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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百五十一 SANA編 「大丈夫って思える子」

五月十八日。水曜日。晴れ。




今日、千早ちはやちゃんがうちに来なかった。一真かずまくんと琴美ことみちゃんは来たんだけど。


「千早は今日、他に友達に会うって……」


沙奈子が事情を教えてくれて。どうやら昨日言ってた友達に会うらしい。そういうこともあるよね。


ただ、千早ちゃんがいないと、部屋の空気がいつもと違うのは分かった。大希ひろきくんが仕切ろうとしてくれるんだけど、やっぱり千早ちゃんとは違ってて、何となく『静か』なんだ。


やっぱり、彼女がムードメーカーになってたんだなっていう実感がある。


それでも、課題と自主勉強は欠かさない。一真くんと琴美ちゃんの勉強については沙奈子と大希くんがいれば何とかなるし。


だけど、『人生部としての活動』にはさすがに活気がなさそうだなって感じた。


と、夕方五時ごろになって、一真くんと琴美ちゃんが帰ったのと入れ違いになるようにして、千早ちゃんが、


「ただいま~」


って帰ってきた。そのまま三階に上がって、


「いや~、やっぱここが落ち着くわ~」


だって。その上で、


「今日さ、昨日言ってた子のうちに誘われんだけどさ、それが笑っちゃうくらい大きな家で、なんか、お父さんが会社の社長なんだって。でも、家には誰もいなくてさ。お父さんは仕事仕事で帰ってこなくて、お母さんはお母さんで人付き合いがあるとかで帰ってこないって。で、その子の部屋も、そこだけで普通の家一軒分くらいありそうな広さでさ。私んちなんか三つくらい入りそうで。テレビは百インチのが壁にドーンと埋まっててそれでゲームしたんだけど、さすがの迫力だよね。


けどさあ、な~んか、寂しい家だったよね。あのだだっぴろい部屋に一人でずっといてて、友達もいなくてさ。それで家族もほとんど家にいなくてさ。お金には困ってなさそうだったけど、私はああいう家は好きじゃないな~って正直思った」


と語って。すると大希くんが、


「そうだね。お金だけあったら幸せって人だったらそれでも楽しいんだろうけど」


しみじみ応える。そこに結人ゆうとくんも、


「まあな……。俺も今は分かるよ……」


いつもの仏頂面で応えて、沙奈子は、


「……」


ドールのドレスを作りながら話に耳を傾けてて。


そうして千早ちゃんは、ビデオ通話越しに僕に向かって、


「山下さん、もし、『SANA』の事務所が移転して一階が空いて人生部の部室にできたら、その子も入部させていいですか?」


って、遠慮がちに聞いてきた。それに対して僕は、


「ああ、千早ちゃんが大丈夫って思える子ならいいよ」


と応えてた。そうだ。これまでにも千早ちゃんにはたくさんの友達ができてたみたいだけど、うちに連れてくるってことがなかったんだ。その千早ちゃんがってことは、ね。



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