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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百四十 SANA編 「上見て暮らすな」

五月七日。土曜日。晴れ。




そうだよ。どんなに恵まれた国に生まれたって、国や自治体と子供の間にいるのは『親』なんだ。その『親』が、国や自治体からの支援を台無しにしてることもあるっていう現実を、『国や自治体からの支援を自分たちの遊興費に使ってしまう親もいる』っていう現実を、どうして認めないの?。


『お菓子も満足に買えない』


『服も満足に買えない』


『自転車も買ってもらえない』


『小学二年生までケーキさえ食べた記憶がない』


そんな子供が現にいるんだよ?。これが、『恵まれた国に生まれた子供の姿』なの?。


それだけじゃない。沙奈子だって、小学校の二年生から三年生の間、学校にすら通わせてもらえなかった。義務教育さえ受けられなかった。これが、『恵まれない国に生まれた恵まれない子供たち』よりも恵まれてると言えるの?。


『お菓子も満足に買えない』『服も満足に買えない』『自転車も買ってもらえない』『小学二年生までケーキさえ食べた記憶がない』『義務教育を受けさせてもらえない』子供がいるという現実と、どうして向き合おうとしないの?。


『国ガチャに当たったんだから甘えるな!』


なんて、典型的な、


『上見て暮らすな。下見て暮らせ』


っていう理屈だよね?。『恵まれた国』がそんな考えで、それで本当に『恵まれた国』って言えるの?。ずいぶんとさもしい考え方だと思うけどな。沙奈子や玲緒奈れおなに対して、親として大人として僕はそんなこと恥ずかしくて言えないよ。


なんてことを僕が考えている一方で、沙奈子たちは、今日も学校に行ってる。第一土曜日だから土曜授業があるんだ。だから琴美ことみちゃんは朝からうちに来て、沙奈子の机の席に座ってゲームをしてる。これは別に、国や自治体が助けてくれたからできてることじゃない。僕たちがあくまで個人的に手を貸してるだけだ。たまたま一真かずまくんが沙奈子の同級生になって、沙奈子がかつての自分と同じような境遇だって気付いてくれたことが切っ掛けでこうなっただけなんだ。


たとえ『恵まれない国』であってもそれなりに普通の暮らしができてる人はいて、それで助けてもらえてる子がいたりはしないの?。


とにかく僕は、『国ガチャに当たったんだから甘えるな!』とか言って『上見て暮らすな。下見て暮らせ』を押し付けるようなさもしい人間でいたくはないよ。もちろん立派な人間でいられてるとも思わないけど、少なくともそこまでにはなりたくない。


すごく楽しそうに毎日を過ごしてる玲緒奈と、無表情なまま淡々とゲームをしてる琴美ちゃんを見て、改めてそう思った。



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