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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百二十六 SANA編 「慮れる人だからこそ」

四月二十三日。土曜日。曇り。




今日も、一真かずまくんと琴美ことみちゃんがうちに来た。千早ちはやちゃんが迎えに行って。ただ、家まで行くと二人の両親に絡まれるかもしれないから近所の公園で待ち合わせしてってことらしい。その辺りは、千早ちゃん自身の経験が活かされてるみたいだ。彼女が星谷ひかりたにさんと出逢ってまだ間もない頃に、家を訪ねてきた星谷さんにお姉さんが絡むようなことをしたということがあって、そういうタイプの人とは距離を置くようにするのが吉というノウハウを得たみたいで。


残念な話ではあるけど、実際に困った人はいるんだから、その辺りは臨機応変に対処した方がいいんだろうな。


「ま、元々、食事だけ作ったら琴美ちゃんと一緒に家を出て外で時間を潰すってのをずっとしてたらしいからね。でないと、酒飲んでモラハラ三昧だったらしいし」


千早ちゃんが事情を説明してくれる。


『両親の所為で子供が安心して家にいられない』


僕も他人事じゃなかったからすごく身につまされる。家には僕の居場所なんかなくて、授業が終わっても学校の図書室で本を読んで時間を潰してたって経験がある。そんな家、僕は心底嫌だった。いっそ火事とかになってなくなってしまえばいいと、何度も何度も考えた。そしたら僕も『施設』とかに入れたのにと思ったんだ。子供心にも『施設』に対していい印象はなかったけど、それでも自分の家よりマシだと思ってた。


だから今、一真くんや琴美ちゃんにとっての逃げ場所にうちがなるというのは、僕にとっては当たり前のことなんだ。なにより、他でもない沙奈子の『お願い』だしね。


でも、改めて言っておく。これができるのは、あくまで沙奈子が認めた相手だから。沙奈子に対して暴力的だったり意地悪をするようなタイプの子だったら、受け入れられてない。だいたい、僕たちには本来、それをしなきゃいけない義務は何もないんだ。一真くんと琴美ちゃんが安心して寛げる家を作るのは二人の両親の『義務』であって、その義務を一真くんと琴美ちゃんの両親が果たしてないから僕たちがフォローすることになってしまってるだけなんだ。


だったら、受け入れるのも受け入れないのもそれぞれの判断だよね。


『助け合い』


とは言われるけど、『助けたいと思える相手』と『助けたいとは思えない相手』っていうのは間違いなくいるよね。沙奈子に対して暴力を振るったり意地悪をしたり、ネットで玲那を罵ってたような人たちがたとえ困っていたとしても僕は助けたいとは思えないだろうな。


これも、『情けは人の為ならず』ってことだと思う。他の人のことを慮れる人だからこそ力になってくれる人も現れるんだろうし。



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