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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百五十三 SANA編 「ちょっと怖いと」

五月二十日。金曜日。曇り。




『SANA』の本社機能の移転については、どうやら実施の方向で固まりそうだった。山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーともそれを前提に協議が進んで。


しかも星谷ひかりたにさんが見繕ってくれたテナントビルは、一階が電気店で裏に荷物搬入口があって、そこも搬入や出荷に利用できるらしい。今のうちの事務所だとトラックは前の道路に止めるしかなくて、いろいろ気を遣ってたからね。それがなくなるだけでもかなり気分は楽になりそうだ。


だけど今日、


「すいません!。私、『SANA』のドレスの大ファンなんです!。見学させてもらっていいですか!?」


二階にまで響いてくる声でそう言って事務所に入ってきた若い女性がいた。その人は、岐阜県からわざわざ新幹線で来たそうで、しかも事前に連絡もなしでいきなり。


「ああ、すいません。今、新型コロナの件で見学は実施していないんです」


田上たのうえさんがそう応対してるのが聞こえてきて、


「ええ~!、そんなあ……、せっかく来たのに~!」


と相手も声を上げたのが聞こえて。そこで絵里奈が一階に下りていって、


「それはそれは、遠路はるばるようこそおいでくださいました。ただいま、係の者が申し上げた通り、見学は実施しておりませんでしたので何も準備できておりませんが、少しだけならご覧になってくださって結構です」


そう改めて応対した。無下にするのも憚られるからということだけど、咄嗟によくできたと思う。それはまあ、相手が『うちのドレスの大ファン』ということもあってのことだろうけど。


とは言え、まったく予定してなかった来訪に、事務所の中もそれっぽい感じにデコレートしてなくて、


「よかったあ!」


と喜んでくれたすぐ後で、


「でも。思ったより地味なんですね」


遠慮のない発言も。


確かに、ドールのドレスメーカーと言いながら別に事務所にドールをいくつも並べてるわけでもなくて、ただ事務机に座って事務処理して後は商品の発送の準備をしてっていうだけの場所だから、言われないと『ドールのドレスのメーカー』って印象はないと思う。


こういう意味でも、受付とか応接室にはドールやドレスを陳列してそれらしくしておく必要はあるのかもね。


さらにその女性は、


「今日は『SANA』さんにも会いたかったんですけど、会えますか!?」


って言ってきて。ずっと二階にまで声が届いてきてて、何とも物怖じしない人だなあ……。


ただ、これに対しては、


「彼女は本日は出勤しておりません。私、『ERINA』でよろしければお話をお伺いします」


敢えてそう応えた。さすがに沙奈子に会わせるのはちょっと怖いと感じたのは絵里奈も同じだったんだろうな。これに女性は、


「あ~っ!。うっそぉ~!」


だって。しかも、


「じゃあ、いいや。『SANA』さんいないなら。帰ります」


と言って、事務所を出て行ってしまったのだった。



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