端と言うわけです。盗んだものは、すべて国の宝物庫へ集められていて、この村の御神体もすでにそこにある、と言っていました」

「へー。さっきお姉さんも言ったけど、遠くの方には変わった教えがあるんだね」

「ええと、なんて言ってたかしら、あの人……。ああ、そうそう。「我らはみな海よりやってきた命。遠い先祖が罪を犯し、我らは母なる海を追放された。海へ帰るための方法を探さなければならない」って話でした。それで、海に願いを届けてくれる御神体に目をつけたわけですね」

「ふーん。でも泥棒は良くないと思うな」

「ええ、そうですね。私もそう言いました。でも、泥棒は「これは使命だから」の一点張りでね。貴様らにもいずれ、我々が正しかったとわかる日が来る、とか言ってたかしら」

「わあ、悪い。盗人猛々しい」

「私、若かったこともあって、ちょっとムキになっちゃって。ちょっと脅すつもりで「そんなに海に帰りたいなら、死体は海に沈めてあげましょうか?」って言ったんです」

「お、おぉぅ……」

「私は、兵隊さんに今ここで死ぬか、御神体を返すか選ぶように迫りました」

「う、うん。それで、その兵隊さんはどうしたの?」

「そしたら、その兵隊さんは「国王陛下万歳! デビー・ジョーンズ万歳!」って叫んで、舌を噛んで死んじゃったんです」

「ええっ!?」

「そのあと、どうしたんだったかしら……。ええと、そうそう。朝を待って、村の人たちに事情を話したんです。隣の国の王様が、この泥棒を遣わしたようです、って」

「怒ったでしょ、村の人たち」

「ええ、すごく怒ってましたとも。「あんた、なんてことしてくれたんだ。あそこの国がちょっとその気になれば、こんな村簡単に捻り潰されてしまう」って」

「えっ? おばあちゃんが怒られたの?」

「そうですよ」

「納得いかなーい!」

「ええ、納得いきません。ですから私たちは、頭をひねりました。なんとか、村に御神体が戻り、隣の国とこの村が揉めずに済む方法はないか、って。一番簡単なのは双方皆殺しなんですけどね、それじゃあんまりです」

「わぁ……。ボク、おばあちゃんのことなにも知らなかったみたいだ」

「うふふ、そんなことないでしょう? あなたと過ごした老後はとても幸せでしたよ」

「……そっか。良かった。……それで、どうやって解決したの?」

「……あら? どこまで話したんだったかしら?」

「村の人に怒られたところまでだよ」

「ああ、そうそう。村中が大騒ぎで、どうしようどうしようって言ってた、そんな時でした。件の宗教国家から、村長あてに書状が届きます」

「ええ、嫌な予感。なんて書いてあったの?」

「うーんとねぇ……、いろいろ書いてあったけど、要するに「逆らえば殺す」って内容でしたね。送り出した泥棒が殺されたのがわかったから、その村を国家の敵だと定めたようでした」

「うわ、勝手な話だなあ」

「人間なんてね、大体の人はこんな感じですよ。私たちは、何としてもこの身勝手な輩を野放しにしておくのは嫌でした。色々考えた末に、私たちは作戦を一つ立てました。商人として売り歩いていた品物を、うまいこと利用できないかと考えたのです」

「ああ、機械を売ってたんだってね。どんな機械だったの?」

「ええと、どこにやったかしら……。ああ、これこれ。ここに現物があるから、実際に見せてあげましょう。これ、今はだいぶ小型になりましたけど、昔は抱えるほど大きかったんですよ」


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