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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百五十 SANA編 「高校デビュー」

五月十七日。火曜日。晴れ。




「なんかさ。『高校デビュー』図ろうとしてスベっちゃった子がいるみたいなんだよね」


今日、学校から帰ってきて三階で集まってた千早ちはやちゃんが、ビデオ通話越しにそんなことを口にした。僕にじゃなくて沙奈子たちに向けて話し出したのが聞こえてきたんだ。


「高校デビュー?」


大希ひろきくんが聞き返すと、


「そうなんだ。小学校中学校とおとなしくしてた子が、高校進学を機に自分を変えようと思ったらしいんだけど、HRの時に先生が部活の話をしたら、『このクラス、オタクばっかじゃん!』っていきなり口にして、クラスの空気が一瞬、凍ったんだよ。いや、確かにオタクっぽい子は多いけど、陽キャっぽい子も割とアイドルとかの話をディープにしてたりするからオタク気質なのかもだけど、だからって『オタクばっかじゃん!』っていきなり口にする?。とは、さすがに私も思ったよ。まあ、私もゲーム好きだしアニメも好きだけどさ」


千早ちゃんが事情を話した。その上で、


「それを言った子、割と誰にも馴れ馴れしく話しかけてくる子でさ。だけど言ってることがちょっと上滑りしてんな~とは、私も思ったんだ。で、今回のことで思いっ切り滑ったのが自分でも分かったのか、そっから急に黙り込んじゃって。それで私の方から話し掛けてみたわけ。『さすがにさっきのはびっくりしたよ』ってさ。そしたらその子、泣き出しちゃって」


とも。それに対して結人ゆうとくんが、


「トドメ刺してんじゃねーか」


って口にしたけど、千早ちゃんは、


「だよね~」


と苦笑いしただけで受け流して、さらに、


「でもさ、『ひょっとして、高校デビューしようと思った?』って尋ねたら、黙って頷いて。それで私も、『そっかあ、そういうの、難しいよね』って言ったら余計に泣いちゃってさ。でも、言ったんだよ。『頑張ってそれで失敗したんなら、それも経験じゃん。大丈夫だよ。私はそういうの、アリだと思う』言いながら傍にいたんだよね。クラスの他の子らは私がイジメてんのかってちょっと思ったみたいだけど、別にイジメてるわけじゃないし、普通にちゃんと話を聞いてあげたいなって思っただけだし、そのままにしてたんだ。そしたらその子、なんか私に懐いちゃってさ。で、友達ってことになっちゃった」


だって。


そういうことをさらっと言ってのける彼女は、体だけじゃなく精神的にも成長したって改めて実感させられる。相手の気持ちとちゃんと向き合おうとしてくれてるんだ。


元々、彼女自身が持ってた素養みたいなのが開花したのかなってすごく思う。



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