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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百七十八 SANA編 「打ち解ける努力を」

六月十四日。火曜日。雨。




今日は、沙奈子が通う高校で、保護者を交えた個人懇談がある。でも、『新型コロナウイルス感染症』の影響もあって、希望者だけだった。だけど僕は敢えてそれを希望して、玲緒奈れおなは絵里奈に任せて学校に行く。


「沙奈子さんは成績も学習態度も非常に優秀で、申し分ありません。ただ……」


「ただ……?」


「もう少し、他の生徒に打ち解ける努力をしていただいた方が本人のためにもなるのではないかと……」


少し言いにくそうにはしながらも、担任はそう口にした。


正直、その手の、


『誰とでも仲良くした方がいい』


という考え方そのものが実際には数多くの問題を引き起こしているという実感しか、僕にはないかな。


『こっちが仲良くしてやろうとしてるのに!』


なんて理屈でイジメが行われている事例というのもあるみたいだし。


だから、


「そうかもしれませんね。でも、この子はちゃんと友達もいますから、その辺りは心配していません」


きっぱりと応えさせてもらった。敢えて担任の考えに噛み付いたりはせずに。確かに、『誰とでも仲良くした方が好ましい』のは一般論としてはあるとしても、それ自体が間違ってるわけじゃないとしても、現に、『仲良くしたいとは思えない相手』というのは間違いなくいるし、自分が『仲良くしよう』というのを押し付けた相手の態度が気に入らなかったらイジメとかをする人もいるよね?。『誰とでも仲良く』なんてできてないよね?。『気に入らない相手はイジメていい』って考えてるんだよね?。


だったらやっぱり、現実問題として『誰とでも仲良く』なんてただの綺麗事の理念でしかないのも事実だと思う。だったら最初から仲良くなれそうにない相手とは『社交辞令』で済ませておくくらいがちょうどいいんじゃないかな。


沙奈子は、自分からは誰かを攻撃しようとはしないし、面と向かって否定的なことも口にしない。それでいて必要なことは話せるし、それで何も問題ないと思うよ?。


友達だって、千早ちはやちゃん、大希ひろきくん、結人ゆうとくんがいるし、一真かずまくんと琴美ことみちゃんとだって上手くやれてるし、篠原優佳しのはらゆうかさんとだって、今のところは特に問題もなさそうだし。


ほとんど家族同然の同年代の親しい相手がいるだけでも十分じゃないかな。同年代以外にも、星谷ひかりたにさん、イチコさん、波多野さん、田上たのうえさんだっているからね。孤立とか孤独を感じる必要もまったくない。


世の中には、自分の家にさえ居場所がなくて、結果、『友達とも言えないようなただの顔見知り』に依存しなきゃいられない人だっているよね?。表面的には仲良くしてるように見えて、実はひたすらストレスを溜め込んでるだけの関係を続けてる人とかも。


そんなの『健全な人間関係』って言えるのかな?。


とは言っても、担任の話で引っ掛かったのはその部分だけだったし、後は特に問題もなさそうだったから、それですんなりと終わったんだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] この問題は難しいですね 私はこれをユーザー・インターフェースと読んでいます。 実際には優秀な技術を持っているにも関わらず、他人との意思疎通が苦手なために、不遇な目にあっている人はたくさんい…
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