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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百七十九 SANA編 「そこをはき違えるから」

六月十五日。水曜日。曇り。




昨日の個人懇談は僕が行ったから、次の機会には絵里奈が行くことになってる。僕と絵里奈は、二人で沙奈子や玲緒奈れおなを育てていくんだ。『どっちが』じゃなく、『二人で』ね。


それこそが、親として沙奈子や玲緒奈、そして玲那のことも迎えた僕たちが果たすべき責任そのものだと思うし、そうしたいと思うからこそ絵里奈と結婚もした。


その絵里奈は、今日も『SANA』に出勤してる。リモートワークもできる体制にしていく予定ではあるけど、今はまだ『本社』でやらなくちゃいけないことがあれこれあるからね。オフィスのデコレーションについても、まだまだ詰めていってる最中だって。


だから今日も、僕が玲緒奈と一緒に散歩に行く。そして、今は『人生部の部室』になった一階の出入り口の前を通って歩き出した時、『SANA』の看板にちらりと目をやった。今も看板はそのままだ。


『ここが出発点だから』


という意味のモニュメント的な意義も込めて敢えてそうしたんだ。元々、『ちょっとおしゃれな表札』みたいにデザインしてもらったそれだから、そんなに目立たないしね。


それを確認して歩き出す。


「ふんす!、ふんす!」


玲緒奈は鼻息荒くぐいぐいと進む。前へ、前へと。恐れることなく怖じることなく。そんな無鉄砲ささえ感じる彼女をちゃんと守るために、僕は『子供用ハーネス』を手にしてた。紐の部分は僕の腕に巻き付けて玲緒奈の手を握ってるから、一見しただけじゃ子供用ハーネスを使ってるとは分からないかもしれない。でも、自分がこうして使ってみたからこそ、『これが本来の使い方なんだな』って実感した。


親だって人間だからほんの一瞬さえ子供から目を離さずにいられるわけじゃないし、ふと気を抜いてしまう瞬間だってあると思う。と言うか、僕にもそういう時はある。だからこその『安全策』なんだよ。


『子供を見てなくても大丈夫なように使うもの』


じゃないはずなんだ。


その上で、気になるものを見付けたら急に走り出しそうになる玲那の手もしっかりと掴んでおく。自動車のシートベルトと同じで、『どんなに気を付けていても事故が起こる場合もある』のに備えて使うものだから。


『シートベルトを着けてるから無謀運転しても大丈夫』


ということじゃないんだ。そこをはき違えるからおかしなことになる。


自分が大人だからこそ、そういう姿勢を沙奈子や玲緒奈に見せていかなきゃいけない。僕のそういう姿勢を見ることで、沙奈子も玲緒奈もいろんなことを学べるんだと感じてる。


『親の役目』として。



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