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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百三十一 SANA編 「そうしたら会社が」

四月二十八日。木曜日。晴れ。




高校に通い始めてから二十日。沙奈子と話をしてみる。


「どうかな。学校は?」


「うん……。大丈夫……」


彼女が穏やかな様子で『大丈夫』と口にする時は本当に大丈夫な時だ。そしてその『大丈夫』というのは、


『これといって大きな問題はない』


という意味。彼女にとって些細なことであれば、多少、誰かに嫌なことを言われたり、好ましくない態度を取られたとしても、気にしてないということでもある。


この子をずっと見てきた僕にはそれが分かる。加えて、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんが見てくれてるからね。何か問題があればそちらからも情報が入るし。


その上で、沙奈子の話に耳を傾ける。


一真かずまくん、今日は少し怒ってるみたいだった……」


「怒ってる……?」


「うん。一真くんのお父さんが琴美ことみちゃんに酷いことを言ったって……」


「酷いこと……」


「……『働かない奴には食べさせない』みたいなこと、言ったって……」


「そうなんだ……」


「私はお父さんにそんなこと言われたことないのに……」


「当たり前だよ。自分の子供を守るのは人間の親の義務だから。大人と同じように働くのは、大人になってからでいいんだ。沙奈子が作ってくれたドールのドレスを『SANA』で売ってるのも、沙奈子がそれをしたいと思ってるならしてくれたらいいっていうだけなんだ。もし、辞めたいと思ったら辞めてくれてもいいよ。ネットとかで嫌なことを言ってくる人もいるから、それでもうドレスを作るのは嫌だって思ったら辞めてくれていい」


「でも、そうしたら会社が潰れちゃう……」


「いいんだ。今の沙奈子に無理をさせるような会社なら、そんなのは要らない。沙奈子が作りたいものを作れることが『SANA』の存在意義だよ。そうじゃなきゃ要らないんだ」


そこに、絵里奈も口を開く。


「そうだよ。沙奈子ちゃん。私は沙奈子ちゃんのドレスをたくさんの人に届けたいと思ったから『SANA』の設立に賛同したんだ。沙奈子ちゃんがもうドレスを作るのは嫌ってなったら、それでいい。私が作るドレスだけじゃ大して人気なくても、『作品を商品にする』ってそういうものだから。作品を作る人の気持ちがあって、そしてそれを欲しいと思う人がいて、その両方があって成立するものだから。そのどちらが欠けても成立しないんだよ」


さらに玲那も、


「そうそう。特に今は、沙奈子ちゃんはまだ未成年だから。本当は私たち大人が守ってる時期だから。沙奈子ちゃんが大人になったらいろいろ大変なこともあるかもだけど、今のうちはいろいろ試してるだけなんだからさ」


と言ってくれる。


正直な話、冷静に客観的に考えたらいろいろ穴のある言い方だとは思うけど、偽らざる僕たちの本心だよ。『SANA』という会社は、沙奈子を縛るためのものじゃないんだ。



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