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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百四十九 SANA編 「がんばえ!」

五月十六日。月曜日。曇り。




『企業としての体裁』


それが大事だというのは僕も感じる。やっぱりある程度はちゃんと体裁を整えてないと、企業としての信頼度にも影響してくるだろうし。


「そうですね。今後、融資を受けるにあたってもやはり印象は大事だと思います。私個人の融資だけではさらなる事業拡大に対応できませんから」


星谷ひかりたにさんも言ってた。彼女の言うとおり、今までの『SANA』は、ほぼすべて星谷さん個人からの融資で成り立ってたんだ。だけどさすがにそれも限界があるし、銀行からの融資も必要になってくるとしたら、今のこの『本社』だと、やっぱり印象はよくないだろうしね。あくまで個人の店舗ということならまだしも。


それを普通のテナント事務所を使うことになれば、『普通の企業』にも見えるんじゃないかな。


こうして、本社機能の移転に向けて山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーとも協議が必要になったから、絵里奈が実際に出向くことになった。


だからママが出掛ける用意をしてると、


「ママっ!。おでかえ!?」


玲緒奈れおながウォール・リビングの壁に突撃しながら声を上げた。そんな彼女に、


「うん、ごめんね。ママはこれからお仕事なんだ。夕方までには帰ってくると思うけど、パパと一緒に待っててね」


絵里奈は、床に膝をついて視線を合わせて丁寧に説明する。まだ一歳半を過ぎただけの赤ん坊同然の子供だからって軽んじたりしない。ちゃんと一人の人間として接する。すると玲緒奈は、


「ぶあーっ!!。ママっ!。ぶああーっ!!」


謎の雄叫びを上げてウォール・リビングの壁をバンバンと叩いた。ただ、不機嫌になってるのかというと、必ずしもそういう感じでもなさそうだ。そんな玲緒奈の様子を、絵里奈は、


「うん、ママ、お仕事頑張ってくるね♡」


『ママ、頑張って』と励ましてくれてるんだろうと解釈して、そう応えた。それに対して玲緒奈が、


「がんばえ!」


って。


ああ……、本当に『頑張れ』って言ってくれてたんだな……。


それが伝わって、胸がふっとなる。徐々に玲緒奈も、『自分の意思』や『自分の意図』や『自分の気持ち』を相手にちゃんと伝わる形で伝えられるようになりつつあるんだって実感できて。


そうだ。それが大事なんだ。今はまだ僕たち家族でないと伝わらないとしても、経験を積んで上手にしゃべれるようになれば、『自分の意思』や『自分の意図』や『自分の気持ち』を伝えられるようになって、コミュニケーションが取れるようになると思う。


しかも玲緒奈は、相手のことをちゃんと認めてくれてるからね。



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