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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百五十二 SANA編 「似たようなもの」

五月十九日。木曜日。晴れ。




千早ちはやちゃんの『新しい友達』については、さすがに三階に七人が集まるというのはなかなか大変だから、『SANA』の本社機能が移転されることになって一階が空いて『人生部の部室』ってことにできたら連れてきていいって話に落ち着いた。


これは僕の方が言い出したことじゃなくて、千早ちゃん自身がそう言ったんだ。彼女もここまでの間で様々なことを考えられるようになって、『そうした方がいい』っていう判断ができるようになったってことなんだろうなって気がする。


そんな千早ちゃんは、今日は沙奈子たちと一緒に帰ってきた。


「いや~、あの子、塾とか習い事、いくつも掛け持ちしててさ。今日はバレエとピアノがあるんだって。昨日は五時から塾だったし、それまでの間だけ一緒にいられたんですよね」


という話だった。しかも、


「本人は本当は、バレエもピアノも水泳も華道もぜんぜん興味がなくて嫌々行ってるそうです。だけど、親が行けっていうから仕方なく。なんか、あれもこれもって塾とか習い事させられるだけの経済的余裕があってもそういうの、嬉しくないだろうなあ……」


って。


そうだね。それがいつか役に立つこともあるのかもしれないとしても、嫌々やらされてることがどこでどう役に立つのかは、まったく分からない。役に立つこともあるかもしれないし、役に立たないこともあるかもしれない。他所の家のことだから僕たちは口出ししないようにと思いつつ、千早ちゃんがその子のストレス緩和に協力したいって言うのなら、それもいいと思う。


一真かずまんとこと正反対ってわけか」


結人ゆうとくんが口にすると、でも一真くんは、


「いや、どうだろう……。『親の都合に振り回されてる』って意味じゃ、似たようなものって気がする……」


とも口にした。


確かに。そして、経済的に非常に大変な思いをさせられてる一真くんが、経済的に裕福な家の子がそういう想いをしてることに対して理解を示すというのがすごいと思えた。普通なら、


『金があるのになに贅沢なこと言ってんだ!』


的な反応をしてもおかしくなさそうなのに、一真くんはそう思えるんだなって部分がね。だから沙奈子も、うちに招こうと思えたんだって気がする。一真くんがそういう子だから。


他者の悪意に対して敏感な沙奈子ならではのことなのかもしれないと感じつつ、なんだかそのこと自体が頼もしくも思えた。彼女が今のこの社会で生きていくにあたって、『自分にとって好ましくない人』との距離感や接し方について掴みつつある気がするんだ。


『自分にとって好ましくない人』であっても折り合いを付けていかなきゃいけないし、同時に、相手が『自分にとって好ましいかそうでないか』を見極めなきゃいけないから。



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