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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百九十九 SANA編 「だけど僕たちの手は」

七月五日。火曜日。曇り。




今日から金曜日まで、沙奈子たちは期末考査でお昼には帰ってくる。だから篠原しのはらさんも、金曜日までは毎日『人生部の活動』に参加できるそうだ。


ところで、一昨日から続いていた通信障害がようやく回復したらしい。波多野さんも田上たのうえさんも、普通に電話が通じるようになったって。


「でも、またこういうことがあるかもしれませんから、他の連絡手段を考えておかなきゃですね」


「私たちは家にWi-Fiを引いてましたし普段からアプリの方でやり取りしてたのもあって狼狽えずに済みましたけど、大学の友達の中には、『世界の終わりが来た』みたいな表情かおになってた子もいます」


って話だった。


確かに、『SANA』のオフィスにいる間はWi-Fiを通じてビデオ通話を使うから、そこでやり取りすればよかったし。


ところで、世の中ではまた、幼い子供が犠牲になる事件や事故がいくつもあった。何時間も一人で放っておかれた子が亡くなってたり、乗用玩具で遊んでて亡くなったりって……


遊んでての事故の場合はそれこそ気を付けるしかない、本当にたまたまそうなっただけの不幸な事故なのかもしれないけど、一人で放っておかれて亡くなった子の場合は、たまらなく痛ましいと思ってしまう。


さらには、生まれたばかりの子を捨てたっていう事件もあって、


「僕の周りで『育てられない』って人がいたら、引き取っても構わないのに……」


つくづくそう思ってしまった。沙奈子と玲緒奈がいるけど、あと一人や二人くらいならいけそうだっていう実感もあるんだ。


そして山仁やまひとさんも、


「私もそう思っています」


ということだった。むしろ山仁さんの場合は実際に千早ちはやちゃんを現在進行形で保護してるし、波多野さんも一時期保護してたしね。その感じでできればと思うんだ。


それに僕の場合も、沙奈子との経験があるしさ。


加えて、鷲崎わしざきさんも結人ゆうとくんと一緒に暮らした経験がある。


こうしてみると、僕たちの周りではそういうのが少なくないんだな。むしろそうだからこうして集まっているっていうのもありそうだ。絵里奈としても、


「正直、不安はありますけど、沙奈子ちゃんや千早ちゃんや結人くんを見てると、大丈夫そうな気はします」


と言ってくれてる。それがすごく頼もしい。


だけど僕たちの手は小さくて短くて、ニュースになった事例の子たちには届かなかった。それも事実なんだ。その事実もわきまえて、自分にできる以上のことを無理にやろうとしたり、やりたくてもできていないことを過剰に悔んだりしないようにしなくちゃとも思ってる。それよりも、沙奈子や千早ちゃんや結人くんや一真かずまくんや琴美ことみちゃんのことをちゃんと見てあげようって思うんだ。



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