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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百七十二 SANA編 「篠原優佳さん」

六月八日。水曜日。晴れ。




「おじゃまします……」


今日、千早ちはやちゃんの友達の『篠原優佳しのはらゆうか』さんが『人生部に入部』した。なんだかおどおどした感じで、視線がすごく泳いでて、見るからに、


『人間関係とか苦手そうだ』


という印象の子だった。僕のところに来て少しだけ慣れ始めた頃の沙奈子に何となく似てる気がする。今の沙奈子はすごく落ち着いてて、学校では『アイスドール』とか『こおりひめ』とか陰で呼ばれてるくらいには冷淡な印象もある様子だったりもするけど。


琴美ことみちゃんとも違う感じで上手く他者と関われないタイプだろうなって直感する。


「ホントに学校の部室みたいな感じで気楽にしててくれていいからね」


そう声を掛ける僕の腕の中で、玲緒奈れおなが、


「ぶっ!。ぶあっ!?」


『誰だお前は!?』って言いたげに少し警戒してる様子だった。


「ごめんね、ちょっと人見知りが始まってるみたいなんだ」


僕が言うと、篠原優佳さんは、


「あ、いえ!。大丈夫…、です。ごめんなさい!」


なんだかしどろもどろに。すると千早ちはやちゃんが、


「落ち着け、優佳。取って食われたりしないよ」


笑顔で声を掛ける。


「あ…!、あ…!。ごめんなさい……!」


やっぱりしどろもどろになる篠原さんを、沙奈子も大希ひろきくんも結人ゆうとくんも一真かずまくんも琴美ことみちゃんも、嗤ったり馬鹿にしたりはしなかった。その様子に安心する。


こうやって上手くできない人のことを嘲笑って見下すことに何の意味があるのか僕には分からない。ただそれをする当人が、ちょっとだけ優越感を覚えられるってだけの意味しかないんじゃないの?。


そしてそんなことで優越感を覚えてそれで何が得られるって言うんだろうね。自分の価値が上がるわけでもないのに。それどころか、そんなことをして誰かから不興を買えば自分にとって不利益になるだけなのにね。僕だって、千早ちゃんや大希くんや結人くんや一真くんや琴美ちゃんがそんなことをしようとしないからこうして自宅を開放できてるだけで、そうじゃなかったら家に入れたいとは思わないよ。


人間である以上はついついそれをしてしまうことがあるとしても、自分の振る舞いを正当化したりしない子たちだって分かる。


『人生部』は、自分以外の誰かをどうやって貶めて嘲笑って蔑んで虐げて憂さを晴らすか?っていうことを学ぶ活動じゃない。そんなことをして敵を作っていくための活動じゃない。自分にとって生き易い環境をいかに作っていくかっていうのを実地で学んでいく場だと思ってる。その一環として、仕事やそれに連なる諸々をシミュレーションしていくためのものなんだよ。


って、思ってるんだ。そしてそれを千早ちゃんは『部長』として取り仕切ってくれてる。


そこに、篠原優佳さんは加わるわけだね。これが彼女にとってプラスになっていってくれたらいいとすごく思う。



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