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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百八十 SANA編 「口を出してくる人」

六月十六日。木曜日。曇り。




『SANA』の新しい本社は、順調に機能してるそうだ。品物の納入も発送も、うちの一階でやってた時とは段違いにスムーズだって。


「いや~、これならもっと早くこうしてればよかったですな」


ビデオ通話越しに玲那がそう口にする。


「そうだね。でも、僕はここでみんなが仕事をしてるのを感じてるだけでも楽しかったよ」


正直な気持ちも告げさせてもらった。それに対しては、


「まあねえ。そっちでの良さも確かにあったと思う。気楽にできてた。だけど同時に、仕事としては緊張感が足りなかったかなって気がするのも事実なんだ」


「なるほどね」


玲那の言うことももっともだと思う。気楽にできてた分、だらけてた面もなかったわけじゃないのは否定しない。今まではそこまで忙しくなかったから許されてた部分もある気はする。だけどその上で、楽しかった記憶も否定する必要はないと思うんだ。


そして沙奈子はまだ、本社の方には出勤してない。あくまでこっちでドレスを作る作業に集中してもらう。先日のようにいきなり押し掛けてきて沙奈子に面会を求めるような人がいても怖いしね。今の沙奈子にはまだそこまではさせられない。一真かずまくんと親しくなれただけでも大したものだと思える段階だし。


徐々に徐々に慣らしていってその上でいつかは、でいいと思う。世の中にはその部分を一足飛びに結果を得ようとしてかえって状況を悪くした例がものすごく多い気がするんだよ。


『素人の生兵法』が問題を悪化させたことが、ね。


僕たちもあくまで素人だけど、でも同時に、慎重に慎重に、なにか不測の事態があっても対処できるように無謀なことはしない。それで手間と時間を費やすことになるのはあくまで僕たちなんだから、赤の他人にとやかく言われるようなことじゃないと思う。


本当に世の中には、自分じゃ責任も取らないのに口だけは出してくる人が多いよね。そういう『口を出してくる人』が疎まれるのは、まさにそこなんだろうなって実感してる。


『口は出すけど結果には責任を負わない』


からなんだ。僕はそういうのは好ましくないと思ってる。口を出されるのが嫌だから、自分も口は出さないようにしなくちゃって。『意見』は述べるとしても、押し付けるのはしたくない。


これは、沙奈子に対してもそう。


僕たちのやり方をまどろっこしく感じる人もいるだろうけど、それで沙奈子が自立できなかったとしても僕たちはその結果と向き合う義務と責任があるけど、赤の他人にはそれがないから。だからこそ口出しされてもそれを聞き入れるつもりもないんだ。



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